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幸せとは

佐々木 玲愛は驚きを隠せずにいた。
電話越しに話す相手の言動が、あまりにも衝撃的だったからだ。

「ちょっと、それどういう事なの!?」
「ゴメン。でももう決めた事だから」
「決めた事って…!あの時私に言ったよね?絶対悲しませたりしないって!」
「あの時とは状況が変わったんだよ」
「何それ!?」

あまりにも自分勝手な言い分に腹が立ち、何度電話を切ってやろうと思ったか。

「俺だって、本当は嫌なんだよ…」

ブチ切れる寸前の私の頭を、相手の意外な一言が冷静にさせた。

「なによ…それ。ちゃんと話してよ」

言ってしまえば男の自己満足なのだが、そこには相手を思いやるがゆえの過ぎた優しさがあった。

「どうしてちゃんと言わなかったの?」
「自分勝手だって、わかってるから…。それならいっそ嫌われた方がいいって思ってさ」
「バカだね…」
「ごめん」
「そしたら、さよなら…なんだね」
「うん…ごめん」
「今でも好き?」
「あの頃と変わらないよ」
「わかった」

通話を終えると一呼吸置き、加奈の顔が浮かんだ。
こんな時にかけるべきか悩んだが、こんな時だからこそ話したかった。
1度、2度加奈に連絡を入れる。

出ない…か。

日を改めようか、とも思ったが、家族以上の存在であるという想いがお互いにある事を信じ、発信を続けた。

何回かけただろうか。
これで出なかったら加奈からかけてくるのを待とう。
そう思って発信をタッチする。
1回、2回……コールが繰り返される。

やっぱり今は無理か…

そう思った時だった。

「玲愛…ゴメン…出なくて」

加奈!繋がった!

「加奈。なんかあったの?話せる?」
「玲愛…あのね…えっとね…昴とね…」

加奈は言葉を詰まらせながらも精一杯自分の心境を話してくれた。
そんな加奈が愛おしくて、私はできる限りの優しさで応えた。

「今から少し会おうよ。そっち行くからさ」
「ありがとう…一人でいると辛かったから、助かる。でも待ってるのも辛いから外で会おう」
「うん。わかった。そしたらいつものお店にしよう!個室だし、そこならいくら泣いても大丈夫でしょ」

私の軽い冗談を、泣かないし、と言って笑った加奈にホッとした。

じゃ、後でね、と告げて通話を終えると、少し悩んでもう1件連絡を入れた。
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