魁斗生誕祭記念2014
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観客15000人の観衆
女の子達が、ざわめく会場内
テストで鳴らすギターの音でも悲鳴を上げる程、興奮状態
そう、今日は3Mj ファーストライブ
熱気に包まれながら会場が真っ暗になり
地響きする大音量が会場に鳴り響いた
今一番の悲鳴が飛び交う
もうすぐメンバーが出てくる
みんなこの時をどれだけ待ちわびたか知れない
2014年3月26日にデビューしてから
やっと彼等に会えるという気持ちで来てる人が殆どだと思う
今日この真ん中最前列のプレミアチケットをくれたのは
私の彼
辻魁斗だ
ドーンという音と共に煙が立ち上がり
同時にそれが合図となり3人が姿を現した
まだ付き合ってまもない私達
彼はバイト先のレストランの常連さんだったことから段々と仲良くなって
デビュー前日、魁斗さんからコクられた
まさかアイドルになると思わなかったから複雑な感覚だ
そんな私も興奮して少しでも近付きたくて
体を少し前のめりにした瞬間
背中に鋭い痛みと熱さが走った
背後に人の気配を感じていると耳元で
「死ね」
という言葉が微かに聞こえ、そしてすぐに人の気配が消えた
背中が熱い…
何が起きたのかわからない
段々と意識が朦朧とする
それでも彼の晴れ舞台を見たい一心でステージに目を向ける
魁斗さんと視線が絡み合い
お互いに微笑み合うと
私は意識が段々無くなり
その場に崩れたのだった
そして微かに私の名前を呼ぶ魁斗さんの声が聞こえた気がした…
***************
(純花?)
心の中で名前を呼び 愛しい人の異変に気付き足が止まる
そして魁斗の異変に他の二人が気付き魁斗のソロをフォローしていた
まだ何が起きたのか把握出来ずに居る
会場も魁斗の異変にざわつき始める
呆然と立ち尽くす魁斗はその時
慌ただしく動いているスポットライトが
純花の立っていた場所を一瞬照らしたのを見逃さなかった
そこには血が一面に広がっていた
ハッと目を大きくさせると体は徐々に純花の元に向かっていた
何がなんだかわからないまま
魁斗は叫ぶ
「き、救急車…誰、か…救急車!救急車呼べよ!早く!」
叫びながらステージを降りる
周りは魁斗がステージから降りてきたことに悲鳴を上げていて
彼女が刺されたことには気づいていない
魁斗が純花を抱き締めることで
やっと異変に気付いた観客が
今度は違う意味で悲鳴を上げる
その時、慎くんが遠くに走って逃げて行く人を見つける
「あの人捕まえて!」
咄嗟にマイクで叫んだ慎くん
すると、すかさず司が
「俺が行く」
「隊長?」
それを横で聞いていた司が素早く走って行った
魁斗は純花の名前を呼び続けた
悲鳴にも似た声で…
真っ白い魁斗の衣装は純花の血で染まっていた…
ライブは当然中止となった
『俺…暫く休む…こんな状態で3Mj 続けるなんて出来ねぇし…』
その意見に他の二人は反対した
なぜなら、純花は自分のせいでこれ以上ファンを苦しめることになるのは望んでないだろうという司の意見に慎くんも同意したからだ
『せめてアイツが目覚ました時に傍にいてやりたいんだ』
目を覚ますまで傍にいたいという魁斗の申し出には慎くんも司も反対は出来なかった
*****************
一瞬目を覚ました時、目の前にいたのは彼、魁斗さんだった
どんなに安心したことか…
魁斗さんに何もなくて良かったと安堵し
麻酔がまだ効いてるせいか私はまた眠りに落ちた
そして魁斗さんも仕事を再開させてから数日後
ICUから出た私は魁斗さんの、はからいで
こんな立派な個室に入れられていた
あと10分遅ければ出血多量で危なかったと医師から言われ命はとりとめた
私のせいでライブを中止にさせ、
多大な迷惑をかけてしまったと
大変なことをしてしまったと
ずっとベッドの中で考えていた
これ以上側にいるわけにはいかないなって
魁斗さんの夢を潰すわけにはいかないって
「ま、まだ付き合ってまもないんだし、今なら別れても傷も浅いよね!うん! 大丈夫大丈夫!」
自分に言い聞かせる為に声に出して呟いてみたが
本当は私にはとても、苦渋の選択だった
そして震える手でLINEを開きメッセージを打ち
送信を押す指もまた震えていた
「別れよう」
この身体じゃ外にいくことも出来ない
この騒ぎじゃ病院すら来てもらうことだって出来ない
忙しい人だからきっと電話だって出られない
だから手段はこれしかなかった
既読になったかどうかすら確かめるのが怖かった
だから、送ってからはスマホの電源をオフにし見ないようにしていた
LINEしてから8時間程経過し
消灯の時間が迫っていた
私はあれからずっと夕食も食べず泣き続けていた
涙は枯れることなく
止まっても魁斗さんを思うだけでまた流れを繰り返す
子供のように咽び泣く
声をなるべく出さないように布団をかぶって…
心は正直に沢山の涙を流した
そんな時
走ってくる足音が廊下でバタバタと聞こえてくる
まさかとは思ったけど
病室のドアの前で足音は止まる
「ーっ!」
ドアを開けて姿を現したのは彼だった
『ハァ、ハァ、ハァッ』
「魁斗…さん」
息も上がるその口から飛び出した言葉は
『バ、バッッカじゃねぇの?!!』
「な、なんで…」
『お、おま、えが、おかしなこと、送ってくるからだろ!はぁ…はぁ…』
まだ息が整ってないのか、上手く話せていない
どこから走ってきたんだろう
こんなに息を切らして…
魁斗さんが一生懸命走って、ばっかじゃねえの!って
怒鳴ってくれたことが正直嬉しかった
それでも私は、これじゃダメだと心にもないことを言ってしまう
「私じゃなくてもいいじゃない…」
『お前…本気で言ってんの?それ』
ベッドまで近付いて私を見てハッとした表情をする
『お前…泣いてたのか?』
決心した筈なのに魁斗さんの顔を見てしまうと愛しさと切なさが入り交じり
今にもすがり付きたくなって
あぁ、この人は私の全てなんだと実感してしまう
私は泣き腫らした顔を咄嗟にふとんで隠したけれど、魁斗さんに剥がされてしまった
『泣くくらいなら、あんなの送ってくんな』
魁斗さんの手が私の頬に優しく触れて
いつの間にか止まっていた涙がまた流れ出した
『おまえってホント、馬鹿だよな
だから俺が居ないと駄目なんだろ?』
それから私の頭をゆっくり撫でながら抱き締める
その暖かさに声を上げて泣かずにいられなかった…
暫く抱き締められながら背中を撫でてくれていた
私も落ち着きを取り戻してくる
「忙しいのに、ごめんね…」
『気にすんなって
別れるとかそういう話、もういらねぇから。
そんなんで別れるとかマジありえねぇし』
「でもね!」
『でもねじゃねえって!
余計なこと考えんな
俺は!お前がすげぇ好きだから絶対離さねぇし』
「魁斗さん…」
『俺はお前が邪魔だとか思ったこともねぇし
寧ろ別れて俺の側から居なくなるほうが嫌っていうか…
だからそんな別れてとか言う、なよ…』
今にも泣きそうな表情で、つられて私もまた目が潤む
『言っとくけど、お前が刺されたから
その責任で、とかじゃねぇから』
「うん、ごめん…」
『傷、まだ痛むのか?』
「少しね、でもだいぶ
痛みもなくなってきたかな
ホント、魁斗さんに何もなくて良かった…」
『なっ!俺が刺された方が良かったよ!
もう二度とあんな場面見たくねぇし!
お前、俺の心配ばかりだな、たまには
自分の心配しろよな』
「え?私の心配は魁斗さんがしてくるんでしょ?ならいいじゃない」
『っ!ま、まぁな!』
あ、今の魁斗さんの照れながらの笑顔が凄く好き
自然に私も笑顔になるんだよね
『ん?どうした?』
「ううん、何でもないよ」
『なんだよそれ、まぁいいけど』
「明日早いんじゃないの?」
『ん?今日はここに泊まる』
「え?大丈夫なの?」
『ちゃんと事務所の許可はもらってきてるし、純花から離れたくねぇし…』
そう言いながらキスをくれた
魁斗さんの唇が震えている…
どうしたのかと唇を離し魁斗さんの顔を覗きこむと泣いているようだった
「魁斗さん…」
『守ってやれなくて…ホント…ごめん、な』
顔を歪ませ悔しがる魁斗さんの頭を私はそっと引き寄せる
「もう気にしないの!
魁斗さんのせいじゃないんだから自分責めたりしないで?」
『助かって…ホント良かった…
純花が居なくなったらと思ったら俺…
気が狂いそぅ、だった…生きててくれて、よかっ…くっ』
それから魁斗さんは言葉を続けられなくなり暫く声を殺しながら涙を流した
私のことで泣いてくれている魁斗さんを愛おしく思う
こんなにも大事に思ってくれてることが嬉しい
そして魁斗さんの涙もおさまった頃
『…もうこんな時間か』
「ホントだ、知らない間にこんなに時間経ってたんだ?」
あれから暫く魁斗さんの色んなことを話してくれた
実家のお店のこと、飼ってるプロキオンのことなど
まだまだ知らないことだらけだけど、これからもっと沢山知っていきたい
『退院したら何したい?』
「え?退院したら?そうだね…
ランド!ランド行きたい!
ランド行って魁斗さんと楽しみたいな!あ…
な、な~んてね、うそうそ!えっとねーー」
『行こうぜランド 行きたいんだろ?』
「…え?いいの?」
『大丈夫だろランドくらい』
無理に決まってる
これ以上騒ぎを起こすわけにはいかないんだよ
魁斗さん、無理してる
私のためにこんな嘘まで…ありがとう
胸が締め付けられる思いがした
その気持ちだけで十分嬉しいよ
「楽しみにしてるね」
『あぁ、楽しみにしてろ!』
「あ!後はね…またキス…したいなぁ」
魁斗さんの慌て振りをちょっと見たくなって
大胆発言をしてみたのはいいけど、
恥ずかしかったなと少し後悔しても既に遅かった
『ハァ!?ちょっ!ばっ!』
「あははは、慌ててる、慌ててる!冗談に決まってー」
予想通りの慌て振りに久々に笑った
のも束の間
『いいよ』
「え…っ!…んっ!」
それは一瞬何が起きたか判断が出来なかった
気付いた時には魁斗さんのキスを受けていた
さっきもしたけど、いきなりされることには慣れてない
『笑ったお仕置き、なんてな。
そんなの今だっていいだろ?
ハハッ!顔が真っ赤!』
「だ、だっていきなりこんな!まだ慣れてないのに…」
『早く慣れろよ』
「む、無理だよ!そういう魁斗さんだって真っ赤じゃん!」
『こ、これは!
その突っ込み禁止!』
そんなやり取りをしてる間にふと時計を見ると時間は0時を回る
「フフフ、
あ!魁斗さん!誕生日おめでとう」
『あ!えっと、サンキュー』
「0時過ぎたから
何もプレゼント渡せなくてごめんね」
『あ、それならさ、俺、欲しいものあるんだ。
これ』
そういうと私の手を取り薬指にリングがはめられた
「えっと、これ…」
『純花が欲しい。それからこれも。』
「え…」
ごそごそとなにかと思えば差し出してきたのは婚姻届だった
「え!!!な!どして!?」
『言っとくけど今回の責任で、とかじゃねえから。』
「いや、ちょっと待って!いきなりどうして?」
心臓が止まるかと思った
だっていきなり、思いもよらないものを2つも差し出されて
私の誕生日?って錯覚するほどのサプライズだ
『俺、今回のことでさ、そんな状態のお前になかなか会うことが許されなくて
耐えられないほど苦しくて、思ったんだ。
純花の側にずっといたい、毎日触れられる距離にずっといて欲しいってさ。
それに今回のことで、俺は一生お前のこと守っていきたいって思ったんだ。』
「わ、私もずっと魁斗さんの側にいたいよ?でも周りが許さないと…」
『それは大丈夫。俺、事務所と俺とお前の両親の許し、もらってきたからさ。
すんなり許してもらえなかったけど、条件付きでなんとか許してもらった。だから、俺と結婚してください』
そういいながら深々と頭を下げる
事務所と親の許可をもらってきたって
何から何までビックリすることばかりだ
本気なんだ
これから大変かもしれない
けど、魁斗さんと一緒なら乗り越えていける気がした
だって事務所と親の許可をもらってきたくらいだから
魁斗さんと一緒なら怖いもの無しだと思った
「うん……うっ、…な、なんだか私の方が…誕生日みたい、
こんな嬉しい贈り物…嬉し…すぎる…夢みたい…うっ…」
こんな嬉しいサプライズ
私は涙を流しながら幸せを噛み締めた
ここまで想ってくれている魁斗さんをずっと愛していけるなんて
ずっと側にいられるなんて
私ホントに夢を見てる気分だった
『俺だって、すげぇ嬉しい。最高の誕生日プレゼントだ。
今日ことは、ずっと忘れない。俺達の記念日にしようぜ』
「うん…魁斗さん…ありがとう、好き…だよ…」
『ーっ!可愛いこと言うの禁止!
それから、魁斗さんじゃなく魁斗って呼べよ』
「…か、魁斗…」
『ーっ!あぁもう!』
見上げると自然と重なりあう唇
お互いの想いを唇から感じ合う
付き合ってまだ日も浅いから大丈夫って強がって
一度は別れを言ったけれど
ホントはもう後には戻れないほどに気持ちが溢れていた
もう別れたいだなんて言わない
これからはずっと隣で魁斗の笑顔を見ていける幸せがある
私は魁斗の笑顔がなによりも一番好きだから…
happybirthday魁斗
完
『子供早く作ろうな!』
「いや、ちょっと、それはホント気が早すぎだからね?ね?
落ち着いて魁斗」
完www
女の子達が、ざわめく会場内
テストで鳴らすギターの音でも悲鳴を上げる程、興奮状態
そう、今日は3Mj ファーストライブ
熱気に包まれながら会場が真っ暗になり
地響きする大音量が会場に鳴り響いた
今一番の悲鳴が飛び交う
もうすぐメンバーが出てくる
みんなこの時をどれだけ待ちわびたか知れない
2014年3月26日にデビューしてから
やっと彼等に会えるという気持ちで来てる人が殆どだと思う
今日この真ん中最前列のプレミアチケットをくれたのは
私の彼
辻魁斗だ
ドーンという音と共に煙が立ち上がり
同時にそれが合図となり3人が姿を現した
まだ付き合ってまもない私達
彼はバイト先のレストランの常連さんだったことから段々と仲良くなって
デビュー前日、魁斗さんからコクられた
まさかアイドルになると思わなかったから複雑な感覚だ
そんな私も興奮して少しでも近付きたくて
体を少し前のめりにした瞬間
背中に鋭い痛みと熱さが走った
背後に人の気配を感じていると耳元で
「死ね」
という言葉が微かに聞こえ、そしてすぐに人の気配が消えた
背中が熱い…
何が起きたのかわからない
段々と意識が朦朧とする
それでも彼の晴れ舞台を見たい一心でステージに目を向ける
魁斗さんと視線が絡み合い
お互いに微笑み合うと
私は意識が段々無くなり
その場に崩れたのだった
そして微かに私の名前を呼ぶ魁斗さんの声が聞こえた気がした…
***************
(純花?)
心の中で名前を呼び 愛しい人の異変に気付き足が止まる
そして魁斗の異変に他の二人が気付き魁斗のソロをフォローしていた
まだ何が起きたのか把握出来ずに居る
会場も魁斗の異変にざわつき始める
呆然と立ち尽くす魁斗はその時
慌ただしく動いているスポットライトが
純花の立っていた場所を一瞬照らしたのを見逃さなかった
そこには血が一面に広がっていた
ハッと目を大きくさせると体は徐々に純花の元に向かっていた
何がなんだかわからないまま
魁斗は叫ぶ
「き、救急車…誰、か…救急車!救急車呼べよ!早く!」
叫びながらステージを降りる
周りは魁斗がステージから降りてきたことに悲鳴を上げていて
彼女が刺されたことには気づいていない
魁斗が純花を抱き締めることで
やっと異変に気付いた観客が
今度は違う意味で悲鳴を上げる
その時、慎くんが遠くに走って逃げて行く人を見つける
「あの人捕まえて!」
咄嗟にマイクで叫んだ慎くん
すると、すかさず司が
「俺が行く」
「隊長?」
それを横で聞いていた司が素早く走って行った
魁斗は純花の名前を呼び続けた
悲鳴にも似た声で…
真っ白い魁斗の衣装は純花の血で染まっていた…
ライブは当然中止となった
『俺…暫く休む…こんな状態で3Mj 続けるなんて出来ねぇし…』
その意見に他の二人は反対した
なぜなら、純花は自分のせいでこれ以上ファンを苦しめることになるのは望んでないだろうという司の意見に慎くんも同意したからだ
『せめてアイツが目覚ました時に傍にいてやりたいんだ』
目を覚ますまで傍にいたいという魁斗の申し出には慎くんも司も反対は出来なかった
*****************
一瞬目を覚ました時、目の前にいたのは彼、魁斗さんだった
どんなに安心したことか…
魁斗さんに何もなくて良かったと安堵し
麻酔がまだ効いてるせいか私はまた眠りに落ちた
そして魁斗さんも仕事を再開させてから数日後
ICUから出た私は魁斗さんの、はからいで
こんな立派な個室に入れられていた
あと10分遅ければ出血多量で危なかったと医師から言われ命はとりとめた
私のせいでライブを中止にさせ、
多大な迷惑をかけてしまったと
大変なことをしてしまったと
ずっとベッドの中で考えていた
これ以上側にいるわけにはいかないなって
魁斗さんの夢を潰すわけにはいかないって
「ま、まだ付き合ってまもないんだし、今なら別れても傷も浅いよね!うん! 大丈夫大丈夫!」
自分に言い聞かせる為に声に出して呟いてみたが
本当は私にはとても、苦渋の選択だった
そして震える手でLINEを開きメッセージを打ち
送信を押す指もまた震えていた
「別れよう」
この身体じゃ外にいくことも出来ない
この騒ぎじゃ病院すら来てもらうことだって出来ない
忙しい人だからきっと電話だって出られない
だから手段はこれしかなかった
既読になったかどうかすら確かめるのが怖かった
だから、送ってからはスマホの電源をオフにし見ないようにしていた
LINEしてから8時間程経過し
消灯の時間が迫っていた
私はあれからずっと夕食も食べず泣き続けていた
涙は枯れることなく
止まっても魁斗さんを思うだけでまた流れを繰り返す
子供のように咽び泣く
声をなるべく出さないように布団をかぶって…
心は正直に沢山の涙を流した
そんな時
走ってくる足音が廊下でバタバタと聞こえてくる
まさかとは思ったけど
病室のドアの前で足音は止まる
「ーっ!」
ドアを開けて姿を現したのは彼だった
『ハァ、ハァ、ハァッ』
「魁斗…さん」
息も上がるその口から飛び出した言葉は
『バ、バッッカじゃねぇの?!!』
「な、なんで…」
『お、おま、えが、おかしなこと、送ってくるからだろ!はぁ…はぁ…』
まだ息が整ってないのか、上手く話せていない
どこから走ってきたんだろう
こんなに息を切らして…
魁斗さんが一生懸命走って、ばっかじゃねえの!って
怒鳴ってくれたことが正直嬉しかった
それでも私は、これじゃダメだと心にもないことを言ってしまう
「私じゃなくてもいいじゃない…」
『お前…本気で言ってんの?それ』
ベッドまで近付いて私を見てハッとした表情をする
『お前…泣いてたのか?』
決心した筈なのに魁斗さんの顔を見てしまうと愛しさと切なさが入り交じり
今にもすがり付きたくなって
あぁ、この人は私の全てなんだと実感してしまう
私は泣き腫らした顔を咄嗟にふとんで隠したけれど、魁斗さんに剥がされてしまった
『泣くくらいなら、あんなの送ってくんな』
魁斗さんの手が私の頬に優しく触れて
いつの間にか止まっていた涙がまた流れ出した
『おまえってホント、馬鹿だよな
だから俺が居ないと駄目なんだろ?』
それから私の頭をゆっくり撫でながら抱き締める
その暖かさに声を上げて泣かずにいられなかった…
暫く抱き締められながら背中を撫でてくれていた
私も落ち着きを取り戻してくる
「忙しいのに、ごめんね…」
『気にすんなって
別れるとかそういう話、もういらねぇから。
そんなんで別れるとかマジありえねぇし』
「でもね!」
『でもねじゃねえって!
余計なこと考えんな
俺は!お前がすげぇ好きだから絶対離さねぇし』
「魁斗さん…」
『俺はお前が邪魔だとか思ったこともねぇし
寧ろ別れて俺の側から居なくなるほうが嫌っていうか…
だからそんな別れてとか言う、なよ…』
今にも泣きそうな表情で、つられて私もまた目が潤む
『言っとくけど、お前が刺されたから
その責任で、とかじゃねぇから』
「うん、ごめん…」
『傷、まだ痛むのか?』
「少しね、でもだいぶ
痛みもなくなってきたかな
ホント、魁斗さんに何もなくて良かった…」
『なっ!俺が刺された方が良かったよ!
もう二度とあんな場面見たくねぇし!
お前、俺の心配ばかりだな、たまには
自分の心配しろよな』
「え?私の心配は魁斗さんがしてくるんでしょ?ならいいじゃない」
『っ!ま、まぁな!』
あ、今の魁斗さんの照れながらの笑顔が凄く好き
自然に私も笑顔になるんだよね
『ん?どうした?』
「ううん、何でもないよ」
『なんだよそれ、まぁいいけど』
「明日早いんじゃないの?」
『ん?今日はここに泊まる』
「え?大丈夫なの?」
『ちゃんと事務所の許可はもらってきてるし、純花から離れたくねぇし…』
そう言いながらキスをくれた
魁斗さんの唇が震えている…
どうしたのかと唇を離し魁斗さんの顔を覗きこむと泣いているようだった
「魁斗さん…」
『守ってやれなくて…ホント…ごめん、な』
顔を歪ませ悔しがる魁斗さんの頭を私はそっと引き寄せる
「もう気にしないの!
魁斗さんのせいじゃないんだから自分責めたりしないで?」
『助かって…ホント良かった…
純花が居なくなったらと思ったら俺…
気が狂いそぅ、だった…生きててくれて、よかっ…くっ』
それから魁斗さんは言葉を続けられなくなり暫く声を殺しながら涙を流した
私のことで泣いてくれている魁斗さんを愛おしく思う
こんなにも大事に思ってくれてることが嬉しい
そして魁斗さんの涙もおさまった頃
『…もうこんな時間か』
「ホントだ、知らない間にこんなに時間経ってたんだ?」
あれから暫く魁斗さんの色んなことを話してくれた
実家のお店のこと、飼ってるプロキオンのことなど
まだまだ知らないことだらけだけど、これからもっと沢山知っていきたい
『退院したら何したい?』
「え?退院したら?そうだね…
ランド!ランド行きたい!
ランド行って魁斗さんと楽しみたいな!あ…
な、な~んてね、うそうそ!えっとねーー」
『行こうぜランド 行きたいんだろ?』
「…え?いいの?」
『大丈夫だろランドくらい』
無理に決まってる
これ以上騒ぎを起こすわけにはいかないんだよ
魁斗さん、無理してる
私のためにこんな嘘まで…ありがとう
胸が締め付けられる思いがした
その気持ちだけで十分嬉しいよ
「楽しみにしてるね」
『あぁ、楽しみにしてろ!』
「あ!後はね…またキス…したいなぁ」
魁斗さんの慌て振りをちょっと見たくなって
大胆発言をしてみたのはいいけど、
恥ずかしかったなと少し後悔しても既に遅かった
『ハァ!?ちょっ!ばっ!』
「あははは、慌ててる、慌ててる!冗談に決まってー」
予想通りの慌て振りに久々に笑った
のも束の間
『いいよ』
「え…っ!…んっ!」
それは一瞬何が起きたか判断が出来なかった
気付いた時には魁斗さんのキスを受けていた
さっきもしたけど、いきなりされることには慣れてない
『笑ったお仕置き、なんてな。
そんなの今だっていいだろ?
ハハッ!顔が真っ赤!』
「だ、だっていきなりこんな!まだ慣れてないのに…」
『早く慣れろよ』
「む、無理だよ!そういう魁斗さんだって真っ赤じゃん!」
『こ、これは!
その突っ込み禁止!』
そんなやり取りをしてる間にふと時計を見ると時間は0時を回る
「フフフ、
あ!魁斗さん!誕生日おめでとう」
『あ!えっと、サンキュー』
「0時過ぎたから
何もプレゼント渡せなくてごめんね」
『あ、それならさ、俺、欲しいものあるんだ。
これ』
そういうと私の手を取り薬指にリングがはめられた
「えっと、これ…」
『純花が欲しい。それからこれも。』
「え…」
ごそごそとなにかと思えば差し出してきたのは婚姻届だった
「え!!!な!どして!?」
『言っとくけど今回の責任で、とかじゃねえから。』
「いや、ちょっと待って!いきなりどうして?」
心臓が止まるかと思った
だっていきなり、思いもよらないものを2つも差し出されて
私の誕生日?って錯覚するほどのサプライズだ
『俺、今回のことでさ、そんな状態のお前になかなか会うことが許されなくて
耐えられないほど苦しくて、思ったんだ。
純花の側にずっといたい、毎日触れられる距離にずっといて欲しいってさ。
それに今回のことで、俺は一生お前のこと守っていきたいって思ったんだ。』
「わ、私もずっと魁斗さんの側にいたいよ?でも周りが許さないと…」
『それは大丈夫。俺、事務所と俺とお前の両親の許し、もらってきたからさ。
すんなり許してもらえなかったけど、条件付きでなんとか許してもらった。だから、俺と結婚してください』
そういいながら深々と頭を下げる
事務所と親の許可をもらってきたって
何から何までビックリすることばかりだ
本気なんだ
これから大変かもしれない
けど、魁斗さんと一緒なら乗り越えていける気がした
だって事務所と親の許可をもらってきたくらいだから
魁斗さんと一緒なら怖いもの無しだと思った
「うん……うっ、…な、なんだか私の方が…誕生日みたい、
こんな嬉しい贈り物…嬉し…すぎる…夢みたい…うっ…」
こんな嬉しいサプライズ
私は涙を流しながら幸せを噛み締めた
ここまで想ってくれている魁斗さんをずっと愛していけるなんて
ずっと側にいられるなんて
私ホントに夢を見てる気分だった
『俺だって、すげぇ嬉しい。最高の誕生日プレゼントだ。
今日ことは、ずっと忘れない。俺達の記念日にしようぜ』
「うん…魁斗さん…ありがとう、好き…だよ…」
『ーっ!可愛いこと言うの禁止!
それから、魁斗さんじゃなく魁斗って呼べよ』
「…か、魁斗…」
『ーっ!あぁもう!』
見上げると自然と重なりあう唇
お互いの想いを唇から感じ合う
付き合ってまだ日も浅いから大丈夫って強がって
一度は別れを言ったけれど
ホントはもう後には戻れないほどに気持ちが溢れていた
もう別れたいだなんて言わない
これからはずっと隣で魁斗の笑顔を見ていける幸せがある
私は魁斗の笑顔がなによりも一番好きだから…
happybirthday魁斗
完
『子供早く作ろうな!』
「いや、ちょっと、それはホント気が早すぎだからね?ね?
落ち着いて魁斗」
完www
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