with you
お名前をどうぞ、レディ
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「ねえ、クロコダイル。好きよ」
さわやかな風の吹きぬける甲板。秋島が近いためか風が涼しい。
クロコダイルは操舵室で舵を切っていて、わたしは甲板で気持ちのいい風を受けている。
「知っている」
「何度言っても言い足りないのよ」
「わがままなのか、貪欲なのか」
「両方ね。あなたはもっと素直になってもいいと思うのだけれど」
くすりと微笑んでクロコダイルの方へ向き直る。
風が強く吹いてわたしの髪をたなびかせる。
「おれは十分素直になっている。おいカズヤ、こっちにこい」
「よろこんで」
ゆっくりとクロコダイルの元へと歩み寄る。
いつもより遅いのはあなたと戯れる時間を楽しんでいるから。
「いつの間にここまでおれ好みの女になったんだ?」
「へつらうつもりはないのだけれど…強いて言うならあなたがそう変えたのよ」
「クハハ、良い傾向じゃねえか」
クロコダイルは右手を舵から離しわたしの頭をぐしゃりと撫でる。
「あなただって、いつの間にわたし好みの男になったのかしら。
最初はいやらしい男だと思っていたのだけれど」
「ふん、おれは何も変わっちゃいねえよ」
「ということは最初からわたしのことが好きだったのかしら」
「さあな」
そう言ってそっぽを向く。でもその目じりは優しく下がっていて。
そっけない態度なんて何の意味もなさないわね。
「クロコダイル」
「なんだ」
「好きよ、大好き」
「知ってると言っただろう」
「何回言っても足りないと言ったでしょう」
「しつこい女は嫌われるぞ」
「あら、しつこいわたしは好きなくせに」
「口の減らねえ女だ」
そう言いながらもクロコダイルの右手はわたしの頭を捕えたままだ。
この人ならどんなわたしでも受け入れてくれると知っているから。
自然と口角が上がる。
「叶うなら…一生一緒に…」
「バカかてめえは。前にも言っただろう。カズヤは賭けで手に入れた景品だ。
そう簡単には手放さねえよ。一生な」
「ふふ、そうだったわね。わたしの人権はどこにいったのかしら」
「景品に成り下がった時点でてめえの人権なんざ認めねえよ。
カズヤはそうやっておれの横でバカみてえに笑ってりゃいいんだ」
まったく、横暴な人。
でもそこが好き。
海賊狩り時代から、海軍に入った時も周囲に流されてここまでやってきたわたしを問答無用で明るい場所へ引きづり出してくれたあなた。
その強引さと横暴さに何度救われたか。
たぶんこれ以上クロコダイルに愛を伝えてもさらっと受け流されるだけなのだろう。
それでもわたしは何度だって言うよ。
何回唱えたって効果の変わらない魔法の呪文。
好きよ、大好き、愛してる。
あなたがうんざりしたって、わたしはこの呪文を唱え続けるよ。
「クロコダイル、風向きがおかしくない?」
ふいに風向きが変わった。これは…
「ちっ南から嵐が来るな。右方向へかわすぞ。帆の向きを変えてこい」
「了解」
慌てて甲板から走り出る。
途中でダズを捕まえて一緒に帆の向きを変える。
「これで…いいかしら…」
「おそらく」
「クロコダイル!帆の向きはこれで大丈夫!?」
「ああ、上出来だ」
「なにがあった」
状況を把握していないダズが不審げに問う。
「南の海から暗雲がわいてきていてね。風も強くなってきたから緊急回避よ」
「そういうことか。おれは持ち場に戻る。また何かあれば呼べ」
「うん、ありがとう」
その後しばらく荒れた海が続いたが、クロコダイルの舵さばきでなんと乗り切っていく。
数時間後には荒れた海域を抜け、再び薙いだ海が広がっていた。
「やれやれ、えらい目にあったわ」
「ふん、雨にぶち当たらなかっただけマシだ」
「それもそうね」
相変わらず舵を切るクロコダイルの後ろに回り、その大きな背中にしがみつく。
クロコダイルはなにも言わない。
それでいい。それが心地いい。
「好き」
「知っている」
「大好き」
「知っている」
「愛してる」
「知っている」
「海に飛ばされちゃったりなんかしないでね」
「それはこちらのセリフだ」
「わたしは大丈夫よ、泳げるもの」
「そうかよ」
「でもクロコダイルは海に愛されているから」
「あ?嫌われてるの間違いだろう?」
「ううん、あってる。海に愛されてるから一度海に捕われたらもう帰ってこれなくなってしまうのよ」
「くく、ならせいぜい海に落ちないようにしねえとな」
「気を付けてね」
「ああ、気を付けよう」
「あなたを受け止められるのはわたしだけなのだから」
「肝に銘じておいてやるよ」
「好きよ」
「知っている」
そんなバカみたいなやり取りができるのも、この距離に居られるからで。
ゆっくりと微笑んでクロコダイルを見上げると、彼も穏やかな顔で振り返りわたしの頭をぐしゃりと撫でた。
そのときのクロコダイルの顔は…明言するまでもないわね。
さわやかな風の吹きぬける甲板。秋島が近いためか風が涼しい。
クロコダイルは操舵室で舵を切っていて、わたしは甲板で気持ちのいい風を受けている。
「知っている」
「何度言っても言い足りないのよ」
「わがままなのか、貪欲なのか」
「両方ね。あなたはもっと素直になってもいいと思うのだけれど」
くすりと微笑んでクロコダイルの方へ向き直る。
風が強く吹いてわたしの髪をたなびかせる。
「おれは十分素直になっている。おいカズヤ、こっちにこい」
「よろこんで」
ゆっくりとクロコダイルの元へと歩み寄る。
いつもより遅いのはあなたと戯れる時間を楽しんでいるから。
「いつの間にここまでおれ好みの女になったんだ?」
「へつらうつもりはないのだけれど…強いて言うならあなたがそう変えたのよ」
「クハハ、良い傾向じゃねえか」
クロコダイルは右手を舵から離しわたしの頭をぐしゃりと撫でる。
「あなただって、いつの間にわたし好みの男になったのかしら。
最初はいやらしい男だと思っていたのだけれど」
「ふん、おれは何も変わっちゃいねえよ」
「ということは最初からわたしのことが好きだったのかしら」
「さあな」
そう言ってそっぽを向く。でもその目じりは優しく下がっていて。
そっけない態度なんて何の意味もなさないわね。
「クロコダイル」
「なんだ」
「好きよ、大好き」
「知ってると言っただろう」
「何回言っても足りないと言ったでしょう」
「しつこい女は嫌われるぞ」
「あら、しつこいわたしは好きなくせに」
「口の減らねえ女だ」
そう言いながらもクロコダイルの右手はわたしの頭を捕えたままだ。
この人ならどんなわたしでも受け入れてくれると知っているから。
自然と口角が上がる。
「叶うなら…一生一緒に…」
「バカかてめえは。前にも言っただろう。カズヤは賭けで手に入れた景品だ。
そう簡単には手放さねえよ。一生な」
「ふふ、そうだったわね。わたしの人権はどこにいったのかしら」
「景品に成り下がった時点でてめえの人権なんざ認めねえよ。
カズヤはそうやっておれの横でバカみてえに笑ってりゃいいんだ」
まったく、横暴な人。
でもそこが好き。
海賊狩り時代から、海軍に入った時も周囲に流されてここまでやってきたわたしを問答無用で明るい場所へ引きづり出してくれたあなた。
その強引さと横暴さに何度救われたか。
たぶんこれ以上クロコダイルに愛を伝えてもさらっと受け流されるだけなのだろう。
それでもわたしは何度だって言うよ。
何回唱えたって効果の変わらない魔法の呪文。
好きよ、大好き、愛してる。
あなたがうんざりしたって、わたしはこの呪文を唱え続けるよ。
「クロコダイル、風向きがおかしくない?」
ふいに風向きが変わった。これは…
「ちっ南から嵐が来るな。右方向へかわすぞ。帆の向きを変えてこい」
「了解」
慌てて甲板から走り出る。
途中でダズを捕まえて一緒に帆の向きを変える。
「これで…いいかしら…」
「おそらく」
「クロコダイル!帆の向きはこれで大丈夫!?」
「ああ、上出来だ」
「なにがあった」
状況を把握していないダズが不審げに問う。
「南の海から暗雲がわいてきていてね。風も強くなってきたから緊急回避よ」
「そういうことか。おれは持ち場に戻る。また何かあれば呼べ」
「うん、ありがとう」
その後しばらく荒れた海が続いたが、クロコダイルの舵さばきでなんと乗り切っていく。
数時間後には荒れた海域を抜け、再び薙いだ海が広がっていた。
「やれやれ、えらい目にあったわ」
「ふん、雨にぶち当たらなかっただけマシだ」
「それもそうね」
相変わらず舵を切るクロコダイルの後ろに回り、その大きな背中にしがみつく。
クロコダイルはなにも言わない。
それでいい。それが心地いい。
「好き」
「知っている」
「大好き」
「知っている」
「愛してる」
「知っている」
「海に飛ばされちゃったりなんかしないでね」
「それはこちらのセリフだ」
「わたしは大丈夫よ、泳げるもの」
「そうかよ」
「でもクロコダイルは海に愛されているから」
「あ?嫌われてるの間違いだろう?」
「ううん、あってる。海に愛されてるから一度海に捕われたらもう帰ってこれなくなってしまうのよ」
「くく、ならせいぜい海に落ちないようにしねえとな」
「気を付けてね」
「ああ、気を付けよう」
「あなたを受け止められるのはわたしだけなのだから」
「肝に銘じておいてやるよ」
「好きよ」
「知っている」
そんなバカみたいなやり取りができるのも、この距離に居られるからで。
ゆっくりと微笑んでクロコダイルを見上げると、彼も穏やかな顔で振り返りわたしの頭をぐしゃりと撫でた。
そのときのクロコダイルの顔は…明言するまでもないわね。