氷の上で彼はなにを思うか
お名前をどうぞ、レディ
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べしゃっ
盛大にハードルをひっくり返して
景気よく、私は地に突っぷした。
それは体育の時間だった。
男子は短距離走、女子はハードル。
校庭を半分ずつ使って走っていた。
とは言え、私は運動がすごく苦手で。ほとんど歩きながら、とりあえず1番低いハードルをまたいでいた。
遠くではシャチとペンギンが走っている。
2人ともとても早いけど走り方は全然違う。
シャチは子どもがかけっこしてるみたい。
ペンギンは…すごくスマートに走る。ネコ科の動物みたいにしなやかに駆けている。
「かっこいいなぁ…」
「前見て走んなさいよ」
思わず漏れた言葉に、ボニーに頭をはたかれる。
あのむっつりのどこがいいんだか。
そう言ってボニーには1番高いハードルをやすやすと駆けていく。
その運動神経が羨ましいなあ。
ボニーの後を追うように走り出した。
そして最初に戻る。
がしゃんっ
べしゃっ
ばしゃっ
最初の音は私が走ってハードルに足を引っ掛けた音。
次が頭から地面に突っぷした音で、最後にハードルが私の上に倒れこんできた音。
痛い…
「おいっ、チサ?だからちゃんと前見て走れって…」
ボニーが素早く近寄ってきて介抱してくれる。
「うー、ゴメン…」
「あたしに謝ったって…
「 ボニー?」
「チサ??」
ボニーの声じゃない。
もっと低い声が焦ったように上から降り注がれる。
「…ペンギンっ??」
「チサ?無事か??」
珍しくペンギンが取り乱している。
息も絶え絶え、汗を滝のように流して私の顔を覗き込んでいた。
あれ、ペンギンたしか校庭の反対側にいたよね…?
「あっ…、うん…だいじょうぶ…
「大丈夫じゃないだろ??」
ペンギンの顔が険しくなり、私を横抱きに抱え上げる。
「ちょ、ペンギン??」
「…」
後は任せたからね?
保健室に女の子連れ込むなんて、ペンギンやるなあ…
なんて周囲の野次も無視して、横抱き…いわゆるお姫様抱っこで私は保健室に連行された。
「あの、ペンギン?」
「どこか痛むか」
「う、えと、おでこと鼻が…」
触ってみるとわずかに血が滲んでいる。
ペンギンは無言のまま、ガーゼで血をぬぐい、的確に処置を進めてくれる。
不謹慎かもだけど、真剣に治療してくれるペンギンはさっきとほまた違った雰囲気でかっこいい。
さっきのが爽やかスポーツマンなら、今はクールなインテリさんかな。
「足、見せてみろ」
有無を言わさずペンギンは私の足をとり、あっちこっち触っている。
「少しひねっただけみたいだな」
ガサガサと戸棚をあさり、湿布を私の足に貼る。
「しばらくは走ったり、跳んだりするなよ。
体育の先生には休んでいると伝えておく」
私が返事をする前にペンギンは校庭に戻っていった。
ペンギン…わざわざ校庭の反対からとんできてくれたんだ…
また、授業に戻るんだろうな。
しかしペンギンは教師と二言三言話すと、また保健室に戻ってきた。
「落ち着いたか」
「うん。ありがとう。
ペンギン、授業は?」
「気にするな。安静にしてろ」
「ありがと…。ペンギン授業…」
「なんだ、俺がいない方がいいか?」
「なっ、違っ…」
「そうか」
クスクス笑うペンギンに、からかわれたのだと気がつく。
「もう、からかわないでよ。
本気にしちゃうじゃん」
「俺は本気だったんだがな」
「ん?」
「この後どうする?」
「この後って?」
「保健室で休むか、外で見学するか」
ここでダラダラしてるのもいいけど…
「ペンギンが、走ってるとこ見たい」
「いいのか、それで」
どういう意味だろう。
でも、せっかくだからさっきのペンギンの走りを今度は間近で見たいな。
「それがいい。走ってるペンギン、かっこいいから」
「ずっと走ってたほうがいいか?」
「それはヤダ」
意地悪なことをいいながらも、ペンギンは私に手を差し伸べる。
ありがたく、その手をつかめば軽く引かれる。
やっぱり、男の子なんだなあ。
「ほら、行くぞ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
紳士なペンギンに手を引かれ、暑い日差しに踊り出た
盛大にハードルをひっくり返して
景気よく、私は地に突っぷした。
それは体育の時間だった。
男子は短距離走、女子はハードル。
校庭を半分ずつ使って走っていた。
とは言え、私は運動がすごく苦手で。ほとんど歩きながら、とりあえず1番低いハードルをまたいでいた。
遠くではシャチとペンギンが走っている。
2人ともとても早いけど走り方は全然違う。
シャチは子どもがかけっこしてるみたい。
ペンギンは…すごくスマートに走る。ネコ科の動物みたいにしなやかに駆けている。
「かっこいいなぁ…」
「前見て走んなさいよ」
思わず漏れた言葉に、ボニーに頭をはたかれる。
あのむっつりのどこがいいんだか。
そう言ってボニーには1番高いハードルをやすやすと駆けていく。
その運動神経が羨ましいなあ。
ボニーの後を追うように走り出した。
そして最初に戻る。
がしゃんっ
べしゃっ
ばしゃっ
最初の音は私が走ってハードルに足を引っ掛けた音。
次が頭から地面に突っぷした音で、最後にハードルが私の上に倒れこんできた音。
痛い…
「おいっ、チサ?だからちゃんと前見て走れって…」
ボニーが素早く近寄ってきて介抱してくれる。
「うー、ゴメン…」
「あたしに謝ったって…
「 ボニー?」
「チサ??」
ボニーの声じゃない。
もっと低い声が焦ったように上から降り注がれる。
「…ペンギンっ??」
「チサ?無事か??」
珍しくペンギンが取り乱している。
息も絶え絶え、汗を滝のように流して私の顔を覗き込んでいた。
あれ、ペンギンたしか校庭の反対側にいたよね…?
「あっ…、うん…だいじょうぶ…
「大丈夫じゃないだろ??」
ペンギンの顔が険しくなり、私を横抱きに抱え上げる。
「ちょ、ペンギン??」
「…」
後は任せたからね?
保健室に女の子連れ込むなんて、ペンギンやるなあ…
なんて周囲の野次も無視して、横抱き…いわゆるお姫様抱っこで私は保健室に連行された。
「あの、ペンギン?」
「どこか痛むか」
「う、えと、おでこと鼻が…」
触ってみるとわずかに血が滲んでいる。
ペンギンは無言のまま、ガーゼで血をぬぐい、的確に処置を進めてくれる。
不謹慎かもだけど、真剣に治療してくれるペンギンはさっきとほまた違った雰囲気でかっこいい。
さっきのが爽やかスポーツマンなら、今はクールなインテリさんかな。
「足、見せてみろ」
有無を言わさずペンギンは私の足をとり、あっちこっち触っている。
「少しひねっただけみたいだな」
ガサガサと戸棚をあさり、湿布を私の足に貼る。
「しばらくは走ったり、跳んだりするなよ。
体育の先生には休んでいると伝えておく」
私が返事をする前にペンギンは校庭に戻っていった。
ペンギン…わざわざ校庭の反対からとんできてくれたんだ…
また、授業に戻るんだろうな。
しかしペンギンは教師と二言三言話すと、また保健室に戻ってきた。
「落ち着いたか」
「うん。ありがとう。
ペンギン、授業は?」
「気にするな。安静にしてろ」
「ありがと…。ペンギン授業…」
「なんだ、俺がいない方がいいか?」
「なっ、違っ…」
「そうか」
クスクス笑うペンギンに、からかわれたのだと気がつく。
「もう、からかわないでよ。
本気にしちゃうじゃん」
「俺は本気だったんだがな」
「ん?」
「この後どうする?」
「この後って?」
「保健室で休むか、外で見学するか」
ここでダラダラしてるのもいいけど…
「ペンギンが、走ってるとこ見たい」
「いいのか、それで」
どういう意味だろう。
でも、せっかくだからさっきのペンギンの走りを今度は間近で見たいな。
「それがいい。走ってるペンギン、かっこいいから」
「ずっと走ってたほうがいいか?」
「それはヤダ」
意地悪なことをいいながらも、ペンギンは私に手を差し伸べる。
ありがたく、その手をつかめば軽く引かれる。
やっぱり、男の子なんだなあ。
「ほら、行くぞ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
紳士なペンギンに手を引かれ、暑い日差しに踊り出た