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幸せとは

新沼 煇は悩んでいた。
地元岩手のカラオケ大会で優勝したのをきっかけに、歌で生きて行こうと決めた。
東京に出てきて5年、気がつけば30歳手前になっていた。
いくつかライブハウスにも出演して、僅かだがファンもいる。
オリジナルのCDも何枚か出した。
でもこのまま続けていても、デビューなんて無理なのではないか。
そんな思いが彼を苛んでいた。

メジャーなんて簡単だと思ってたんだけどなぁ…。
歌だって負けてねぇし、そこいらのヤツより俺の方がよっぽど良い曲作れんのに。
何でどこにも引っかからないんだよ…。

最近では路上に出て歌う事も始めた。

自分を、自分の歌を、もっと多くの人に知ってもらわなきゃダメだ。
流行りの曲のカバー動画をアップしたり、路上も続けて、とにかく人の目に触れてもらおう。

それしかないと言う決意でギターを背負う。

もう後は無いんだ…。

来年には30歳になる。
それまでに一つの可能性も感じられなかったら諦めよう。

そんな覚悟と共に家を後にした。
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