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お名前をどうぞ、レディ
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「監査、ですか?」
朝起きてすぐ、ガープ中将がわたしの部屋を訪れた。
そして唐突に
「監査に行ってこい」
と言い出した。
「ああ。世界政府の命での。
七武海が海に君臨するに相応しい海賊どもか確認してこいと。
…くだらん仕事じゃ」
ガープ中将は吐き捨てた。
「で、わたしめに監査に行けということですね。
誰です?
男嫌いの女帝ですか?」
「いや、ボア・ハンコックにはヒナが当たる。
カズヤは……クロコダイルじゃ」
苦虫を噛み潰したような顔でガープ中将が言った。
…クロコダイル?
彼の普段の仕事ぶりが伺える?
どうしよう。少し嬉しいかも…
でもそんな気持ち、ガープ中将にばれたら殺される…
「アラバスタですね。
承りました。期間と期限は?」
極めて冷静に答える。
うん、完璧。
「ったく、嬉しそうにしおって…だからお前に任せたくなかったんじゃ」
あれ?完璧じゃなかった。てへ。
「なら、他の方にされては?」
「クロコダイルがカズヤを指名しとる。
あれでも奴らは世界政府公認じゃからの。
迂闊に反論できん…」
クロコダイルが?
わざわざわたし指名?
くっ、嬉しい…
「ワシは嫌で嫌で仕方なかった。
だから期限ギリギリまで引っ張ったがワシの意見は通らなんだ。
というわけで、今すぐ行ってくれ。
期間は1週間じゃ」
「へっ?今すぐ?」
ぽかんとするも、ガープ中将は後は任せたと部屋を出て行ってしまった。
「カズヤ、ほだされるなよ」
意味深な言葉を残して。
…暑い
というわけでクロコダイルがいるらしいアラバスタのレインベースへやってきました。
さすが砂漠の国。
うっかりいつもの黒スーツできてしまったものだから、めまいがするほど暑いです。
溶けるっちゅーの。
彼の経営するカジノ・レインディナーズを探す。
…カジノ経営してるクロコダイルを見て
七部海としての威厳が確認できるかははなはだ疑問だけど、
まあいいか。
ようやく到達したレインディナーズにて、入り口でガードマンに事情を話す。
さすがにいきなり経営者に会わせろというのはなかなか通らなかったが、
拳を交えての説得の甲斐あり、何とかカジノに入れてもらった。
どうやら運良く本日経営者殿はカジノいらっしゃるらしい。
よかったよかった。
もう早く出てきてください。
暑くてわけわからん。
しかしそんな気怠さはレインベースに足を踏み入れて数歩で解消した。
空調がきいているのだろう室内は涼しく、しかし客達の熱気に溢れかえっている。
やはりカジノ。
装飾は豪華絢爛、客達も喧々号号そのきらびやかな内装を盛り上げている。
そこまではいい。
わかっていたことだ。
「クロコダイル様。お客様です」
「ほう、どいつだ。
ゲーム相手でも……
カズヤ!?
おい、てめえ、どういうこった!?」
いつも冷静なクロコダイルがわたしを見て取り乱した。
周囲の客達が騒然となる。
アラバスタの英雄が突然怒鳴り出したんだから当然か。
「ごきげんよう、サー・クロコダイル。
世界政府の命にて監査にきました。
1週間ほど世話になるわよ。
まずはこの状況をご説明願えるかしら」
クロコダイルは冷や汗をダラダラかきながら咳払いをした。
「いいか、カズヤ。
この女たちはおれが望んで周りに置いているわけでも、常に置いているわけでもない」
そう。
クロコダイルは先ほどまで周囲にきらびやかな女性を大量にはべらかして
ふんぞり返ってカジノに臨んでいた。
「で?」
「おれはお前以外の女を女だとは思わねえ」
「「「!!!!!?」」」
周囲の客が盛大に引いた。
「そんな…クロコダイル様…」
「あんな地味な女?」
「クロコダイル様…男前…」
「あのクロコダイル様があんなに焦るなんて…まさか正妻?」
等々、わたしにたいするやっかみやらクロコダイルに対する感心やらが飛び交う。
「…はあ、まあいいわ」
「お前、いいって顔してねえぞ…」
「この場で言及して欲しいのかしら。
もしくは現状を独断と偏見をもって判断の上、マリンフォードに帰ったほうがよくて?」
「っ!!!!」
クロコダイルを一瞥すると、彼は椅子をひっくり返して立ち上がった。
客達がさらに引き、わたしたちの周囲2メートルの温度が下がる。
「カズヤ、こっちにこい。
おい、おれは私用が入った。
緊急かつ重大な要件だ。
よほどの緊急時でもなければ呼んでくれるなよ」
なかば怒鳴るようにディーラーに申し付けると
彼は目にも止まらぬ早さでわたしの腕を引っ掴み、カジノの店舗裏へと導く。
しばらく無言で歩くと、地下へ向かう階段でクロコダイルは立ち止まった。
「てめえ、なんだって急に現れやがった…」
「不都合かしら?
あなたがわたしをご指名だと聞いてきたのだけれど」
「はあ…?
!!
七部海監査の件か!?」
「ええ。さっき、そう言ったじゃない」
よほど焦っていて聞こえていなかったのか。
クロコダイルが大きくため息をつく。
「来るなら先に連絡の一つもいれやがれ?」
「それは申し訳なかったわ。
でもわたしが監査に来ることが決まったのがさっきだったのよ」
「そうか…。ガープの野郎…。
まあいい。
見苦しい姿を見せたな。
監査は1週間だったか?
歓迎するぜ」
連絡がいってなかったなら仕方ないかな…
でもムカつく。
なーにデレデレ女の子はべらかしちゃって。
アラバスタの英雄なのだからモテるのは当たり前。
でもムカつく!!
「なに百面相してやがる」
クロコダイルはようやく硬い表情を崩すとわたしの唇を奪った。
「ちょ、ん……っ」
長い、けれどいつかのように荒々しくはないキスに体が動かない。
「さっきのセリフを信じる気になったか」
「さっき…?」
酸素の足りない頭で考える。
「お前以外の女をおれは女だとは思わねえ」
「よくそんなこっぱずかしいセリフをあんな場所で吐いたわね。
風評被害の責任は取らないわよ」
「お前に誤解を受けるほうが被害がデカイんでな。
くそ、お前のことを地味とか言ったやつがいたな。
後で枯らしてやる」
「放っておきなさいよ…
とにかく、わたしはあなたの監査にきたの。
あなたは通常営業していてちょうだい」
冷静ぶるわたしにクロコダイルは少し不満気に眉を潜めたが
すぐに持ち直して、再度わたしの手を引く。
「ただの監査で済むと思んじゃねえぞ」
「セクハラだわ…
っ、あっ…」
反論しきる間もなく唇をまたもや奪われた。
「ちょ、んう…苦しっ…」
「他の女に嫉妬なんかさせねえぜ」
今度は口内をぐっちゃぐっちゃにかき混ぜるように荒々しいキス。
もう…仕事にならないじゃない。
その後、クロコダイルが満足するまでキスを続けたせいで腰が抜けたわたしは
いわゆるお姫様抱っこで寝室まで運ばれた。
情けない…
「この変態。セクハラリーマン。エロダイル」
わたしが悪態をつくとクロコダイルはくつくつと笑いながら、ベッドに腰掛けた。
「てめえが誘ったのが悪い。
これ以上可愛い事言うようなら犯すぞ」
「もっとスマートな誘い方ってないのかしら」
気恥ずかしくなってクロコダイルに背を向ける。
「スマートに誘ったら受けんのか?
いやらしい中将補佐官殿だ」
そう言って、彼はわたしの耳をゾロリと舐めた。
そのままいつかのように首筋をゆっくりと下に向かって舐めていく。
……ぶち
なおもからかうクロコダイルにわたしの何かがブチ切れた。
ベッドに立ち上がり仁王立ちでクロコダイルを見下ろす。
「監査についてはあとででっち上げるとして、これから変態の粛清を行います。
そこに直れ、変態ワニ」
「からかいすぎたか?
ったく、仕方のねえ中将補佐官殿だぜ」
クロコダイルは笑いながらも降参だ、というようにホールドアップで立ち上がる。
「ほら、降りろ。
飯食ったか?」
「…仕方ないのはあなたです。
食事ならまだですよ。
朝起きてすぐこちらに向かいましたから」
むくれながら答えるとクロコダイルはクハハと笑ってわたしの頭を撫でた。
「朝早くからご苦労なこった。
おれも昼がまだだから、どこか行くか。
せっかくだからな。
詫びもかねて、うまいモノ食わせてやるよ」
「期待してますよ」
ため息をついて、差し出された手を取る。
先が思いやられて仕方ないのに、頬の緩みが止まらないわたしは本当に馬鹿だ。
クロコダイルに手を引かれてやってきたのは豪華なレストランだった。
ごてごてした派手さはないが、しっとりと落ち着いた品のある店だ。
「センスのいいお店ですね」
「いつかてめえを連れてこようと思ってな。
奢ってやるから好きなもん食え」
このブルジョワめ。
よく見たらメニューに値段が乗ってないって、どういうこったよ。
でも、わたしを連れて来たいとチェックしておいてくれたんだ。
それは素直に嬉しい。
「では、お言葉に甘えて。
えーと、サンドクラブのサラダと豆サラダと鴨肉のサラダとジュゴンの竜田揚げと鴨肉のパテとパスタボンゴレとトマトソースと…」
「お前…腹減ってたのか…?」
「ええ」
「いつもこの量か」
「いえ、一応遠慮してるわ」
「……」
「ところで、今日のご予定は?」
美味しい食事に舌鼓を打ちながらクロコダイルに問いかける。
「ああ、今日は午前中はカジノに顔出しして、午後は自室で仕事の予定だ」
「そう。先ほどは邪魔して悪かったわね」
「構いやしねえよ。カズヤはどうするんだ」
どうする、と言ってもねえ。
わたしの仕事は監査だからクロコダイルを監視する以外特にすることもないんだけど…
「とりあえず今日はあなたの仕事ぶりを監視させてもらうわ。
飽きたらレインベースを散策してあなたの評判でも聞いて回ろうかしらね」
「そうか。好きにしろ。
ただしレインディナーズへ行くときは声をかけろよ」
「ええわかったわ。あれだけ騒がせてしまったんだものね」
クロコダイルがじろりと目を細めた。
「違え。てめえに手を出すバカな奴がいたら、駆除する必要があるからだ」
「放っておけって言ったじゃない」
「おれが不愉快なんだ。
どちらにしろ、明日レインディナーズの客入りや経営状況を改めて確認に行くから
絶対の用事がなけりゃ明日にしとけ」
はいはい、と適当にあしらって食事に意識を戻す。
しかしおいしいわね。
「ここがおれの執務室だ」
「へー、ブルジョワー」
「何を言っているんだ」
クロコダイルの執務室は何かの冗談のように豪華だった。
わたしにはよくわからない高そうな応接セット。
いかにも高級そうな革張りの椅子に机。
華奢な模様の掘り込まれた本棚に袖机。
「いえ、同じ執務室でもわたしやガープ中将の執務室とはずいぶん違っていたから驚いてしまって」
「ふん。目的が違うからな。
お前らのは実用度重視だろ。おれのは顧客に見せることを重要視しているからこうなんだ」
クロコダイルはそういうと椅子に掛けて仕事を始める。
わたしも仕事しますか。
まずは彼の主な所在地であるレインベースの様子と彼の勤務態度を簡単にまとめる。
…それ以外することないな。
仕方ないので午後いっぱいわたしは彼を眺めたり本棚をあさったりして時間をつぶすこととなった。
まじめに仕事するクロコダイルを見るのは初めてだ。
なんか、いつもと違ってこれはこれでかっこいいな。
…一応わたしもお仕事中ですよ?
夜になり突然クロコダイルが顔を上げた。
「飯行くか」
「仕事、もういいの?」
「ああ、今日の分はすべて終えた」
「早いの?少ないの?」
「誤解を生むような言い回しをするな。
カズヤと夕飯に行くために終わらせたんだ。
おれが早いか少ないかは今晩直接体でかくに
「セクハラ禁止。マリンフォードに帰りますよ」
「いい店を予約してある。とっとと行くぞ」
「はーい」
またもや美味しい食事にありつき、その日は終了した。
夜はクロコダイルの寝室に放り込まれ危うく犯されるところだったが
海楼石の鎖で縛るという荒業でなんとかしのいだ。
…海楼石の鎖は重かったけど持ってきて正解でした。
朝起きてすぐ、ガープ中将がわたしの部屋を訪れた。
そして唐突に
「監査に行ってこい」
と言い出した。
「ああ。世界政府の命での。
七武海が海に君臨するに相応しい海賊どもか確認してこいと。
…くだらん仕事じゃ」
ガープ中将は吐き捨てた。
「で、わたしめに監査に行けということですね。
誰です?
男嫌いの女帝ですか?」
「いや、ボア・ハンコックにはヒナが当たる。
カズヤは……クロコダイルじゃ」
苦虫を噛み潰したような顔でガープ中将が言った。
…クロコダイル?
彼の普段の仕事ぶりが伺える?
どうしよう。少し嬉しいかも…
でもそんな気持ち、ガープ中将にばれたら殺される…
「アラバスタですね。
承りました。期間と期限は?」
極めて冷静に答える。
うん、完璧。
「ったく、嬉しそうにしおって…だからお前に任せたくなかったんじゃ」
あれ?完璧じゃなかった。てへ。
「なら、他の方にされては?」
「クロコダイルがカズヤを指名しとる。
あれでも奴らは世界政府公認じゃからの。
迂闊に反論できん…」
クロコダイルが?
わざわざわたし指名?
くっ、嬉しい…
「ワシは嫌で嫌で仕方なかった。
だから期限ギリギリまで引っ張ったがワシの意見は通らなんだ。
というわけで、今すぐ行ってくれ。
期間は1週間じゃ」
「へっ?今すぐ?」
ぽかんとするも、ガープ中将は後は任せたと部屋を出て行ってしまった。
「カズヤ、ほだされるなよ」
意味深な言葉を残して。
…暑い
というわけでクロコダイルがいるらしいアラバスタのレインベースへやってきました。
さすが砂漠の国。
うっかりいつもの黒スーツできてしまったものだから、めまいがするほど暑いです。
溶けるっちゅーの。
彼の経営するカジノ・レインディナーズを探す。
…カジノ経営してるクロコダイルを見て
七部海としての威厳が確認できるかははなはだ疑問だけど、
まあいいか。
ようやく到達したレインディナーズにて、入り口でガードマンに事情を話す。
さすがにいきなり経営者に会わせろというのはなかなか通らなかったが、
拳を交えての説得の甲斐あり、何とかカジノに入れてもらった。
どうやら運良く本日経営者殿はカジノいらっしゃるらしい。
よかったよかった。
もう早く出てきてください。
暑くてわけわからん。
しかしそんな気怠さはレインベースに足を踏み入れて数歩で解消した。
空調がきいているのだろう室内は涼しく、しかし客達の熱気に溢れかえっている。
やはりカジノ。
装飾は豪華絢爛、客達も喧々号号そのきらびやかな内装を盛り上げている。
そこまではいい。
わかっていたことだ。
「クロコダイル様。お客様です」
「ほう、どいつだ。
ゲーム相手でも……
カズヤ!?
おい、てめえ、どういうこった!?」
いつも冷静なクロコダイルがわたしを見て取り乱した。
周囲の客達が騒然となる。
アラバスタの英雄が突然怒鳴り出したんだから当然か。
「ごきげんよう、サー・クロコダイル。
世界政府の命にて監査にきました。
1週間ほど世話になるわよ。
まずはこの状況をご説明願えるかしら」
クロコダイルは冷や汗をダラダラかきながら咳払いをした。
「いいか、カズヤ。
この女たちはおれが望んで周りに置いているわけでも、常に置いているわけでもない」
そう。
クロコダイルは先ほどまで周囲にきらびやかな女性を大量にはべらかして
ふんぞり返ってカジノに臨んでいた。
「で?」
「おれはお前以外の女を女だとは思わねえ」
「「「!!!!!?」」」
周囲の客が盛大に引いた。
「そんな…クロコダイル様…」
「あんな地味な女?」
「クロコダイル様…男前…」
「あのクロコダイル様があんなに焦るなんて…まさか正妻?」
等々、わたしにたいするやっかみやらクロコダイルに対する感心やらが飛び交う。
「…はあ、まあいいわ」
「お前、いいって顔してねえぞ…」
「この場で言及して欲しいのかしら。
もしくは現状を独断と偏見をもって判断の上、マリンフォードに帰ったほうがよくて?」
「っ!!!!」
クロコダイルを一瞥すると、彼は椅子をひっくり返して立ち上がった。
客達がさらに引き、わたしたちの周囲2メートルの温度が下がる。
「カズヤ、こっちにこい。
おい、おれは私用が入った。
緊急かつ重大な要件だ。
よほどの緊急時でもなければ呼んでくれるなよ」
なかば怒鳴るようにディーラーに申し付けると
彼は目にも止まらぬ早さでわたしの腕を引っ掴み、カジノの店舗裏へと導く。
しばらく無言で歩くと、地下へ向かう階段でクロコダイルは立ち止まった。
「てめえ、なんだって急に現れやがった…」
「不都合かしら?
あなたがわたしをご指名だと聞いてきたのだけれど」
「はあ…?
!!
七部海監査の件か!?」
「ええ。さっき、そう言ったじゃない」
よほど焦っていて聞こえていなかったのか。
クロコダイルが大きくため息をつく。
「来るなら先に連絡の一つもいれやがれ?」
「それは申し訳なかったわ。
でもわたしが監査に来ることが決まったのがさっきだったのよ」
「そうか…。ガープの野郎…。
まあいい。
見苦しい姿を見せたな。
監査は1週間だったか?
歓迎するぜ」
連絡がいってなかったなら仕方ないかな…
でもムカつく。
なーにデレデレ女の子はべらかしちゃって。
アラバスタの英雄なのだからモテるのは当たり前。
でもムカつく!!
「なに百面相してやがる」
クロコダイルはようやく硬い表情を崩すとわたしの唇を奪った。
「ちょ、ん……っ」
長い、けれどいつかのように荒々しくはないキスに体が動かない。
「さっきのセリフを信じる気になったか」
「さっき…?」
酸素の足りない頭で考える。
「お前以外の女をおれは女だとは思わねえ」
「よくそんなこっぱずかしいセリフをあんな場所で吐いたわね。
風評被害の責任は取らないわよ」
「お前に誤解を受けるほうが被害がデカイんでな。
くそ、お前のことを地味とか言ったやつがいたな。
後で枯らしてやる」
「放っておきなさいよ…
とにかく、わたしはあなたの監査にきたの。
あなたは通常営業していてちょうだい」
冷静ぶるわたしにクロコダイルは少し不満気に眉を潜めたが
すぐに持ち直して、再度わたしの手を引く。
「ただの監査で済むと思んじゃねえぞ」
「セクハラだわ…
っ、あっ…」
反論しきる間もなく唇をまたもや奪われた。
「ちょ、んう…苦しっ…」
「他の女に嫉妬なんかさせねえぜ」
今度は口内をぐっちゃぐっちゃにかき混ぜるように荒々しいキス。
もう…仕事にならないじゃない。
その後、クロコダイルが満足するまでキスを続けたせいで腰が抜けたわたしは
いわゆるお姫様抱っこで寝室まで運ばれた。
情けない…
「この変態。セクハラリーマン。エロダイル」
わたしが悪態をつくとクロコダイルはくつくつと笑いながら、ベッドに腰掛けた。
「てめえが誘ったのが悪い。
これ以上可愛い事言うようなら犯すぞ」
「もっとスマートな誘い方ってないのかしら」
気恥ずかしくなってクロコダイルに背を向ける。
「スマートに誘ったら受けんのか?
いやらしい中将補佐官殿だ」
そう言って、彼はわたしの耳をゾロリと舐めた。
そのままいつかのように首筋をゆっくりと下に向かって舐めていく。
……ぶち
なおもからかうクロコダイルにわたしの何かがブチ切れた。
ベッドに立ち上がり仁王立ちでクロコダイルを見下ろす。
「監査についてはあとででっち上げるとして、これから変態の粛清を行います。
そこに直れ、変態ワニ」
「からかいすぎたか?
ったく、仕方のねえ中将補佐官殿だぜ」
クロコダイルは笑いながらも降参だ、というようにホールドアップで立ち上がる。
「ほら、降りろ。
飯食ったか?」
「…仕方ないのはあなたです。
食事ならまだですよ。
朝起きてすぐこちらに向かいましたから」
むくれながら答えるとクロコダイルはクハハと笑ってわたしの頭を撫でた。
「朝早くからご苦労なこった。
おれも昼がまだだから、どこか行くか。
せっかくだからな。
詫びもかねて、うまいモノ食わせてやるよ」
「期待してますよ」
ため息をついて、差し出された手を取る。
先が思いやられて仕方ないのに、頬の緩みが止まらないわたしは本当に馬鹿だ。
クロコダイルに手を引かれてやってきたのは豪華なレストランだった。
ごてごてした派手さはないが、しっとりと落ち着いた品のある店だ。
「センスのいいお店ですね」
「いつかてめえを連れてこようと思ってな。
奢ってやるから好きなもん食え」
このブルジョワめ。
よく見たらメニューに値段が乗ってないって、どういうこったよ。
でも、わたしを連れて来たいとチェックしておいてくれたんだ。
それは素直に嬉しい。
「では、お言葉に甘えて。
えーと、サンドクラブのサラダと豆サラダと鴨肉のサラダとジュゴンの竜田揚げと鴨肉のパテとパスタボンゴレとトマトソースと…」
「お前…腹減ってたのか…?」
「ええ」
「いつもこの量か」
「いえ、一応遠慮してるわ」
「……」
「ところで、今日のご予定は?」
美味しい食事に舌鼓を打ちながらクロコダイルに問いかける。
「ああ、今日は午前中はカジノに顔出しして、午後は自室で仕事の予定だ」
「そう。先ほどは邪魔して悪かったわね」
「構いやしねえよ。カズヤはどうするんだ」
どうする、と言ってもねえ。
わたしの仕事は監査だからクロコダイルを監視する以外特にすることもないんだけど…
「とりあえず今日はあなたの仕事ぶりを監視させてもらうわ。
飽きたらレインベースを散策してあなたの評判でも聞いて回ろうかしらね」
「そうか。好きにしろ。
ただしレインディナーズへ行くときは声をかけろよ」
「ええわかったわ。あれだけ騒がせてしまったんだものね」
クロコダイルがじろりと目を細めた。
「違え。てめえに手を出すバカな奴がいたら、駆除する必要があるからだ」
「放っておけって言ったじゃない」
「おれが不愉快なんだ。
どちらにしろ、明日レインディナーズの客入りや経営状況を改めて確認に行くから
絶対の用事がなけりゃ明日にしとけ」
はいはい、と適当にあしらって食事に意識を戻す。
しかしおいしいわね。
「ここがおれの執務室だ」
「へー、ブルジョワー」
「何を言っているんだ」
クロコダイルの執務室は何かの冗談のように豪華だった。
わたしにはよくわからない高そうな応接セット。
いかにも高級そうな革張りの椅子に机。
華奢な模様の掘り込まれた本棚に袖机。
「いえ、同じ執務室でもわたしやガープ中将の執務室とはずいぶん違っていたから驚いてしまって」
「ふん。目的が違うからな。
お前らのは実用度重視だろ。おれのは顧客に見せることを重要視しているからこうなんだ」
クロコダイルはそういうと椅子に掛けて仕事を始める。
わたしも仕事しますか。
まずは彼の主な所在地であるレインベースの様子と彼の勤務態度を簡単にまとめる。
…それ以外することないな。
仕方ないので午後いっぱいわたしは彼を眺めたり本棚をあさったりして時間をつぶすこととなった。
まじめに仕事するクロコダイルを見るのは初めてだ。
なんか、いつもと違ってこれはこれでかっこいいな。
…一応わたしもお仕事中ですよ?
夜になり突然クロコダイルが顔を上げた。
「飯行くか」
「仕事、もういいの?」
「ああ、今日の分はすべて終えた」
「早いの?少ないの?」
「誤解を生むような言い回しをするな。
カズヤと夕飯に行くために終わらせたんだ。
おれが早いか少ないかは今晩直接体でかくに
「セクハラ禁止。マリンフォードに帰りますよ」
「いい店を予約してある。とっとと行くぞ」
「はーい」
またもや美味しい食事にありつき、その日は終了した。
夜はクロコダイルの寝室に放り込まれ危うく犯されるところだったが
海楼石の鎖で縛るという荒業でなんとかしのいだ。
…海楼石の鎖は重かったけど持ってきて正解でした。