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第1章


『ぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!』
待って待ってこれ冗談抜きで死ぬよ?!?!!ねェ、地面に今にも叩きつけられそうなんですけど?!?!!


── 拝啓 フェアリーちゃん。ボクは今空を飛んでいます。真ッ青な世界に囲まれてまるで鳥になッたようです。
とても綺麗でこのまま空に溶けてしまえれば、なんて考えが湧いてくる次第なのですが、溶ける前にボクは土の肥料となるかもしれません。ボクが亡くなった暁にはボクの部屋に貼り付けてある美少女と美少年の写真を警察にバレない様に燃やして下さい。

地面とボクの距離残り三十メートル。もう之は助からないと悟りを開く。南無阿弥陀仏…。0(:3 )~ _('、3」 ∠ )_

ドスン、と鈍い音が辺り一面に響く。
焼けるような痛みが下半身全体を襲う。そして何より…顔面が潰れた。地面と熱いキッスを交わしたのだ。痛いどころの騒ぎではない。いやもうこれ確実に腰粉砕しただろうな、と恐る恐る腰を浮かせ、脚に力を込めグッと身体を起こせば思いの外普通に立てた。

エ──??????????ボクの足腰強過ぎない????空からダイブして地面に腰打ったのにだよ??パラシュートも命綱も無しでスカイダイビングして不時着したのにも関わらずだよ???最早自分は人間ではないのではないかと言う疑問を抱えだしたところで、ふと我に返り周りを見渡せば何やら注目を浴びていた。
誰だコイツ、と言う感じがひしひしと伝わってくる。ヤバくないかこれ。『 てへ☆ 』みたいなノリで済まされそうにないし、むしろ殺されかねない。思わず『 ひェッッ 』なんて間の抜けた声が出てしまえば、嗚呼…ボクは此処で死ぬのか…と本日二度目の命の危機を感じる。改めて彼等に目を向ければ … ん???? えッ、待って??さっきまで気付かなかったけど、皆凄い奇抜な格好じゃない??コスプレ同好会かなにかかな???いやでも、それにしては随分と怪しい場所だ。灰を被ったかのように薄暗い霧のかかった動物園みたいな、そうそんな感じの場所だ。も、もしかしてこの人達ヤクザとかだったりするのだろうか…?!と、悶々と独り物思いに浸むていれば


『 み、見かけないツラだが、お前さんもルーキーか? 』


素知らぬ声が降ってきた。ルーキー…!?やはり此処はヤクザのアジトか!?なんて思いながら、そちらを振り返れば


『 … なんだ。只のチンパンジーじゃないか。』


何処ぞのチンパンジー(トンパさん)だった。

ヤクザだなんてとんでもない。やはり動物園だったんだそうか。と、胸を撫で下ろす。
それにしても、喋るチンパンジーだなんてチンパンジーも進化したモノだ。なんて感心しておれば、透き通るような、それでいて凛としていて芯のある男性とも女性ともとれる美声がボクの耳を捕らえた。


『 アレはチンパンジーではない。一応人間だ。… 其れより、君は一体何者なんだ?空から落ちて来たようだが … 』


そこには絶世の美形がいた。大袈裟とかそう言うのではなくて、本当に誰もが見惚れてしまう拝顔だった。目が痛くなってしまいそうな金色の髪もこの人の髪はずっと見ていられるし触れたくなる。黄金色に輝くそれは宝石にも劣らないであろう。瞳はぱっちりしていて唇は艶めかしく十代そこらの人間とは思えない程端整な顔立ちをしていた。駄目だ。こんなモノ見せられて理性が制御出来る筈が無い。


『 … う 』

『 …う? 』

『 うわぁあああああ !!!!!どうしよう?!目の前に女神様が見えるのだけれどこれは幻覚かな?!しかもボクの亊を知りたがってくれているだなんて … 幸福過ぎて死んでしまいそうだよ!!!キミが知りたいと云うならボクの隅から隅まで教えてあげるさ!!!ボクは立花 翡翠 、××××年9月3日生まれの18歳。身長は163cm、体重は47kg。趣味はゲームで、好きなタイプは可愛い子と美人さんと美少女と美少年、それからイケメンさんですかね!!!ちなみに運命って信じるかい??ボクは信じているよ!!だって、こうしてキミとボクが出逢えたのは運命…つまりデスティニー!!!!ボクにはキミとボクの指に運命の赤い糸が繋がれている様に見えるよ?!それはもうくっきりばっちりはっきりと!!!!!』


つらつらと一度も酸素を取り込まずに言い終えれば、流石に息も絶え絶えになってしまう。はァはァ、と変態の如く息を荒げながら女神の手を取りロマンチストな愛の言葉を紡ぐ。とんでもない変人発言の間違いだろ、とか聞こえた気がするけれど気の所為だ。
女神の方へ視線を向ければ、意味が解らない。状況が理解出来ない、と言ッた表情をしていた。否、表情と言うより正確には心である。ボクは不思議な亊に昔から他人の心の内を盗み見れてしまうのだ 。

この力は罪悪感と気味悪がられる亊から出来るだけ使用しない様にしている。ボクの人生が狂い始めたのはきっとこれの所為。
『 他人の心の声が聞こえたら良いのに。』誰かがそんな亊を言っていた。けれど現実は余りにも残酷で。人の心なんて綺麗なモノではなく、欲に塗れた穢れたモノで埋め尽くされていた。其れは幼いボクの心を蝕むのには充分過ぎた。だからボクはせめて外面だけでも、と綺麗なモノを求める様になッたのだろう。多分、ボクのメンクイの原因はそれだ。
エ?????メンクイを瞳の力の所為にするなって???? HAHAHA ( ☆ )
いやまァそりゃあね???顔が良ければ全て許せちゃうでしょ?!やっぱり昔語りなんてボクには似合わない。不幸自慢程醜いモノはないと言うし、何よりボクにはシリアスなんて似合わない。
なんて考え亊をしておれば、今の今まで女神の手を握り続けていたのをすっかり忘れており、はたと気付く。アッッッ『 一体何時までこの状況なのだろう … と言うか、私は今告白されたのか … ?いや、アレは告白とは言わないだろう。… なんと言うか随分と変わった娘だな。』なんて哀れみにも似た困惑の言葉を浮かべていた。
ボクは彼女がボクが他人の心の内を盗み見る亊が出来る等知る由もないのを忘れ、


『 告白じゃないさ!!!プロポーズの間違いだろう?! 』


と、豪語していた。更に此方に集まる視線。どうしよう埋まりたい。誰かボクをコンクリートに詰めてほしい…!!!!
自然と頬が熱を帯びていくのが解る。今更過ぎる羞恥に彼女はクスリ、笑った。


『 ハハッ、君は面白いな。今更恥ずかしがるのか。』


君の羞恥の基準はどうなッているんだ、と可笑しそうに笑う彼女は女神そのもので。控えめに笑う彼女が眩しくて仕方ない。女神なんて見た亊はないけれど、彼女こそ女神と形容するに相応しい。ぱっちりとした瞳が細められる。宝石みたく輝く金髪は風に揺れて、ボクはこの世の中にこんなにも綺麗な顔で笑う人がいたのかと感動に打ち震えた。感極まって思わず地にひれ伏しそうになっているボクを余所に、三人の男達が彼女に近付いた。


『 おいおい、クラピカ!お前プロポーズされるなんて良かったじゃねェか。変人だが、女には変わりない…ぜ…ってうおお ?!よく見りゃ別嬪じゃねェか。勿体ねェッッ!!!!』


そう言って彼女の肩に手を置いて此方に驚愕の眼差しを向けて来た彼は長身で、スラッとした細身の男性だった。
サングラスの様な眼鏡をかけ、目はツリ目で比較的平凡な顔立ち。イケメンとは言い難いが、鼻筋が高くパーツだけ見れば整っている方だと思う。彼の亊は未だ何も知らない。けれどその瞳を見て優しげな人だと感じた。何故だろう、ツリ目はどちらかと言うと冷たい印象を与えがちなのだが彼からは優しげな印象を受けた。
それにしても …


『 ???? 別嬪 … ???? 』


別嬪とはまさかボクの亊を言ってるのだろうか。だとしたら眼科に行く亊をオススメする。どう見てもあの女神の方が別嬪だと言うのによくもまァそんなに気軽に触れられるものだ。


『 お前と言う奴は本当に … 面白がるな。』

『 いや、面白がるだろ!』

『 おッさんってこんなのがタイプなのかよ。まァ、面白いのはオレも賛成。空から落ちてきていきなりアンタに告白なんてするとか変人過ぎるだろ 』


女神達の背後からひょこ、と顔を出したのは白髪の美少年。ケラケラと眉を下げ嘲笑うかのように笑っている彼は紛れもない美少年。えッッッ何あの子絶対将来有望じゃない?!?!!女神の次は天使ですか?!何だろう…顔面偏差値の高い人の周りには顔面偏差値高い人が集まる仕組みでもあるのかな…????嗚呼、類は友を呼ぶって言うもの…。美少年は本当に天使みたいな容貌で。その白髪は天使を彷彿とさせるし青い瞳は海の色にも似ている。薄い唇は飾りの様。そこに白い肌と来たらもうそれこそ人間味がなくて。女神も人間離れした美しさなのだが、この美少年は人形みたいだ。
長い睫毛に縁取られた猫目。ショタ特有の短パン。どれを取っても最 & 高 。無理…お持ち帰りしたい…。此処って顔面偏差値高い人をハントしても良いって言う合法的な世界なんだよね????なら持ち帰ッても無罪なのでは…?!( 有罪 )
犯罪計画が頭をよぎった所で明るく未だ声変わりしてないであろう元気なソプラノボイスがボクの思考を正常なモノに引き戻した。

『 もしかして、あの人もハンターなのかな?だッて空から落ちてきてあんなにピンピンしてるなんてサトツさんが歩くみたいに走ってるのと一緒で別のハンターなんじゃないかな?』

ひッひぇあ~~~~~ 何あの純粋無垢なショタ?!!?!確かに外見こそは至って普通。けれどあの格好をしていて自然に見えるというのは中々にスタイルが宜しい。緑は着こなすのが難しいのにも関わらず、あの少年は自然体。天真爛漫、猪突猛進、と言った感じのタイプ。くりくりの瞳からは穢れなんて一ミリも感じなくて、あそこまでまっさらな人間をボクは初めて見た。
大口を開けて笑うのは不格好な筈なのに、あの少年にはそれがぴったり当てハマッていて。太陽みたいな子だと思った。
何故だろう。初めて逢った筈なのに、どうしてこんなにこの四人に惹かれてしまうのだろう。
ボクは


『 綺麗だ…。』


ぽつり、呟いていた。この四人にも欲や復讐、闇が片隅に見える。しかし、それは人ならば誰でも持っているもの。それを含めて彼等は美しい、と彼等の容姿ではなく心に見惚れた。
ぼ―ッと放心しておれば、少年は大丈夫?と心配そうに顔を覗き込む。顔が一気に近付いた亊に驚き、『 おああッ?! 』なんて叫び声をあげ、後方に後ずされば誰かの足にぶつかる。


『 い ッ …!!!うわぁああ 、ごめんよ!?!』


バッ、と振り向き謝罪の言葉を口にすれば『 大丈夫ですよ。』と、声が降ってくる。嗚呼、なんて心の広い人だ…と顔を上げれば何とも個性的な顔立ちの方が立っていた。………何だろう、その、うん。随分と個性的な髪型と髭で…彼はヨハネスでも目指しているのかな…???それと、口が見当たらないのだけれど、今どうやッて喋ったの…???


『 ところで、貴女はハンター試験の受験者ではないようですが、どうされますか?』

『 うん…?どうって…』

『 此処にいると獲物を狙う猛獣達に食べられてしまいますが 』

『 皆さんについて行かせて下さい!!!!!』

即答だった。
え、何?!捕食されるの?!あの、平然と言ってのけたけど危険過ぎないかな?!どちらにせよ、この場所どころかこの世界の構図すら知らないボクが此処を脱出するには彼等に着いて行く他ない。

どうしてだ…何故こうもボクの行く先々にはフラグばかり落ちているのか…。

…どうやらボクはどう転んでも死亡フラグが付き纏う星のもとに産まれてしまったらしい。
どうせならラッキースケベの星のもとに産まれたかったです神様。
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