プロローグ:少し昔の話をしようじゃないか。

ある時、僕たちはとても大きな兄弟喧嘩をした。
クレイジーは自我を失っていたからか、自滅のような形で倒れた。


マスター「ごめんクレイジー。すぐ療すからね……」


いつものように、ボロボロになった彼を、僕の創造の力で戻してあげようと彼に触れた時。

全く別の、初めて感じる気配が背後に現れた。

振り向くとそこには、青や緑や紫など様々な色を放つ幾何学模様の美しい羽を持つ、少年と青年の間にいるような顔立ちをした人が立っていた。
彼の胸には綺麗な赤い玉が輝いている。

その美しさに一瞬目を奪われた。


マスター「……君は?」
「こんにちは。僕の名前は……タブー。よろしくね」
マスター「タブー…… ッ!」


まるで何も考えていないような気味の悪さに、僕の体が逃げろと叫ぶ。
僕は動けなかった。


タブー「僕はさ、マスターハンド、君が創った世界をもらいにきたんだ」
マスター「っ!?」


あぁ、神様、僕はまた、自分の大切な世界を、人を奪わないでください。
…………”また”?

タブーの美しい羽が広がる。
何か来る、その前に、大切な僕の弟を……!

僕は最後の力を振り絞ってクレイジーに護りの力を施し、タブーと呼ばれるものからできるだけ遠ざけた。

僕自身も消耗していたからか、はたまた彼よりも力が弱いからなのか。

僕は……。
彼によって死んだも同然の、生きる屍のように操られ続けていた。
ただただ、滅びゆく僕の世界と、外の世界を眺めていることしかできなかったんだ。



そんな僕を助けてくれたのは、僕達がずっと見続けていた、憧れてニセモノまで創った、ファイター達だった。

赤い帽子の中心にMのマーク、ピンクで小さな球体した、緑の衣と剣を携えた……。
そして他にも沢山のーー!


そうして、ファイター達はタブーを倒し、彼らの世界と僕の世界、そして僕たちを救ってくれた。


マリオ「色々あったけど、ボクたちはこの世界のことが好きだな」
リンク「それに、こうしてマスターや仲間達に会えたこと、嬉しく思っているよ」
マスター「……ありがとう。本当にありがとう」


こうして僕たちには、生まれて初めて、仲間ができたんだ。
僕は、彼らのことが大好きで大切で……。



あれから少しの月日が経ち、世界は再び平和と平穏を取り戻した頃。

あの時戦ってくれたファイター達がこの世界に、一時的という形ではあるが居住し、大乱闘のシステムを通じて戦い、お互いに研鑽し強くなっている。
そして戦いだけではなく、ファイター達自身の世界が良くなるような交流も行われるようになった。

僕が想い描いた、『強さを求め続けられる世界』がそこにはあったんだ。


*******

クレイジー「何してんだお前、珍しく机に向かって……拾い食いでもしたか?」
マスター「はぁー、相変わらず君は酷いなぁ」


半分嫌味っぽいクレイジーに、いつも通りオーバーリアクションに反論する。
僕だって、机に向かう時くらいはあるさ。


クレイジーはあれから自我を失うことはだいぶ減った。
まだ時折、何かの拍子でおかしくなるけど。

でも、僕は普通のクレイジーの方が好きだから、こっちのクレイジーが多くてとっても嬉しい。


クレイジー「何ニヤニヤしてんだよ、気持ち悪い」
マスター「別に? こっちの方が好きだなぁって」
クレイジー「あ?」
マスター「なんでもない。というか、クレイジーはどうしてここにいるの?」

クレイジー「お前がボスバトルに来ないから呼びにきた。5分後に俺たちの番だ。ちなみにサムスの」
マスター「え? あ、危なっ! 忘れてたよ」
クレイジー「だろうな。行くぞ」

マスター「サムスを怒らせると怖いんだよー、助かったー」
クレイジー「俺も巻き込まれたくないしな」
マスター「もう少し親切心から呼びにきてくれない?」
クレイジー「十分親切だろ」

マスター「まぁ君にしては?」
クレイジー「ボスバトル前に始末してやる」
マスター「ごめんってー! それより急げー!」


あれから、あの亜空の使者の事件を忘れたことは一度もない。
そして、あの事件は僕を神として強くしてくれた。

タブーが消滅した今、『この世界』は平穏に満ちている。
今度こそ、この平和が永遠に続きますように。

いや、違うか……。

僕たちが創り上げた『この世界』。
それを必要とし続ける人が限り——
僕たちは神として、『この世界』のすべてを守り続けるからね。
……絶対に。


Fin
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