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お名前をどうぞ、レディ
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世界は広くてわたしは小さい。
クロコダイルに連れ出してもらってから、そのことをひしと感じるようになった。
「気持ちいいわね」
柔らかな風が吹き抜ける甲板。
船の操縦をするクロコダイルの隣でぐぐっとのびをする。
「もうすぐシャボンディ諸島の海域に入るから気候が落ち着いてきたんだろう」
「シャボンディ諸島では船のコーティングをしてもらうのよね?
わたしコーティング船って乗ったことないから楽しみだわ」
「以前赤い土の大陸を超えたときはどうしたんだ?」
「その時は陸路を使ったのよ。コーティングしてもらえるような船ではなかったしね。
この後の魚人島も楽しみだわ」
「そうか。ならばじっくり船旅を楽しむんだな」
この旅はわたしの知らないことだらけだ。
もちろん妹と世界を半周したことはあるし、海軍時代にもあちらこちらに足をのばしている。
それでもクロコダイルと一緒に見る世界はわたしにとって目新しいことだらけで。
「シャボンディ諸島ではたくさん買い物をしましょうね」
「そいつに付き合わされるのはごめんだぜ?」
「うそ。デートできて嬉しいくせに」
「ふん。どうだかな。まだカズヤの買い物は短いから我慢できるが、あまりに長居するなら置いていくぞ」
「いいじゃない。どうせコーティングしている間は暇なのだから」
船全体をシャボンで覆うのだからきっとそれなりの時間がかかるに違いない。
その間はのんびり買い物したり遊園地に行ったり、いかにもデートと言えるようなことをしたいのだ。
「だがシャボンディ諸島は物騒な地域も多いからな。
せっかくだ。戦闘経験を積むとしようじゃねえか」
「そんなのいつもどおりじゃない。それにわたしとあなたとダズなら、これ以上経験を積まなくてもいいと思うのだけれど」
「バカ言え。戦えるときには戦っておくんだよ。腕がなまっちまうだろうが」
「それはそうなのだけれど。でもお買いものと遊園地は行きましょうね」
「頑固だな。まあそれぐらい付き合ってやるとするか」
はあ、と紫煙が吐き出される。
ここで折れるところが、クロコダイルのわたしに甘いところだ。
そんなところも好きだからいいけど。
「そろそろ操舵を代わりましょうか?」
「いやまだいい。カズヤは夜の見張り当番だっただろう?少し寝ておけ」
「そうね。せっかくだし甲板でお昼寝しようかしら」
「そんなんでいいのか?もう若くねえんだから部屋できっちり寝たらどうだ」
失礼ね。これでもあなたより20歳は若いんだから。
でもまあクロコダイルの言う通りではある。
ここは素直に引き上げようか。
「なら部屋で寝てくるわ。おやすみなさい」
「ああ」
部屋に戻ってベッドに倒れこむ。
まだ新しいベッドは体に馴染んでいなくて新鮮な気持ちだ。
クロコダイルもわたしも寝具にはこだわったのでなかなかの寝心地である。
「……意外とすぐ眠くなるのよね」
まるで誰かに殴られたみたいに、わたしはすとんと眠りに落ちた。
「---19時ーーー」
目が覚めると外は真っ暗になっていた。
そろそろ起きて夕飯を食べないと。
ベッドから降りて食堂に向かうと、クロコダイルとダズが夕飯を食べていた。
まだ少し寝ぼけた頭のままクロコダイルの隣に座る。
「良く寝ていたようだな」
「おかげさまで。航海は順調?」
「問題ねえ。今日は今の位置に停泊するからそのつもりでいろ」
「了解。夕飯食べたら見張りに向かうわ」
今日の夕飯当番はダズで、結構な量が食卓に並んでいる。
ダズは意外と料理が上手で食べ甲斐がある。
夕飯をおいしくいただいて見張り塔へ向かうと、なぜかクロコダイルがついてきた。
「どうしたの?」
「少し休もうと思ってな。どうせ暇だろ?付き合え」
「かまわないけれど」
狭い見張り台で、クロコダイルと並んで座る。
視界は良好。
敵影なし。
頭上には満天の星空。
「いい景色ね」
「そうだな。空気が澄んでいて悪くねえ感触だ」
「それに隣にあなたがいるしね。ねえ、この世界って広いのね」
「なにを今更言いやがる」
「あなたと旅をして改めて思ったのよ。わたしの知っていた世界ってちっぽけだったんだなって」
「んなことねえと思うがな。だがカズヤが隣に居て新しい世界を造れるならそれもいいだろう」
星空の下に紫煙がくゆる。
少し目に染みて、視界がにじんだ。
それでも、今のわたしに見えているものはこんなにも大きくて広い。
「明日が楽しみだわ」
「そりゃいいことだ。明日が来るのを恐れていたら、航海なんてできねえからな」
クロコダイルの横顔がゆっくり微笑む。
その笑顔は間違っても善良なんかじゃないけれど。
でもそれはわたしの好むそれだった。
世界は広い。
わたしは小さい。
それでもあなたが隣に居てくれたなら。
怯えることなんて一つもない。
クロコダイルに連れ出してもらってから、そのことをひしと感じるようになった。
「気持ちいいわね」
柔らかな風が吹き抜ける甲板。
船の操縦をするクロコダイルの隣でぐぐっとのびをする。
「もうすぐシャボンディ諸島の海域に入るから気候が落ち着いてきたんだろう」
「シャボンディ諸島では船のコーティングをしてもらうのよね?
わたしコーティング船って乗ったことないから楽しみだわ」
「以前赤い土の大陸を超えたときはどうしたんだ?」
「その時は陸路を使ったのよ。コーティングしてもらえるような船ではなかったしね。
この後の魚人島も楽しみだわ」
「そうか。ならばじっくり船旅を楽しむんだな」
この旅はわたしの知らないことだらけだ。
もちろん妹と世界を半周したことはあるし、海軍時代にもあちらこちらに足をのばしている。
それでもクロコダイルと一緒に見る世界はわたしにとって目新しいことだらけで。
「シャボンディ諸島ではたくさん買い物をしましょうね」
「そいつに付き合わされるのはごめんだぜ?」
「うそ。デートできて嬉しいくせに」
「ふん。どうだかな。まだカズヤの買い物は短いから我慢できるが、あまりに長居するなら置いていくぞ」
「いいじゃない。どうせコーティングしている間は暇なのだから」
船全体をシャボンで覆うのだからきっとそれなりの時間がかかるに違いない。
その間はのんびり買い物したり遊園地に行ったり、いかにもデートと言えるようなことをしたいのだ。
「だがシャボンディ諸島は物騒な地域も多いからな。
せっかくだ。戦闘経験を積むとしようじゃねえか」
「そんなのいつもどおりじゃない。それにわたしとあなたとダズなら、これ以上経験を積まなくてもいいと思うのだけれど」
「バカ言え。戦えるときには戦っておくんだよ。腕がなまっちまうだろうが」
「それはそうなのだけれど。でもお買いものと遊園地は行きましょうね」
「頑固だな。まあそれぐらい付き合ってやるとするか」
はあ、と紫煙が吐き出される。
ここで折れるところが、クロコダイルのわたしに甘いところだ。
そんなところも好きだからいいけど。
「そろそろ操舵を代わりましょうか?」
「いやまだいい。カズヤは夜の見張り当番だっただろう?少し寝ておけ」
「そうね。せっかくだし甲板でお昼寝しようかしら」
「そんなんでいいのか?もう若くねえんだから部屋できっちり寝たらどうだ」
失礼ね。これでもあなたより20歳は若いんだから。
でもまあクロコダイルの言う通りではある。
ここは素直に引き上げようか。
「なら部屋で寝てくるわ。おやすみなさい」
「ああ」
部屋に戻ってベッドに倒れこむ。
まだ新しいベッドは体に馴染んでいなくて新鮮な気持ちだ。
クロコダイルもわたしも寝具にはこだわったのでなかなかの寝心地である。
「……意外とすぐ眠くなるのよね」
まるで誰かに殴られたみたいに、わたしはすとんと眠りに落ちた。
「---19時ーーー」
目が覚めると外は真っ暗になっていた。
そろそろ起きて夕飯を食べないと。
ベッドから降りて食堂に向かうと、クロコダイルとダズが夕飯を食べていた。
まだ少し寝ぼけた頭のままクロコダイルの隣に座る。
「良く寝ていたようだな」
「おかげさまで。航海は順調?」
「問題ねえ。今日は今の位置に停泊するからそのつもりでいろ」
「了解。夕飯食べたら見張りに向かうわ」
今日の夕飯当番はダズで、結構な量が食卓に並んでいる。
ダズは意外と料理が上手で食べ甲斐がある。
夕飯をおいしくいただいて見張り塔へ向かうと、なぜかクロコダイルがついてきた。
「どうしたの?」
「少し休もうと思ってな。どうせ暇だろ?付き合え」
「かまわないけれど」
狭い見張り台で、クロコダイルと並んで座る。
視界は良好。
敵影なし。
頭上には満天の星空。
「いい景色ね」
「そうだな。空気が澄んでいて悪くねえ感触だ」
「それに隣にあなたがいるしね。ねえ、この世界って広いのね」
「なにを今更言いやがる」
「あなたと旅をして改めて思ったのよ。わたしの知っていた世界ってちっぽけだったんだなって」
「んなことねえと思うがな。だがカズヤが隣に居て新しい世界を造れるならそれもいいだろう」
星空の下に紫煙がくゆる。
少し目に染みて、視界がにじんだ。
それでも、今のわたしに見えているものはこんなにも大きくて広い。
「明日が楽しみだわ」
「そりゃいいことだ。明日が来るのを恐れていたら、航海なんてできねえからな」
クロコダイルの横顔がゆっくり微笑む。
その笑顔は間違っても善良なんかじゃないけれど。
でもそれはわたしの好むそれだった。
世界は広い。
わたしは小さい。
それでもあなたが隣に居てくれたなら。
怯えることなんて一つもない。