私にだけ冷たい話


side夢主

高校卒業後、県外の大学へ進学した私に高校の時の友達である侑から〈最近の調子どうや〉って定期的に連絡がくる。
侑は聞いてくるくせに私の返事にはいつも〈ほーん〉〈元気そうやな〉〈へー〉しか返して来なくて、興味無いくせになんで聞いてくんねん。って心の中でツッコミを入れる。
そんな生活も4年経過し就職のために地元に戻ってきて数ヶ月。
また侑からいつも通りのメッセージを受信し、
そういえばと地元に戻ってることを送信するとすぐに既読が着いて電話がかかってきた。

「なんでさっさと言わへんねん!休みいつや!?」

あれよこれよと日程を決められ、双子のお店へ呼び出しをくらった。
正直行きたくなかったけど、侑があまりにもしつこいから1度だけでも行くことに。

いつ開店したのかも知らないけど初めてお邪魔するしお祝いぐらい持っていった方がいいかな…?
特別負担にならないような気軽に受け取れて彼の記憶に残らないようなものを手土産に持っていこう。
花は匂いがするからお菓子でいいかな?食べるの好きだったから迷惑ではないだろう。

約束された日
送られてきた住所をナビに入力してむかい到着したお店。
貸切という看板が立てかけられており、流石プロのバレー選手。貸し切らなゆっくり出来へんのかな、大きくなったもんやな…。って高校の時のアホな侑を思い出しながら扉をゆっくり開いた。

『こんばんは〜』
「お!〇〇やっと来たか!」
『相変わらずうるさ。久ぶりやな〜』
「久しぶり。ミョウジ」
『わ!角名君もおるやん!久しぶり!』
「遠征でたまたまね」
『頑張ってるんやな。…宮君も久しぶり』
「…おん」

精一杯の作り笑顔で店主である宮君に挨拶したけど、視線は交わらずそっぽを向かれる。
不機嫌丸出しの彼に、私が来て迷惑なんやろうな…。って思い笑顔は引き攣る。
呼んでくれた侑には悪いけど、手土産を渡してさっさと帰らせてもらおう。

『…えっと、今更なんやけど開店祝い持ってきたんよ。お菓子やからよかったら食べてぇや!』

宮君はズイッと手渡そうとする私を横目で見るだけで、
「そんなん別にええ…」
って小さな声で言うた。

貰ってもくれない…。これも迷惑やったんか…。宮君が好きそうなお菓子探したんやけど私の自己満やもんな…。

『…。そっか、ごめんね急に。ほなこれは私が責任もって持ち帰「俺が貰ったるわ!!!」声でか』

大声をあげて横からお菓子の入っている紙袋を掴む侑の顔を見ると切羽詰まったような必死な顔をしていた。角名君も苦笑いを浮かべている。

「持ち帰るな!寄越せ!!」
『いや、でも』
「ええからおとなしく渡せ!!」
「そうだよ。手に持ってるのこっちに渡して」
『カツアゲやん。…まぁええけど』

あまりにも必死な形相でくるもんだから勢いに負けてお菓子を渡すと侑と角名君はほっとした表情に変わった。
そんなにこのお菓子食べたかったんかな…?
こんなやり取りを目の前で繰り広げてしまったからうるさくてご迷惑をかけてしまったのでは…。様子を伺うように宮君を見ても彼は黙々と作業をしていてこちらに興味なんて無さそうだった。



だから来たくなかったんだ。

心の中でため息をついた。




私は宮治に嫌われている





ーーーーーーー





話は高校の時まで遡る
男バスのマネだった私はバレー部との接点はあまり無かった。
ただ宮治とクラスが1,2年の時一緒だったためお互い認識はしていた。
直接的なにかやらかした記憶はない。
そもそもろくに話せたこともない。
それなのに何故か1年の時から嫌われていた。

朝、挨拶をしてもフイッと顔ごと逸らされる。
無視された私を災難に思ったのか、隣にいた侑が宮治に無理矢理返事をさせる。
それでも視線は合わないから、侑とお互い顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
それから少しずつ侑とは会話をすることが増えていった。

教室ではたまたま目が合っても爆速で逸らされることは当たり前。
見たくない見た目してるってことかなって最初はマイナスなことばかり考えていた。
友達と話すことに夢中になっていて後ろを通った彼に気づかずぶつかってしまい、咄嗟に謝ったけど冷ややかな視線を向けられスタスタ行ってしまった。
調理実習でお菓子を作った時も穴があきそうなほど隣から視線を感じたため

『えっと…治、食べる…?』

しどろもどろになりながら聞いてみるとガン見してきてたくせに目線は逸らされ返事はなかった。

2年になっても彼からの対応は変わらず、私にはとんでもなく冷たい。
男子はもちろん女子とも普通に話す彼。どうして私だけって思わずにはいられない。

侑に比べて治は優しい。

誰だそんなこと言ったの。
侑の方が断然優しいやんか…。

新しいクラスに慣れ始めた5月
高校生活2度目の体育祭が行われた。

じゃんけんで負け抜いた私は借り物競争に出場することになり肩を落とした。

あー、クラスみんなでやる長縄跳びだけで良かったのに…。
お願い…!厄介なお題出ませんように!!

スタートの合図がなり一斉に走り出しお題箱に急いで手を入れた。
簡単なお題簡単なお題簡単なお題!メガネとか来い!!
お題の紙を手に入れ内容を確認し、小さくガッツポーズをした。

簡単なお題きた!!

急いで自分のクラスへ走り目当ての人物の前で立ち止まった。

『一緒に走って!角名君!』
「え、おれ?」

日陰に座っていた角名君は、隣に座っている宮治の方にチラチラ視線を送っていた。
こうしている内に他の走者はお題アイテムを見つけ始めていて焦る気持ちからどんどん私の声は大きくなっていく。

『はよはよ!!』
「…え〜、お題なに」
『背の高い人』
「あ、だから俺なんだ。でもそれ治でも別にいいよね?」
『え?』
「は?」
「ほら俺太陽の下に出たら日焼けしちゃうから」
『女優か。日焼けするのはあんただけやないねん』
「治と走りなよ。ちゃんと手繋いで」

なんとも迷惑なルールだと思う。お手手繋いで仲良くゴールしろだなんて。
そもそも宮治が私と走るわけないでしょ…。

右へ左へ目をキョロキョロ動かしてる彼。
断りづらいやろな…。
私から断った方が良さそうだよね

『え〜っと、治。あの「無理や!!!」』
「え!?ちょっと治!」
「ほんまに無理!!」
『…。』


いや、分かってたよ。断られるって。
でもこんなに全力で拒否しなくても…。


「あ〜、えっとミョウジ『私他の人に声掛けてくるわ!』え、ちょっと待って!」
『ごめんな〜!』

気まずそうに私に声をかけてくれた角名君は、私の顔を見るなりすぐに驚いた表情を浮かべた。
今の私は相当酷い顔をしていただろう。
しまった。こんな顔を見せてはいけない。
私はすぐに口角をあげて笑顔を創り、気にしてない演技をして2人から離れた。


もう2年目だ。少しずつ私の心は削れていく。
胸は痛いし、噛みすぎて下唇も痛い。
それでも私は大きく息を吸って声を出した。


『侑〜!一緒に来てや〜!!』
「絶対嫌や死にとうない!!」
『私は殺人鬼か何かなん!?』

嫌がる侑の手を無理矢理引いてゴールしたけど隣で侑はずっと「殺される…」ってブツブツ言うてた。

こんなに怯えてる侑見たの初めてやな…。









午前の部が終わりお昼ご飯を食べ、運動場へ戻る最中
友達が自分のハチマキを私の目の前に持ってきた。

「なぁなぁ〇〇!ハチマキ交換せぇへん?」
『!ええよ!交換とかすんのめっちゃ嬉し〜!』
「わかる!こういうの好きな人とやったら最高やんな!」
『そんなん洗われへんわ!』

ケタケタ笑いながら友達のハチマキを頭に巻いていると、前から宮治と名君が歩いてきた。
宮治とふいに目が合ったけど、先程の全力拒絶を思い出し目を逸らしてしまった。

いつもは彼がそらすのに。

チクリッ。
また胸が痛い。


「交換せんでええの?」
『へ??』
「ハチマキ」
『??今交換したやん』

友達の言っている意味が理解出来ず首を掲げる私に、友達は目尻を下げて
「せやね」
って小声で言った。


ーーーーーーー


目玉であるリレーら双子がアンカーを務め大白熱していた。
何やら言い争っているけど、その内容までは聞こえそうにない。
またくだらないことなんだろうな…。
それにしてもあの2人走りながら喧嘩してるの凄いな…。

「治のやる気やば」
『そうなん?』
「お守りもらったみたい。家宝にするって叫んでたよ」
『…へぇ…』

お守り、か…。彼女かな。
彼女いるなんて知らへんかったな…。
だからあんなに嫌がられたんかな。彼女想いでええやつやん…うん…。


心の一角が崩れ落ちた感じがしたけど気づかないフリをした。





「どうやったらその思考になんねん。あいつに彼女なんておるわけないやろ」


体育祭終了後、侑をとっ捕まえて教えてもらい
そっと胸をなで下ろした。



ーーーーーーー



黒歴史となった体育祭が終わり月日が進み、2年生は浮き足立っていた。
数ヶ月後に控えている修学旅行は高校生活の中でビッグイベントと言っても過言ではない。
私もずっと楽しみにしていて一緒に行動する班を自由に決めていいと教師から言われた。
女子達は我先にとクラスの人気者である治君と角名君の元へ行ったけど、私には関係ない話。

友達に誰たちに声かける〜?なんて聞けば、友達は顔の前で両手を合わせごめんなさいのポーズを取った。

「ごめん〇〇!実はもう決まっとんねん」
『…え?まさかの事後報告?』
「実はな、角名君に声掛けられてOKしてもうたんよ」
『…は!?なんっでなん!』
「ごめんって!あんな大きい声じゃ言えへんのやけど」
そう言って友達は声をひそめて耳打ちしてきた。
「実は私ね。角名君のこと好きやねん。せやからお願い!!」

友達の爆弾発言にもビックリだ。応援したいという気持ちと、もう決まってしまったのなら諦めるしかないってもう頭がごちゃごちゃしていた。

待って…?角名君と一緒ってことは…?

「よろしくね。ミョウジさん」
「…。」
『あ、うん。よろしく、ね?』

どもりまくってる私と、何故かガッツポーズきめてる友達と、目を細めて笑顔を向けてくれる角名君と、絶対零度の視線を私に向ける宮治。
カオスだ。


恨めしそうにこちらを見るクラスの女子と目を合わせないように必死に机と睨めっこした。



あぁ…。チェンジしたい。






体育祭に引き続き修学旅行の思い出なんてそらもう酷かった。

隣でずっと機嫌悪いんだもん。


友達は角名君のことが好きだからって2人で並んでどんどん行っちゃうし、後ろをついて行く残された私達の仲は最悪最低。

会話なんて盛り上がる訳もない。
でもせっかくの修学旅行なんだから楽しみたいって面白くもないのに必死に作り笑顔して、当たり障りないこと話しても
「せやな」「おん」「へぇ」って一言で会話終了
もうこれ以上話のネタないよ…。
天気の話2回目になっちゃう…。

そもそも私のことが嫌いならなんで角名君を止めなかったんだろう。もしかして角名君も友達のことが好きとか…!?だから班誘ったのかな…!
えーそれなら話変わってくる…!!

『ねぇねぇ治。角名君って🌼のこと好きなんかな…?』

前の2人に聞こえないように必死に背伸ばしてコソコソ話しかけると宮治は1点見つめて硬直していた。



『治?』
「し、知らん…!」



宮治の反応を見る限りこれは当たりやぞ。
私は後ろから2人の背中に、上手くいけ〜!って念を送った。

まぁその後も宮治との会話はお通夜状態。返事があるだけまだマシか…。
私の会話能力に問題があるんやろか…?
私の知ってるクラスでの彼は誰とでも話すし双子相手には声を張る時もある。

全て私以外なのだ。

はぁ…息苦しい。

表でため息ひとつつけないぐらい宮治の隣は私にとって居心地の悪いものだった。

結局2泊3日の修学旅行は友達と2人でまわったテーマパークとクラス単位で行動する時間が唯一彼等から離れられ解放された感じがしてはっちゃけまくれた。





ーーーーーーー

『ほなな〜侑』
「おん」

修学旅行も終わりいつもの日常に戻ってしまった。
たまたま廊下ですれ違った侑と話していてチャイムが鳴るからと解散をした。
教室へ向かうと扉の所から宮治がジッとこちらを見ていた。

ぶっちゃけめちゃくちゃ怖い。

『え…治…?どないしたん??』

口角がひきつるのを感じつつも必死に笑顔を作って声をかけた。
どうせ視線逸らされて終わりだろう。あぁでも修学旅行で返事はするようになったから何かしら一言発するのかな〜と思っていたら突然手首掴まれて『ギャッ』て可愛くない悲鳴をあげた。


「…て」
『へ??』






「名前で呼ばんといて」





あ…。私そんなに受けつけられてないんだ…。

分かってはいたけどちょっと傷ついたな。いや嘘。ちょっとどころじゃない。また心に音を立ててヒビが入った。

こんな扱いを受けて脈なんて0だから友達にさえも言えなかったけど、私は1年の頃から宮治に片想いをしていたのだ。
普段は眠そうな顔なのに体育は楽しそうだし、入学当初部活動見学でバレー部を見学した時、同じ新入生だというのに片割れと練習に交じっていた彼はエフェクトかかってんのか?ってぐらいキラキラしてそれから目が離せなくなってしまった。
ご飯食べてる時は幸せです!って顔に書いてあるし、頬膨らませて食べる姿なんて可愛くて、かっこよさと可愛さ兼ね揃えてるのズルすぎやろ!って恋に落ちた。そして一瞬で失恋した。

皆が自然に挨拶するから私も勇気振り絞って挨拶したけど「おはよう」って返されたことなんてないし侑のおかげで「…ぉん」ってそっぽ向いて言われるだけ。
皆からのお菓子の差し入れを嬉しそうに貰ってるから私も『食べる?』ってドキドキしながら聞いてもハイ無視。
体育祭はもう思い出したくないくらい論外。
修学旅行だって同じ班で本当は嬉しかった。
2人で並んで歩きながら少しでも関係修復を期待していた。
それでも向こうから話題を振られた回数は0
そもそも初めから関係は悪かったのだ。修復するものが無かった。

皆が羨ましかった。普通に話せて。
あの至福の食事風景を間近で見ることが出来て。
声に出してバレー応援できて。


好きって伝えることが出来て。


目が合って喜んで逸らされて肩を落とした。
無視される度に心は傷ついた。
拒絶された時泣きたかった。

話しかけられたのなんて今が初めてなのに。
いっそ嫌いになれたらいいのに、いつまでもズルズル引きずって
私にも皆みたいに話しかけてくれるんじゃないかって
私のこともいつか見てくれるんじゃないかって期待して
痛む心を見ないように無理矢理口角あげて笑顔で話しかけた。

それでも2年になった今でも変わらぬ関係性。
いい加減心が折れそうだった矢先の名前呼び禁止令。
双子やから皆名前で呼んでいるのに。
私だけダメなんて。
なんとか形を保っていた心がボロボロ崩れ落ちた。

『分かった。ごめんね、宮君』
「…は?」


もう諦めよう。たった2年にも満たない片想い。
今ならまだ引き返せる。
これからは推しとして陰ながら応援しよう。

自分の席に戻る私に宮君が何か訴えてきた気がしたけど、今後の推し活で頭がいっぱいな私には彼の声は届かなかった。


その日の宮君は魂が抜けたように天を仰いでいて授業中先生に怒られていた。








『おはよう宮君』
「…ぉン」
「ブッ!!!!」
諦めてからは心が楽になった気がした。
宮君は眉間に皺を寄せて悲しそうな目をしていた。対して隣の侑は腹抱えて笑っていた。
相変わらず「おはよう」なんて言われないけど今までみたいに毎度心が痛むことも薄れていた。


12月。今年が終わりそうな頃、今日は全部活が休みということもあり、クラスの中心的な女子がクラス会としてボーリングに行こうと提案をした。友達と参加することにして放課後を楽しみにしていた。

「え!治来てくれるん!?」

女の子の嬉しそうな声が教室に響いた。
どうやら人気者の宮君が珍しく参加するらしい。
クラスの女子はそれはそれは嬉しそうで、帰りの時間になると各々化粧を念入りに直したり、絶対外の風で崩れるのに前髪を何度もコームでとかして自分を可愛く見せようと努力をしていた。
そんな中私はそそくさと荷物を纏めて

『ごめん。今日用事あったから欠席でもええ…?』ってまとめ役の子に伝えて帰宅した。

クラスの女子があんなにウキウキしながら準備して宮君が来るのを楽しみにしているのだ。
私が行ってしまえば宮君は明らかに機嫌が悪くなってしまう。

そんなの皆が可哀想だ…。
『行きたかったなぁ…ボーリング…。やったことあらへんけど…』

また宮君が不参加の時に参加させてもらおう…。



翌日登校すると教室にはもう宮君がいて、今日も相変わらず女の子に囲まれていた。

「治〜昨日大丈夫やったん〜?」
「すまんて」
「も〜楽しみにしてたのに!」
「お大事にな〜」
「おーきに」
「次は絶対参加してな??」
「気ぃ向いたらな」

宮君昨日行かなかったんだ…。
体調悪かったんかな…?

え、それなら行きたかったな。

なんとも不誠実なことを考えていると隣に角名君がニュっと現れた。

「おはよう。ミョウジさん」
『あ、おはよ角名君』
「昨日突然来れなくなったって聞いてビックリしちゃった。治も帰っちゃったから俺も行くのやめた」
『角名君も行かなかったんや。宮君は体調不良だったん?』
「…あ〜。まぁそういうことでいいんじゃない?」
『??』
角名君は私の顔を見ながら目を細めた。その目が何を考え何を感じているのか分からなかった。
「もどかしいよね」
『??』


もどかしい?何が??


飄々と私の反応を見ていた角名君が視線をずらした後肩を強ばらせたから
何かあったのかなって角名君が見ている方へ同じように視線を向けると、宮君が顔に影落としてめっちゃ私達を睨みつけていた。
「こっわ」
角名君も苦笑いを浮かべている。

あぁそっか。2人は友達だから角名君が私と話していることが面白くないんだ。

私はスッと肩幅分角名君と距離をとった。

すると宮君の眉間の皺が数本消えたように見えた。

『…はぁ…なんでこんなに嫌われているんだろう』

ため息とともに呟いた小声は隣にいた角名君には丸聞こえで、角名君は特徴的な笑い声を発しながら震えていた。


何も面白いこと言うてへんのに…。

いつまでも笑っている角名君の脇腹を軽く叩いたら大きな舌打ちが聞こえてきた。
見なくても分かる。舌打ちをしたのは宮君だ。

大事な友達に勝手に触ってすみません。

反省の意味を込めて両手をあげ角名君ともう一度距離をとると、宮君の怒りの表情は少し和らいだ。

これからは角名君とも必要以上に関わらない方が良さそうだ。


『はぁ…』


本日二度目のため息をついた。


ーーーーーー




新しい年を迎え2月になり女子が本気を出すイベント''バレンタイン''
朝からお菓子を片手にお目当ての人物に駆け寄る恋する女子は見ていて可愛いなって思う。
『私はみんなの母親か』
「どないした突然」
『なんか母性芽生えた』
「未来のために一旦枯らしとき」
『任せろ』
「男前やな」
とはいう私も朝からお菓子を片手にクラスの子に友チョコとして配り歩き、休憩時間は別のクラスの友達の元へ行ったりしていた。
私が動く度に何度か宮君から視線を感じたけど、極力そちらを見ないように背を向けて立ち去った。

なんだろ…。遠目で品質チェックされてたんかな…。呪物配り歩いてるとか思われてたらどないしよ。

カサリと音を立て作ったお菓子を目の前に持って360度確認してみるけど、自分で言うのもなんだけど美味しそうだと思う。

ま、私が作ったのなんて宮君はゴメンかもやけど。

自分で言って胸が少し痛くなる。
どうにもあの人は私をしぶとく縛りつけてくるみたいだ。

帰りのHRも終わり各々散り散りに去っていく中、私は今日持ってきたお菓子の紙袋の中を見てため息をひとつついた。

「あげないの?」
『わ!びっくりした🌼まだ帰ってなかったん?』
「忘れ物してもうてな〜!もう帰るよ!ほんで?ソレあげへんの?」

友達がソレと言って指さすのは紙袋の中にポツンと一つだけ余ったマフィン

『…うん。作りすぎちゃっただけやから』

嘘。本当は多めに作ってなんていない。
渡したい相手は決まっていたんだ。

「貰ってもええ?」
『?朝あげたやん』
「食べちゃった!〇〇の美味しかったんやもん!」
『えぇ…』

あの日諦めようと誓った片想い。
それでも簡単に諦めきれずに推しへの貢物って自分に言い聞かせて他の人より少しだけ大きめなマフィン。
区別つくように一つだけリボンの色をピンクに変えて他の物に潰されないように大切に持ってきた。

作ったはいいもの朝から囲まれている彼に渡すなんて臆病な私には出来ず話しかける勇気もなかった。
机にぶら下がっていた紙袋に入れてしまおうと思ったのに、今日に限って宮君は教室から離れなくてこっそり忍ばせることも叶わなかった。

そして私は彼から完全に拒絶されている存在。
やっぱり持ち帰って自分で食べようとしていたところだった。

虚しくて自分で食べるくらいなら美味しいって言ってくれた友達に食べてもらった方が私も嬉しい…。
いまだ笑顔で両手を私に向ける友達に、同じように笑顔になってその掌にマフィンを乗せた。

『どうぞ』
「やった〜!ありがとう〇〇!!」
『私の方こそ!美味しく食べて貰えるなら嬉しい』
「〇〇が作ったのなら全部美味しいから絶対喜んで貰えるよ!!」
『…ん??』
「ほなな〇〇〜!また明日ね〜!!」
『?あ、うん!ばいば〜い!』



??



喜んでもらえる??🌼にじゃなくて?


どういう意味だろうって思った時には帰宅部の🌼は下駄箱とは違う体育館がある方向へ走って行った。




ーーーーーーーー


部活が終わり片付けをしている時、同級生のバスケ部部員から待っていてほしい。と声をかけられ部室の近くで彼が出てくるのを待っていた。
暫く待つと彼が走って来てくれて
「歩きながら話さへん?」
って言いながら足を進めるから慌てて隣に並んだ。

『…なんかあったん?』
「…あんな。…俺、〇〇のことが好きやねん」
『!?』
「付き合うてくれへん…?」
『…え…』

3年が引退してキャプテンとなった彼は、宮兄弟と同様周りから爽やか、優しいって人気があった。
宮君のことを完全に吹っ切れたわけやないけど、彼のことが嫌いでもなかったし一緒にいて話してて楽しかったので私は彼と付き合うことにした。
宮君のことを忘れるための第一歩や…。
キッカケはどうであれこれから彼のことを好きになれたらええな。

翌日
お昼ご飯を🌼と食べながら彼氏が出来たことを伝えると
「え!?彼…は!?待って、やって〇〇って」ブッ!!!!!「うわ!」『「??』」
祝福ではなく動揺している友達の裏で何かが破裂する音と角名君の悲鳴が聞こえ、2人でそちらに振り返ると
宮君が持っていた紙パックのジュースを握り潰し残っていた中身が飛び出て角名君の方へ飛んだのか、角名君は額に手をあてため息をついていた。
宮君と目が合ったけど宮君は元々大きな目を更に真ん丸に見開いて固まっていた。でもそれは一瞬ですぐに眉を下げどこか悲しそうな表情を浮かべ視線は逸らされてしまった。

その日の宮君は最後まで机に顔面を貼り付けていて毎時間先生に怒られていた。

ーーーーー


部活が終わって校門に向かって歩いていると後ろからドタバタと足音を鳴らして誰かが走ってきた。
何事かと振り返ると足音の持ち主は侑でその勢いのまま両肩をガッシリ掴まれた。

「別れろ!!!!」
『…は?』
「今すぐ別れろ!!」
『いや突然なんやねん!』
「ええから別れろ!!頼むから!!」
『理由言うてや!あと肩痛いんやけど…!』
「すまん!別れてくれ!」
『なんか私が振られた感じになっとる!納得いく理由言うてや』
「理由!?あーーえっとーーあれやあれ。あいつヤバいやつやからやめとき。はい納得したやろ別れろ!!!」
『全然納得できへんわ!!』
「もうなんでもええから別れろ!俺は言うたからな!!!」

ほなな〜!ブンブン手を振りながら全速力で立ち去って言った。
いつだって嵐のような人だな…。

それでも彼氏とは別れる理由なんてなく3年に進学した。

今年は宮君と違うクラスだった。寂しいような、ホッとするような…。
あ、侑とは同じクラスだ。

貼りだされたクラス表を見ながら、🌼とクラス離れて2人でショック受けたり、彼氏ともクラスが違ってて《残念だったね》ってお互いメッセージを送り合った。
自分の教室へ向かうためその場を離れようとすると何やらザワザワしていた。

「ほんまええ加減にしろや!!」
「ちょっと、治まじで意識失ってない!?」
「もう嫌やコイツ!!!」

宮君が倒れたらしい。

マジか、貧血…?大丈夫なんかな。大きいから運ぶの大変そうやな…。

新しいクラスにも慣れ始めた頃
6月に行われる球技大会の準備が行われた。


前の席に座っている侑が振り返ってきた。

「お前何に出るん」
『バレーかなぁ』
「は?お前にバレーできんの?」
『失敬な…!中学はバレー部やったもん』
「ほななんでバレー部入らへんかったん」
『…1個上の先輩に中学の時嫌がらせされとってん。その人稲荷崎におるから男バレのマネやろ思ったんやけど、どっかの誰かさんが喧し豚いらんって同級生のくせに言いよってな…。せやからやめた』
「…。」
『ごめん、ちょっと意地悪や…侑?どないしたん。顔真っ青やで?』
「お、お前、そ、そそその話。絶対サムに…いや誰にもすんなよ!?」
『え?めっちゃ怯えとるやん』
「ええから!墓場まで持ってけ!」
『あ、うん、わかった』
「約束やからな。…で?お前の彼氏は何にでるん」
『ドッジボールやって〜』
「ふーん」
『興味無さそうやん』
「無い」
『なんやねんホンマに』

侑と前後席になって1週間ぐらい経った頃
忘れかけていた存在が教室へ訪れるようになった。

「ツム」
「…ほんまに来よった」

クラスが変わったのに宮君が最近やたらと来る。
来る言うても私ではなく前の席の侑に用があるらしいけど。

「数学の教科書貸してや」
「はぁ!?またかいな!」
侑は机の中を雑にガサゴソあさっていたけど、何かを思いついたように後ろに振り返った。
「あ、おいお前数学の教科書貸してや」
『なんでやねん』
「俺忘れたから貸せや。持っとるやろ」
『あぁ…』

あるけどって思い机の中をあさる。ふと視線を感じてそちらの方へ目線を向けると、去年まで散々味わった冷たい目でジッと見られていた。

そうやった嫌われてるんやったわ。
ほなら私の教科書貸すのはアカンよな…。って思って隣の子に声をかけた。
教科書を借り教室を出ていく宮君はどことなく肩を落としているように見えた。

「お前教科書ぐらい貸したれや」
『あんたは教科書ぐらい持ってこいや』

『あ!!侑数学の教科書持っとるやん!』
「ゲッ!あーーーーせやなー持っとるのを忘れとったわ」
『絶対嘘や!!!』

でも持ってるのに貸さないのはちょっと罪悪感あったな…。次機会あった時は避けずに貸そう。

翌日その機会は起きた。
「英語の教科書貸してや」
「あ〜〜もう〇〇!教科書貸せや!!」
『はぁ!?』

昨日の今日やし。貸すって心に決めてたんやから。英語の教科書を机から取り出し宮君に手渡した。


『宮君結構忘れもんするんやな〜』

なんて頬を引き攣らせ笑いながら言うと「ん」って一言言われて教科書を受け取り足早に教室から出ていった。


やらかした…。
いくらなんでも嫌ってる女から嫌味言われるとか恥ずかしいやろ…。
うわ〜印象最悪や私。
教科書返ってくるかな?
返ってこんかったら侑から奪えばええか。

次の休憩時間になると宮君は教科書を返してくれた。
良かった、落書きされてない。侑と違ってまともな人やった。

2日後また宮君は教科書を借りに来たけど、教科書を返す時この前は無言で渡されたのに
今日は何か言いたげに机の前に立たれていた。
すごい圧…。

『えっと、どないしたん宮君』
「…ッ…」

口をハクハクさせているけど声が聞こえなくて、宮君は舌打ちをして私の机から離れて行った。


なんやったんやろ…。舌打ちされたわ。


教室の扉まで向かってクルリと振り返ったかと思ったら、侑に向かって何かを思いっきりぶん投げ侑の顔面にクリティカルヒットした。

「あだっ!!何すんねんクソサム!!」
『何投げられたん?』
「チッ。おい、これお前にや」
『え、なんで私に?』
「教科書の礼やろ。知らんけど。自分で渡せやこんぐらい」

侑にホイと渡されたのはチョコレートのお菓子だった。


『あ、きのこさん家の山や!』
「お前山派なん?」
『うん』

よく私がたけのこさん家の里より、山が好きって知ってたな〜。

ただの偶然か。


ーーーーー


宮君は数日おきに教科書を借りに侑ではなく何故か私の元を訪れるようになった。
ただ今日も机の前で黙って立たれているだけで。始めは嫌がらせだと思っていたけど、宮君は口を開けたり閉じたりを繰り返しており、今日も言葉を発することは叶わず口をキュッと結んでしまった。
目線は気まずそうに斜め下を見ている。
この態度にも少しだけ慣れてしまって今日も助け舟をだした。

『…化学でしょうか?』
「…。」子供みたいに子供を横に振られる。
『日本史?』
「ッ…」違うみたい
『数3?』
「…」
黙って頷いた。
数学か…。
『ごめんな、今日うち数3ないねん…』
「えっ」
『彼氏が持ってるかもしれへんから聞いてみ「それだけは嫌や〜!!」え、ちょっと宮君!?』
宮君は走って教室から出ていってしまった。

『ねぇ侑』
「…知らん」
『まだ何も言うてへん』
「お前らに巻き込まれとうない」
『巻き込むってなんやねん。話してええ?』
「黙っとけや一生」
『喧しいあんたに黙れ言われるとか一生の恥やわ。ほんでな?』
「喋るやんけ」
『宮君ってなんで私の事嫌いやのに教科書借りに来るんやろな』
「…。」

こっちは真剣に悩んでいるのに侑は眉間に皺寄せて怪訝な顔をしていた。

『なんその引いた顔』
「お前がそんなんやから…いや元々はあのポンコツのせいか」
『なんか知っとるん!?』
「知らん」

絶対知ってる奴が言うセリフやん…。

『侑嘘つく時の癖出とるで』
「は!?そそそんなん!出てへんしぃ!?」
『嘘や「あ゛ぁ!?」』

本当に分かりやすい男だ。
侑は何か知ってる。なのに私に教えてくれない…。
教えてくれないってことは都合が悪いってことやな?

『何かの罰ゲームなのか、私への嫌がらせなんかな…』
「ここまでくると災難に思えるわ」
『ね。私もクラス離れたのにしんどいわ』
「お前のことちゃうわボケ」



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昨年は散々な体育祭やったけど、今年は(侑と一悶着あったけど)借り物競争も回避できて長縄跳びだけ跳んで平和に過ごすことが出来た。

クラスが離れてしまったため今年は体育祭が終わった後に🌼とハチマキを交換して写真を撮った。

「彼氏と交換せんくて良かったん?」

🌼は朝から交換しようと思っていたけど、私に気を使って声をかけなかったらしい。

『あ〜うん!彼氏と交換するとか、頭に無かったや…』
ハハハ…って笑いながら話す私は彼女として失格やろうな。
そんな私に友達は眉尻さげて笑った。
「彼氏可哀想やな〜」
『ハチマキの交換のことすら頭から抜けてたなぁ…』
「〇〇らしいな〜。…ねぇ〇〇」
『?』

先程まで真っ直ぐ前を見ていたのに、友達は私と視線をしっかり合わせてきた。

「彼氏のこと、好き?」

その声は落ち着いていて真剣そのものだった。
それなのに私は




『…うん。好き、やで』




嘘をついた。




『いきなりどないしたん?』

自分の本心を悟られないように🌼に偽りの笑顔を向けた。

「ううん。あんま彼氏の話聞かへんからどうなんかな〜!思っただけ!」

先程までの真顔と打って変わって、いつものように周りを照らしてくれるような笑顔を向けられた。

そこから🌼と何を話していたか正直覚えていない。
🌼からの私の確信をついた質問に心がずっとザワついていた。

好き。私の口から零した言葉なんて気持ちも篭っていない軽いものだった。
まだ彼氏のことを好きになれていない。

いい人だなって思っている。
私にだけ向けてくれる視線も言葉も全部好きでいてくれているのが分かる。
この人と結婚したら幸せになれるだろうなって。
それなのに…。

以前のようにすぐ逸らされなくなった視線に、
言葉は無いけど教科書を返す時に律儀にお菓子を持ってきて、しかも私が好きなやつ。
そのお菓子の袋の隅っこに-ありがとう-って本当に小さな字で書いてあるのを見つけてしまって。
崩れ散った心はまた形を作り始めてしまった。

『いや、嫌われとるんやったわ…』

思い出せ。あの冷たい目を。
拒絶されたことを。名前で呼ぶこと禁止されたやん。

私には彼氏がいるんだ。





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6月。蒸し暑くなってきた頃
我が校では球技大会が行われた。

「俺がおって優勝せぇへんわけないやろ!!」

自信を全身に纏った侑の勇姿でも見たろうと体育館へ行けばバスケを選択した侑は
持ち前の運動神経をフルで活かし初戦を勝ち抜いた。

『お疲れ侑』
「なんや見に来たんか。そっちはどうやったん」
『初戦敗退や』
「ださ」
『試合中角名君がずっとスマホ向けてきて嫌やったわ。絶対録画や。後でしばいてええんかな?』
「…ストーカーやん」
『やっぱり侑もそう思う!?角名君メンヘラなんかな』
「角名ちゃうわ」

『あ、彼氏今からドッジや。急いで応援してくる!』
「俺も行く」
『?知り合いおるん?』
「お前の彼氏の対戦相手サムやねん」
『タイマンちゃうよ』

2人で運動場へ向かう最中、急いで向かいたいのに侑はダラダラ歩くから背中に回って押そうとしたら
「アホ!!触んな!殺される!」
『せやから私は殺人鬼なん!?!?』
ギャーギャー言い争いながらお目当てのコートへ向かうと、もう試合は始まっていた。



「サムー!来たったでー!」
「あ゛ぁ!?何しにきよったんアホツ…」
『?』


私と目が合った瞬間宮君はガッチガチに体を硬直させてしまい

「治!!!!」
「ブッッッ!!!!」



顔面にボールをぶつけられていた。

「ダッサ」


最終的に彼氏のクラスが勝ったんやけど、宮君は私が来てから明らかに調子が悪くなったみたいだった。
私を見た時固まっちゃったし…。
私メデューサだったんかな。




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〈昼一緒に食べよ〉
《ええよ》


彼氏からのメッセージに顔色1つ変えず機械的に返事をする私は最低な女だ。



一緒にご飯食べても、部活に一生懸命取り組んでいる姿を見ても、手を繋いでも、体を重ねても。私の心は動かなかった。
ずっと空っぽで満たされなかった。





-彼氏のこと、好き?-





体育祭の時に聞かれてからずっと頭から離れない言葉。
あれから数ヶ月経ったのに未だに迷わず好きって言えなくて。
私はこの先誰かを本気で好きになれる日が来るのかなって何度も不安になった。

『…はぁ』




季節は秋。
大学入試な本格的に始まっていた。





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「卒業後どこ行くん」
『県外の大学〜。せっかくやから一人暮らししたいねん』
「まじか。そら大変になりそうやな…」
『確かに一人暮らしって大変そうなんよな』
「大変なのはこっちの話や」
『?侑はプロやろ?』
「当たり前や」
『いつか試合見に行くね』
「おん」

卒業まで彼氏と特に喧嘩もせず過ごし、宮君とも何も起こらず相変わらず言葉のキャッチボールも出来ず大学へ進学した。






大学卒業後はそのままアパートから通える会社で経理事務として働く予定だったけど、やむを得ず地元に帰ることもなった。
そして現在実家から少し離れた場所でオートロック付きのアパートで一人暮らしをし会計事務所で働いている。

今日も窓、扉全ての施錠を念入りにチェックしてアパートの周りに誰もいないことを確認してから出かけた。



高校の時みたいに冷たかったらどうしよう。

少しはあの時より会話ができるかな。


会えるの楽しみ。行きたくないな。


矛盾を抱えながら侑から送られてきた「おにぎり宮」の住所をナビに入力して歩き出した。
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