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幸せとは

コンビニを出ると、駅前のロータリーを過ぎてすぐの所に待ち合わせの店がある。

玲愛もう来てるかな?

待たせたら悪いと少し急ごうとした時、駅から聞きなれない言葉が耳に入ってきた。

「悲しい目に遭っているワンちゃん猫ちゃんの為に募金活動にご協力下さい」

目をやると女性2人が街頭に立ち、何やら箱を持っていた。
普段なら全く気にも止めなかったと思う。
動物は好きだし、余裕があれば飼いたいな、とは思っていたけど、こういった活動に別段興味も無く、自分には無関係だと思っていたからだ。
それにも関わらず、今日は何故か惹きつけられた。

「こんにちは」

1人の女性が笑顔で挨拶すると、もう1人の女性も私を見ると慌てた様子で会釈した。

「これってどういう活動なんですか?」

特に興味も無いはずなのに、何で聞いたのかはわからない。
待ち合わせの時間にも余裕がなくなってきているし、話が長くなるようならすぐにでも立ち去ろう。

「保健所にいるワンちゃん猫ちゃんは殺処分されてしまうんです」

知らなかった…。
初めて知る犬猫達の現状に、立ち去る事もできず最後まで聞き入った。
捨てられた動物達、飼い主の勝手で保健所に連れてこられたペット達は殺されてしまう…そんな現実があるなんて。

もし私が昴のペットだったなら、間違いなく殺処分にされていたんだろう。
私も捨てられたんだから…。
また、心が沈もうとした。

「私たちはそういったワンちゃん猫ちゃん達を引き取って、里親になってくれる方を探す活動をしています」
「私たちの施設でも面倒は見れるのですが限度がありますし、やっぱり飼い主さんと一緒に暮らしていけるのがワンちゃん猫ちゃんにとっても幸せだと思うんです」

やっぱり大好きな人と一緒に過ごして行ける事はなによりも幸せなんだよ。
それは人も動物も変わらない。
そう思ったら泣けてきた。

「あ…あの…大丈夫ですか?」

挨拶してきた方の女性が慌てて声をかける。

「すみません…大丈夫です…頑張ってください」

それだけ言うとお財布を取り出し、千円札を募金箱に入れて立ち去った。

「あ…!ご協力ありがとうございます!」

深々と頭を下げる様が背中越しにも伝わる声だった。
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