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お名前をどうぞ、レディ
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「よお、カズヤ。久しいな」
その後、サー・クロコダイルはわたしに会う度に挨拶とも言えないような挨拶をするようになった。
だいたいは軽く挨拶をするだけだが、その日は少し違った。
「お久しぶりです。サー・クロコダイル。
ご健勝の程、耳にしております」
「クハハ、連れねぇ女だ」
「何の話でしょう?」
「しかし、かわいげはあるようだ」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
薄っぺらい笑顔で答える。
心の中で何かがざわつくような気がするが気のせいだ。
「今日は遊んでやろうか」
まるで子どもでも相手にするように、彼はわたしの頭をぽんぽんと撫でる。
何が遊びだ。
先日は文字通りコテンパンにされた。
いい年の女が砂と埃と血にまみれて酷い有様だったというのに。
でも、そこで引くのは悔しくて。
「今日こそ叩きのめして差し上げますわ」
「ふん、天下の七武海になんて口のきき方だ。
ガープの教育が知れるな」
だまらっしゃい。
わたしは先日ぼっこぼこにされた恨みを忘れていないのです。
執念深いのです。
つい乗せられてしまった感はあるが、悪いタイミングではない。
ちょうど事務仕事に区切りがついて、誰かに稽古に付き合ってもらおうと思っていたのだ。
…何だか謀られたような気もするが気のせい、気のせい。
「わたしのことでしたら何とでもおっしゃってくださいな。
でも、ガープ中将まで馬鹿にされて黙っているわけにはまいりませんね」
「クハハ、今日は敵うといいな」
どこまでも子ども扱いだ。
ああ、悔しい。
その際どい生え際の後退を手伝ってさし上げるわ。
2人、マリンフォード湾頭の広場で向き合う。
これが美男美女だったら絵になっていたかもしれないが
残念ながら片方がわたしで、もう片方はガラの悪い海賊だ。
全く絵にならないのを通り越して、阿鼻叫喚図を髣髴とさせる絵面である。
このガラの悪い海賊が世間では英雄だなんて間違っている。
わたしに正義はないが、嗅覚だけは鋭いのだ。
「今日も先手は譲ってやるよ」
軽くストレッチをしてニヤリと笑った。
「では、有難く」
言い終える前に彼に突っこむ。
今日は前回とは違い、体力は満タン、体調も万全だ。
少し高めの体制で彼に向かう。
「また突っ込むだけか?」
「それはどうでしょう」
彼に当たる直前、素早くスライディングして回し蹴り。
巨体の死角かつ、急所を狙う。
さすがにいきなりの弁慶の泣き所は彼も痛かったのか、若干顔をしかめる。
「ほう、ちったあマシになったか?」
「ガープ中将と同じこと言わないでください」
後方にバックステップで距離を取る。
はずだったのだが、サラリと彼に距離を詰められる。
慌てて更にバク転と同時に彼の顎に蹴りを入れてなんとか距離を置く。
だがそれも一瞬。
サー・クロコダイルは執拗に迫ってくる。
距離を詰められては攻撃と回避を繰り返す。
…どうやら先日とは訳が違うのは彼も同じようだ。
先日のはただの様子見。
今日はわたしの力を量っている。
彼はまったく全力なんかじゃない。
わたしはただただ逃げるだけだ。情けない。
追い打ちをかけるかのように彼はニヤリと笑う。
「クハハ、あれだけ威勢のいいことを言っておいて逃げるだけか?」
悔しくて唇を噛む。
逃げても埒はあかない。
思い切って振り返った。
「そんなわけないでしょう!!!!」
彼がサラリと寄ってきたタイミングに合わせて砂に掌底を叩き込む。
逃げてばかりだったわたしに拍子抜けしたのか、きれいに入った。
武装色の覇気をまとって攻撃できたのも良かったのだろう。
でも。
まだだめ。
筋力が足りないから、決まったとしても効果は薄い。
その証拠に彼はわずかに眉をしかめただけだ。
「クハハ。これは驚いたな。先日とはえらい違いだ」
「?」
確かに今のはきれいに入ったけど、「えらい違い」ってほどでもないと思う。
意味がわからない。
疑問符を浮かべつつも、今度はわたしが攻めに転ずる。
彼が砂になる前に。
砂になりかけた個所を狙って攻撃する。
何故だろう。
ここしばらく、彼のことを(悪い意味で)気にしていたせいだろうか。
彼の動きが視える。
きっと次は左に動くから、併せて右サイドから蹴りを入れれば
にぶい音を立てて彼の脇腹に足が食い込む。
サー・クロコダイルがわたしの足を掴むと同時に蹴りが入れられるのを
なんとか覇気でガードする。
ガードした腕が軋んで痛い。
掴まれた足をなんとか振りほどいて、
彼が体勢を整える前に渾身のラリアットを繰り出す。
……なんだか、世界にわたしと彼しかいないようだ。
耳を澄ましても聞こえてくるのは砂と空気が擦れる音、
それにわたしと彼の息遣いだけ。
いつもの潮騒も騒がしい掛け声も、耳に入らない。
彼の音だけに集中して。
密かに後ろから砂が這い寄る音がするから、横にかわす。
「ほう。今のをかわすか。これは、目覚めたか?」
「何の…話です?」
「気づかねえならいいさ」
彼は何やら嬉しそうに、楽しそうに仕掛けてくる。
彼は次に何を仕掛けてくる?
前?後ろ?
違う。
そんな単純な方向ではない。
はっとした時には遅かった。
まずい。
まずいまずいまずい。
今のわたしにはかわせない何かが来る。
その気配におののいて思わず跳ねて距離を取る。
「いい判断だ。しかし、まだ遅い」
一瞬。
その一瞬で先ほどまでわたしがいた場所が砂に変わる。
それだけじゃない。
その辺り一帯が砂と化し、砂煙に包まれてしまう。
「ちょっ、これどうしてくれるんです!!!!」
マリンフォード湾頭の一部が砂漠になってしまった。
いやいやいや、これガープ中将になんて言い訳しよう。
そう考えている間にもわたしは砂にからめ捕られて沈んでいく。
「ちゃんと直してやるよ」
砂の間から彼が突然現れ、わたしを抱き上げる。
彼はタンッと軽く跳ねて、その場を離れる。
どんな能力の使い方をしたのかはわからないのだが
砂場は何とか元の湾頭に戻った。
ああ、彼が吸い取った水分を戻したのかな。
何にせよ、ガープ中将の怒りの鉄槌は免れた。
「なに間抜け面してやがる。もう終わりか?」
「え?あ……あの、近くないですか…」
あろうことかわたしはまだ彼に抱かれたままだった。
そのせいで顔が異様に近い。
息がかかる!!
生暖かい!!
「なんだ、気になるのか」
彼は鉤爪を着けた左腕でわたしを抱き寄せ、空いた右手で頭を撫でたり
髪を梳いたり好き放題だ。
気になるかですって。
気になるか…どうか…。
確かに、気にならないとは言わない。
だけどそれは猛烈に悪い意味でだ!!!!
「うらあっ!!!!」
渾身の頭突きを彼の顎に叩き込む。
わたしで遊ぶのに気を取られていたのかわずかに隙ができる。
何とか彼の腕からすり抜け、走って逃げる。
「て、てめえ……」
「セクハラ反対ですよ!!!!女の敵!!!!」
建物の影まで隠れて、彼に向かってぎゃあぎゃあ怒鳴る。
ああ、確かにこれじゃあ子ども扱いされても仕方ないか。
一瞬、彼の眉間にしわが寄ったように見えた。
しまった。怒らせてしまっただろうか?
いやいや、なんでわたしが彼の機嫌なんて取らなくてはいけないんだ。
「……クハハ、かわいいこと言うじゃないか。
またにしておいてやるよ」
何に満足したかは知らないが、彼は笑い声をあげて踵を返す。
一方的に取り残されたわたしには訳が分からない。
「うう。失礼します」
よくわからないけど、素直に引き下がろう。
彼は海賊。
わたしは海軍。
必要以上に立ち入らない方がいい。
見送りたい気持ちを抑えて、わたしはその場を立ち去る。
うぬぼれかもしれないが、彼がわたしを振り返っているような気がして、
振り返りたい衝動に駆られる。
そんな感傷、気のせいだと自分に言い聞かせる。
彼は海賊。七武海とはいえ海賊は海賊だ。
海軍たるわたしが馴れ合う訳にはいかない。
唇を再度かみしめて、前を向く。
結局今日も勝てなかった上に、適当にあしらわれてしまった感が否めない。
逃げるように自室へ戻る。
ふと、先ほどまで感じていた感覚を思い出した。
彼とわたしの二人だけ。
わたしは、わたしが彼と二人きりの世界に焦がれていることにも気が付かなかった。
数日後、ガープ中将といつものとおり訓練していた。
ふとした瞬間、あの日のことが思い浮かぶ。
あ、右からくる。
そんな予感がして素早くしゃがんだ。
「ぬ、今のを避けるか?
…ならば…」
そのまま後ろに飛びのいて蹴りをかわす。
きっと次は左からくる。
前のめりにジャンプしてガープ中将の頭に踵落とし。
反応を見る前に体をひねって右フック。
左からくる拳をいなして懐に飛び込む。
「カズヤ、お前いつの間に見聞色の覇気を…」
アッパーをかわしたガープ中将がつぶやいた。
「見聞色の覇気?わたし使ってました?」
「無意識なのか。
お前、今わしがどこから攻撃するか先読みしたじゃろ」
「なんとなくですよ。なんか…こっちからくるかなーみたいな」
「いつからじゃ」
…?
「先日サー・クロコダイルと訓練したときですかね。
なんとなくやつが攻撃してくる方向がわかるような気がしました」
ガープ中将の眉間にしわが寄る。
「そうか…。あやつか…」
深いため息。
そのガープ中将のため息の理由にわたしはまだ気が付かなかった。
その後、サー・クロコダイルはわたしに会う度に挨拶とも言えないような挨拶をするようになった。
だいたいは軽く挨拶をするだけだが、その日は少し違った。
「お久しぶりです。サー・クロコダイル。
ご健勝の程、耳にしております」
「クハハ、連れねぇ女だ」
「何の話でしょう?」
「しかし、かわいげはあるようだ」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
薄っぺらい笑顔で答える。
心の中で何かがざわつくような気がするが気のせいだ。
「今日は遊んでやろうか」
まるで子どもでも相手にするように、彼はわたしの頭をぽんぽんと撫でる。
何が遊びだ。
先日は文字通りコテンパンにされた。
いい年の女が砂と埃と血にまみれて酷い有様だったというのに。
でも、そこで引くのは悔しくて。
「今日こそ叩きのめして差し上げますわ」
「ふん、天下の七武海になんて口のきき方だ。
ガープの教育が知れるな」
だまらっしゃい。
わたしは先日ぼっこぼこにされた恨みを忘れていないのです。
執念深いのです。
つい乗せられてしまった感はあるが、悪いタイミングではない。
ちょうど事務仕事に区切りがついて、誰かに稽古に付き合ってもらおうと思っていたのだ。
…何だか謀られたような気もするが気のせい、気のせい。
「わたしのことでしたら何とでもおっしゃってくださいな。
でも、ガープ中将まで馬鹿にされて黙っているわけにはまいりませんね」
「クハハ、今日は敵うといいな」
どこまでも子ども扱いだ。
ああ、悔しい。
その際どい生え際の後退を手伝ってさし上げるわ。
2人、マリンフォード湾頭の広場で向き合う。
これが美男美女だったら絵になっていたかもしれないが
残念ながら片方がわたしで、もう片方はガラの悪い海賊だ。
全く絵にならないのを通り越して、阿鼻叫喚図を髣髴とさせる絵面である。
このガラの悪い海賊が世間では英雄だなんて間違っている。
わたしに正義はないが、嗅覚だけは鋭いのだ。
「今日も先手は譲ってやるよ」
軽くストレッチをしてニヤリと笑った。
「では、有難く」
言い終える前に彼に突っこむ。
今日は前回とは違い、体力は満タン、体調も万全だ。
少し高めの体制で彼に向かう。
「また突っ込むだけか?」
「それはどうでしょう」
彼に当たる直前、素早くスライディングして回し蹴り。
巨体の死角かつ、急所を狙う。
さすがにいきなりの弁慶の泣き所は彼も痛かったのか、若干顔をしかめる。
「ほう、ちったあマシになったか?」
「ガープ中将と同じこと言わないでください」
後方にバックステップで距離を取る。
はずだったのだが、サラリと彼に距離を詰められる。
慌てて更にバク転と同時に彼の顎に蹴りを入れてなんとか距離を置く。
だがそれも一瞬。
サー・クロコダイルは執拗に迫ってくる。
距離を詰められては攻撃と回避を繰り返す。
…どうやら先日とは訳が違うのは彼も同じようだ。
先日のはただの様子見。
今日はわたしの力を量っている。
彼はまったく全力なんかじゃない。
わたしはただただ逃げるだけだ。情けない。
追い打ちをかけるかのように彼はニヤリと笑う。
「クハハ、あれだけ威勢のいいことを言っておいて逃げるだけか?」
悔しくて唇を噛む。
逃げても埒はあかない。
思い切って振り返った。
「そんなわけないでしょう!!!!」
彼がサラリと寄ってきたタイミングに合わせて砂に掌底を叩き込む。
逃げてばかりだったわたしに拍子抜けしたのか、きれいに入った。
武装色の覇気をまとって攻撃できたのも良かったのだろう。
でも。
まだだめ。
筋力が足りないから、決まったとしても効果は薄い。
その証拠に彼はわずかに眉をしかめただけだ。
「クハハ。これは驚いたな。先日とはえらい違いだ」
「?」
確かに今のはきれいに入ったけど、「えらい違い」ってほどでもないと思う。
意味がわからない。
疑問符を浮かべつつも、今度はわたしが攻めに転ずる。
彼が砂になる前に。
砂になりかけた個所を狙って攻撃する。
何故だろう。
ここしばらく、彼のことを(悪い意味で)気にしていたせいだろうか。
彼の動きが視える。
きっと次は左に動くから、併せて右サイドから蹴りを入れれば
にぶい音を立てて彼の脇腹に足が食い込む。
サー・クロコダイルがわたしの足を掴むと同時に蹴りが入れられるのを
なんとか覇気でガードする。
ガードした腕が軋んで痛い。
掴まれた足をなんとか振りほどいて、
彼が体勢を整える前に渾身のラリアットを繰り出す。
……なんだか、世界にわたしと彼しかいないようだ。
耳を澄ましても聞こえてくるのは砂と空気が擦れる音、
それにわたしと彼の息遣いだけ。
いつもの潮騒も騒がしい掛け声も、耳に入らない。
彼の音だけに集中して。
密かに後ろから砂が這い寄る音がするから、横にかわす。
「ほう。今のをかわすか。これは、目覚めたか?」
「何の…話です?」
「気づかねえならいいさ」
彼は何やら嬉しそうに、楽しそうに仕掛けてくる。
彼は次に何を仕掛けてくる?
前?後ろ?
違う。
そんな単純な方向ではない。
はっとした時には遅かった。
まずい。
まずいまずいまずい。
今のわたしにはかわせない何かが来る。
その気配におののいて思わず跳ねて距離を取る。
「いい判断だ。しかし、まだ遅い」
一瞬。
その一瞬で先ほどまでわたしがいた場所が砂に変わる。
それだけじゃない。
その辺り一帯が砂と化し、砂煙に包まれてしまう。
「ちょっ、これどうしてくれるんです!!!!」
マリンフォード湾頭の一部が砂漠になってしまった。
いやいやいや、これガープ中将になんて言い訳しよう。
そう考えている間にもわたしは砂にからめ捕られて沈んでいく。
「ちゃんと直してやるよ」
砂の間から彼が突然現れ、わたしを抱き上げる。
彼はタンッと軽く跳ねて、その場を離れる。
どんな能力の使い方をしたのかはわからないのだが
砂場は何とか元の湾頭に戻った。
ああ、彼が吸い取った水分を戻したのかな。
何にせよ、ガープ中将の怒りの鉄槌は免れた。
「なに間抜け面してやがる。もう終わりか?」
「え?あ……あの、近くないですか…」
あろうことかわたしはまだ彼に抱かれたままだった。
そのせいで顔が異様に近い。
息がかかる!!
生暖かい!!
「なんだ、気になるのか」
彼は鉤爪を着けた左腕でわたしを抱き寄せ、空いた右手で頭を撫でたり
髪を梳いたり好き放題だ。
気になるかですって。
気になるか…どうか…。
確かに、気にならないとは言わない。
だけどそれは猛烈に悪い意味でだ!!!!
「うらあっ!!!!」
渾身の頭突きを彼の顎に叩き込む。
わたしで遊ぶのに気を取られていたのかわずかに隙ができる。
何とか彼の腕からすり抜け、走って逃げる。
「て、てめえ……」
「セクハラ反対ですよ!!!!女の敵!!!!」
建物の影まで隠れて、彼に向かってぎゃあぎゃあ怒鳴る。
ああ、確かにこれじゃあ子ども扱いされても仕方ないか。
一瞬、彼の眉間にしわが寄ったように見えた。
しまった。怒らせてしまっただろうか?
いやいや、なんでわたしが彼の機嫌なんて取らなくてはいけないんだ。
「……クハハ、かわいいこと言うじゃないか。
またにしておいてやるよ」
何に満足したかは知らないが、彼は笑い声をあげて踵を返す。
一方的に取り残されたわたしには訳が分からない。
「うう。失礼します」
よくわからないけど、素直に引き下がろう。
彼は海賊。
わたしは海軍。
必要以上に立ち入らない方がいい。
見送りたい気持ちを抑えて、わたしはその場を立ち去る。
うぬぼれかもしれないが、彼がわたしを振り返っているような気がして、
振り返りたい衝動に駆られる。
そんな感傷、気のせいだと自分に言い聞かせる。
彼は海賊。七武海とはいえ海賊は海賊だ。
海軍たるわたしが馴れ合う訳にはいかない。
唇を再度かみしめて、前を向く。
結局今日も勝てなかった上に、適当にあしらわれてしまった感が否めない。
逃げるように自室へ戻る。
ふと、先ほどまで感じていた感覚を思い出した。
彼とわたしの二人だけ。
わたしは、わたしが彼と二人きりの世界に焦がれていることにも気が付かなかった。
数日後、ガープ中将といつものとおり訓練していた。
ふとした瞬間、あの日のことが思い浮かぶ。
あ、右からくる。
そんな予感がして素早くしゃがんだ。
「ぬ、今のを避けるか?
…ならば…」
そのまま後ろに飛びのいて蹴りをかわす。
きっと次は左からくる。
前のめりにジャンプしてガープ中将の頭に踵落とし。
反応を見る前に体をひねって右フック。
左からくる拳をいなして懐に飛び込む。
「カズヤ、お前いつの間に見聞色の覇気を…」
アッパーをかわしたガープ中将がつぶやいた。
「見聞色の覇気?わたし使ってました?」
「無意識なのか。
お前、今わしがどこから攻撃するか先読みしたじゃろ」
「なんとなくですよ。なんか…こっちからくるかなーみたいな」
「いつからじゃ」
…?
「先日サー・クロコダイルと訓練したときですかね。
なんとなくやつが攻撃してくる方向がわかるような気がしました」
ガープ中将の眉間にしわが寄る。
「そうか…。あやつか…」
深いため息。
そのガープ中将のため息の理由にわたしはまだ気が付かなかった。