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お名前をどうぞ、レディ
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「たとえばの話。
わたしが海軍に入らず、あなたにも出会っていなかったらどうなっていたかしら」
夕暮れ時の珍しく静かなマリンフォード。
まだ点灯していないわたしの執務室は、西日で赤く染まっていた。
「意味のねえ問いだ」
西日と、部屋影の間に座るクロコダイルの表情は見えない。
「ええそうなの。意味なんてないわ。
これはただの告白」
「告白?」
わたしは自分の椅子に掛けたまま、彼の方へ視線を向ける。
逆光で、おそらくわたしの表情も彼には見えていないだろうから
わたしは何の表情も浮かべずに言葉を続ける。
「ええ。独白でもいいわ。
ご存じのとおり、わたしはかつて妹と海賊狩りをしていた。
そこでガープ中将に誘われて軍人になった。
海賊狩りを続けていたら、きっとあなたには出会わなかった。
そしたら、それは今になって考えると、とても味気のない生活だったでしょう」
「……」
「そして、わたしはきっと今ほど戦いに明け暮れていなっかた。
生活できる最低限の戦いしかしなかった。
たまにガープ中将に言われるの。
"わしが拾っていなかったらお前は危うかった"だなんて。
もちろん、ガープ中将に拾われたからこそ今のわたしがある。
でもそれだけじゃないの。
あなたに会って、あなたと過ごしたからこそ、今のわたしがあるのよ」
クロコダイルが首をわずかに傾げる。
三白眼に西日が反射して赤くきらめく。
「てめえはずいぶんおれのことを買っているようだな」
「もちろんよ。
あなたがいたからわたしはここまで強くなったの。
良し悪しは別としてね。
同時に、あなたと過ごしてきたからこそ、わたしはここまで人間らしくなった。
あなたが覚えているかどうかわからないけれど
わたしはもともとかなり感情の起伏のない人間だったの。
それをあなたが変えた。
違うわね。
あなたに責任があるという訳ではないわ。
あなたに出会って、あなたと過ごして、わたしは感情を覚えた」
紫煙が西日の中をゆらゆらとうごめく。
「わたしの妹は、わたしよりさらに感情のない娘だった。
でもね、少し前に海賊になって、写真を送ってきたの。
驚いたわ。
妹が満面の笑みで仲間に囲まれていたのよ。
だからわたしも先日写真を送り返してみたの。
そしたら、妹からも同じ感想が返ってきたわ。
"お姉ちゃんにそんな感情があるなんて知らなかった。
今度その感情の元を紹介してね"って。
だから今度、一緒に写真をとってくださるかしら?」
「そいつは構わねえが…
てめえは一体どんな写真を送ったんだ?」
机の上に飾ってある写真を一枚クロコダイルに差し出す。
「これ」
「こいつは…」
それは少し前に妹に送るために、たしぎちゃんとヒナとスモーカー君、青キジと撮った写真。
最初は女子だけだったのが、通りすがりの男性陣も加わってにぎやかな写真になっている。
「どうかしら」
「なかなかいい顔してるじゃねえか」
「そう言ってもらえて嬉しいわ。
でもね、クロコダイル。
あなたと撮ったらもっといい顔してると思うの」
「そいつは嬉しいこと言うじゃねえか」
「かわいげ、あったかしら?」
「クハハ。持ち帰りてえくらいに可愛かったぜ」
写真を返して寄越すクロコダイルはとても嬉しそうで、
お世辞かもしれないけど、こそばゆい気持ちになる。
「お持ち帰りは禁止よ」
「そうかよ」
「でね、結局何が言いたかったかっていうことなんだけど」
「……」
「あなたと出会えてよかったわ。ありがとう」
「珍しいじゃねえか」
「ええ。今日は告白の日だから」
クロコダイルがいぶかしげに首をひねる。
「告白の日?」
「5月9日は告白の日だそうよ。
だから"あなたと出会えてよかったと思っている"この気持ちを告白してみました」
「そういうことか」
「そういうことよ」
ゆっくりと立ち上がり、ソファにかけるクロコダイルの前に立つ。
「さて、せっかくだからあなたも告白してみる?」
「いや、おれはしない」
「そう」
「ああ、おれはいつもしているからな。
別段今日告白なんざする必要はねえ」
「ふふ。あなたはかわいげがないわね」
「可愛いのはてめえだけで十分だ」
クロコダイルが立ち上がり、わたしの頭を撫でた。
「だがしかし」
「?」
「カズヤのかわいげに免じて、帰るのは明日にするとしよう」
「…あなたも十分かわいいわ」
今日という日はまだ残っている。
残りの時間、あなたに何を告白しよう。
そう考えながら、クロコダイルにエスコートされて、夕飯に向かう。
わたしが海軍に入らず、あなたにも出会っていなかったらどうなっていたかしら」
夕暮れ時の珍しく静かなマリンフォード。
まだ点灯していないわたしの執務室は、西日で赤く染まっていた。
「意味のねえ問いだ」
西日と、部屋影の間に座るクロコダイルの表情は見えない。
「ええそうなの。意味なんてないわ。
これはただの告白」
「告白?」
わたしは自分の椅子に掛けたまま、彼の方へ視線を向ける。
逆光で、おそらくわたしの表情も彼には見えていないだろうから
わたしは何の表情も浮かべずに言葉を続ける。
「ええ。独白でもいいわ。
ご存じのとおり、わたしはかつて妹と海賊狩りをしていた。
そこでガープ中将に誘われて軍人になった。
海賊狩りを続けていたら、きっとあなたには出会わなかった。
そしたら、それは今になって考えると、とても味気のない生活だったでしょう」
「……」
「そして、わたしはきっと今ほど戦いに明け暮れていなっかた。
生活できる最低限の戦いしかしなかった。
たまにガープ中将に言われるの。
"わしが拾っていなかったらお前は危うかった"だなんて。
もちろん、ガープ中将に拾われたからこそ今のわたしがある。
でもそれだけじゃないの。
あなたに会って、あなたと過ごしたからこそ、今のわたしがあるのよ」
クロコダイルが首をわずかに傾げる。
三白眼に西日が反射して赤くきらめく。
「てめえはずいぶんおれのことを買っているようだな」
「もちろんよ。
あなたがいたからわたしはここまで強くなったの。
良し悪しは別としてね。
同時に、あなたと過ごしてきたからこそ、わたしはここまで人間らしくなった。
あなたが覚えているかどうかわからないけれど
わたしはもともとかなり感情の起伏のない人間だったの。
それをあなたが変えた。
違うわね。
あなたに責任があるという訳ではないわ。
あなたに出会って、あなたと過ごして、わたしは感情を覚えた」
紫煙が西日の中をゆらゆらとうごめく。
「わたしの妹は、わたしよりさらに感情のない娘だった。
でもね、少し前に海賊になって、写真を送ってきたの。
驚いたわ。
妹が満面の笑みで仲間に囲まれていたのよ。
だからわたしも先日写真を送り返してみたの。
そしたら、妹からも同じ感想が返ってきたわ。
"お姉ちゃんにそんな感情があるなんて知らなかった。
今度その感情の元を紹介してね"って。
だから今度、一緒に写真をとってくださるかしら?」
「そいつは構わねえが…
てめえは一体どんな写真を送ったんだ?」
机の上に飾ってある写真を一枚クロコダイルに差し出す。
「これ」
「こいつは…」
それは少し前に妹に送るために、たしぎちゃんとヒナとスモーカー君、青キジと撮った写真。
最初は女子だけだったのが、通りすがりの男性陣も加わってにぎやかな写真になっている。
「どうかしら」
「なかなかいい顔してるじゃねえか」
「そう言ってもらえて嬉しいわ。
でもね、クロコダイル。
あなたと撮ったらもっといい顔してると思うの」
「そいつは嬉しいこと言うじゃねえか」
「かわいげ、あったかしら?」
「クハハ。持ち帰りてえくらいに可愛かったぜ」
写真を返して寄越すクロコダイルはとても嬉しそうで、
お世辞かもしれないけど、こそばゆい気持ちになる。
「お持ち帰りは禁止よ」
「そうかよ」
「でね、結局何が言いたかったかっていうことなんだけど」
「……」
「あなたと出会えてよかったわ。ありがとう」
「珍しいじゃねえか」
「ええ。今日は告白の日だから」
クロコダイルがいぶかしげに首をひねる。
「告白の日?」
「5月9日は告白の日だそうよ。
だから"あなたと出会えてよかったと思っている"この気持ちを告白してみました」
「そういうことか」
「そういうことよ」
ゆっくりと立ち上がり、ソファにかけるクロコダイルの前に立つ。
「さて、せっかくだからあなたも告白してみる?」
「いや、おれはしない」
「そう」
「ああ、おれはいつもしているからな。
別段今日告白なんざする必要はねえ」
「ふふ。あなたはかわいげがないわね」
「可愛いのはてめえだけで十分だ」
クロコダイルが立ち上がり、わたしの頭を撫でた。
「だがしかし」
「?」
「カズヤのかわいげに免じて、帰るのは明日にするとしよう」
「…あなたも十分かわいいわ」
今日という日はまだ残っている。
残りの時間、あなたに何を告白しよう。
そう考えながら、クロコダイルにエスコートされて、夕飯に向かう。