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プロローグ

扉を開けば、何時もの朝を迎え、何時も通りの見慣れた風景が目に飛び込む。
其れがボクの小さな幸せ。当たり前の亊だと言われるかもしれないけれど、ボクにはそんな当たり前が嬉しかった。
その当たり前の日常が非日常に変わる瞬間はあっさりとまるで其れが日常だッたかの様に訪れた。

そう、非日常が訪れたのはまさに今この瞬間。扉を開け、さぁ学校へ行こうとした矢先の亊だッた―――
……否、待って欲しい。ボクはこの日常を退屈だとは感じていないし囁かな幸せだとすら感じていたのだ。なのに何故こうなった。
いやもうそんな亊はどうでもいい。今は只々目の前にいるこの可愛らしい女の子を見つめる亊で精一杯である。

立花たちばな 翡翠ひすい 様 。貴方様を異世界からお迎えに上がりました。』
『 … そうか成程。キミは異世界の人間なのかい … 。いや、そうだと思ったさ。でなければ、こんな可愛らしい生物この世に存在する筈がないね?!なんだこの妖精さんみたいな愛らしさは…!』

きょとん、とするその表情すら愛らしい目の前の少女は本当にもう誘拐したいくらいなのだ。犯罪?????もうこの子を誘拐してペロペロする為ならボクは犯罪者にだッてなってやるさ!!!!

普通なら誰もが目を見張り夢か何かだと錯覚し扉を閉め現実逃避するか警察に連絡するかする様なモノなのだろうがボクは違った。
もうお気づきの人もいるとは思うが

ボクは超が付く程のメンクイなのだ。

だから、この美味しい出逢いをボクが見逃す筈もなかった。こんな可愛い女の子から声を掛けられたら例え詐欺だと解っていたとしても自ら引っ掛かりに行く始末だ。
寧ろボクの方が警察に通報されそうな勢いである。

『 私は妖精では有りませんが、貴方様を彼方の世界に派遣する送迎人です。
貴方をハンターの世界に転送致します。』

????????ハンターの世界…とな?
えッ何それ顔面偏差値の高い人が街中を歩いてたらハントしても良いッて言う合法的な世界?????( 絶対違う )

『 怪獣、珍獣、財宝、秘宝、魔境、秘境…。未知という言葉を放つ魔力、それに魅せられた人達を“ハンター“と呼びます。
貴方にそんなハンター達の過ごす世界でとある責務を果たして貰うべく転送させて頂くのです。』

アッッッ 滅茶苦茶丁寧に説明してくれた!!!!!!!アレだよね之ボクが考えてた亊見透かされてたよね!!!!!絶対頭の弱い子だと思われたよね??!!?
… 只、責務って何の亊だろう。ボクにはそんな世界を見た亊もなければ聞いた亊すらない。訳が分からず首を傾げておれば、送迎人ことフェアリーちゃんはにこり、百合の様な天使の微笑みを浮かべた。何その笑顔…もう可愛過ぎて怖くなってきたひィ……

『 其れでは、準備は宜しいですか? 』

▼ はい 。
YES 。

……ん???????あの、待って???急にドラクエ見たいなの始まッた上に選択肢が『はい』か『YES』しかなかッたんだけど?!?!あッれれ~?可笑しいぞォ~?????
頭上に浮かび上がる文字に思わず目をパチクリさせてしまう。手を伸ばし其れに触れようとするが、手は空を切るだけだ。
3Dか…?!3Dなのか之…!!!!!
何が何だか解らず騒々しいボクを横目に彼女は風に乗って灰のように儚くフッと消えてしまった。
目を擦り、一度瞳を閉じ再び開いても彼女の姿は矢張り見えなくて。
何だか夢を見ていたような気分だ。いや、そうか。之は夢だったのだろう。若しくは、幻覚。無意識のうちにボクは可愛い女の子を欲していたのかもしれない。其れでこんな幻覚を…。納得である。
なんて独りで悶々と考え込んでいる姿を誰かに目撃されたら確実に痛い人扱いされる、と我に返り周りに誰もいない亊を切に願って辺りを見回す。
其処には誰もいない、と言うより人気がなくてまるで始めから人そのものが存在していなかったかのように思えた。
其れは異様とも言える静けさ、
箱か何かの入れ物に人形を置くみたいにぽつん、とボクだけが存在していた。
建物はきちんと其処に建っているのに、見上げた空は行き止まりなんてないのに。其れ等は全て作り物のようで。
全てボクの思い違いであると思いたくて、目の前の建物に触れようと脚を進め、手を伸ばした。
が、其れに触れる亊は叶わず何故かボクの身体は急降下していた。

『 エッッッッッッッ????? 』

あれ、こんな処に落とし穴なんてあッたッけ、なんて思ッたのも束の間。下から風が吹き抜け真逆と思う。いや真逆ァ…ないない。
風が吹き荒れる中ボクは意を決して瞳を開く。
其処に広がるのは青。………ン?青??
視界いッぱいに広がッたのは確かに空で。雲のような白い霧の中をスッと通り抜けていく。
澄み渡る青は目に染みて。
―――いやいやいやいや、絶対に可笑しい。
若しかして之がハンターの世界とやらの転送の仕方なのだろうか。
… とんだデンジャラスマシーンだね?!??!?!!
之もう着地は運任せどころか死ねって言ってるようなものだからね?!?え、何ボクの責務ッて死??!?!!

…嗚呼、どうか来世はイケメンか石油王に産まれて来ますように…。

そんな願いを胸に抱きながらボクの人生は幕を下ろした。
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