幸せとは
美樹本 加奈は泣いていた。
高1の時から5年も付き合っていた男と別れたからだ。
それは加奈が望んだ結末では無かったし、美談にも出来ない、心に大きな傷を残すような最後だった。
その日は自分がどうやって家まで帰り着いたのか、全く覚えていなかった。
部屋に着いても私の心は死んでいて、机に置かれた二人の時間が、これ以上進まないのだと考える余裕すらなかった。
どうして?なんで?
その言葉だけが私を支配して、呆然と時間だけ浪費していたとき、スマホに着信が入る。
私はそれを拒否した。
1度目の着信からしばらくして2度目の着信。
ヴーという振動が妙に私を苛立たせた。
しつこい着信に根負けしてチラリとスマホを見ると、玲愛からのものだった。
玲愛とは実家が同じ団地という事もあって、同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校と、ずっと一緒に乗り越えてきた、家族以上に大切な存在と言っていい。
高校で離ればなれになってしまったが、定期的に連絡を取り合っている数少ない存在でもある。
玲愛……玲愛…!
親友の名前にまた涙が溢れ出てきた。
すがるように通話ボタンをタッチして玲愛に話しかける。
「玲愛…ゴメン…出なくて」
「加奈。なんかあったの?話せる?」
「玲愛…あのね…えっとね…昴とね…」
言葉に詰まりながら、泣きじゃくりながら、彼と別れた事を告げた。
玲愛は、ただうんうんとかそうだねとか優しく私を包んでくれた。
「今から少し会おうよ。そっち行くからさ」
「ありがとう…一人でいると辛かったから、助かる。でも待ってるのも辛いから外で会おう」
「うん。わかった。そしたらいつものお店にしよう!個室だし、そこならいくら泣いても大丈夫でしょ」
そう言ってクスリと笑う玲愛に少しホッとして、泣かないし、と言った私も少し笑った。
高1の時から5年も付き合っていた男と別れたからだ。
それは加奈が望んだ結末では無かったし、美談にも出来ない、心に大きな傷を残すような最後だった。
その日は自分がどうやって家まで帰り着いたのか、全く覚えていなかった。
部屋に着いても私の心は死んでいて、机に置かれた二人の時間が、これ以上進まないのだと考える余裕すらなかった。
どうして?なんで?
その言葉だけが私を支配して、呆然と時間だけ浪費していたとき、スマホに着信が入る。
私はそれを拒否した。
1度目の着信からしばらくして2度目の着信。
ヴーという振動が妙に私を苛立たせた。
しつこい着信に根負けしてチラリとスマホを見ると、玲愛からのものだった。
玲愛とは実家が同じ団地という事もあって、同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校と、ずっと一緒に乗り越えてきた、家族以上に大切な存在と言っていい。
高校で離ればなれになってしまったが、定期的に連絡を取り合っている数少ない存在でもある。
玲愛……玲愛…!
親友の名前にまた涙が溢れ出てきた。
すがるように通話ボタンをタッチして玲愛に話しかける。
「玲愛…ゴメン…出なくて」
「加奈。なんかあったの?話せる?」
「玲愛…あのね…えっとね…昴とね…」
言葉に詰まりながら、泣きじゃくりながら、彼と別れた事を告げた。
玲愛は、ただうんうんとかそうだねとか優しく私を包んでくれた。
「今から少し会おうよ。そっち行くからさ」
「ありがとう…一人でいると辛かったから、助かる。でも待ってるのも辛いから外で会おう」
「うん。わかった。そしたらいつものお店にしよう!個室だし、そこならいくら泣いても大丈夫でしょ」
そう言ってクスリと笑う玲愛に少しホッとして、泣かないし、と言った私も少し笑った。
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