プロローグ:少し昔の話をしようじゃないか。

時というものは確実に経つもので、僕とクレイジーの外見は、初めて会った時から少しずつ変わっていった。
背が高くなって、声が低くなる。

同じように、自分達が持っている力も少しずつ強くなっていった。

そして、漠然とした消えてなくなるような不安、”死”というものを身近に感じるようになってきた。
僕たちにソレがあるかはわからないけど。


*******


マスター「見て、僕の新作!」


ガシャンッ!!


マスター「っ! 何するんだクレイジー!」
クレイジー「何って、破壊」
マスター「僕が聞いてるのは……創ったものをどうして破壊するかってことだよ」
クレイジー「……壊れる瞬間がイッチバン気分がいいンだよなァ」
マスター「……」


うっとりした顔をしながらそう発言するクレイジーに、僕は寒気がした。

時が重なるにつれて、次第にクレイジーはまるで自我を失うような言動をする機会が増えていった。
僕が創ったモノをクレイジーが壊すことが、もはや当たり前になるくらいに……。


クレイジー「どうしても壊したいという衝動に逆らえない」
マスター「……」
クレイジー「俺だって……マスターの創ったものを壊したくないのに……」


辛く切なそうな顔をする彼を見て、僕の心は何故だかぎゅっと苦しくなった。
この日から、僕はクレイジーの破壊行動を問いただすことをやめたのだった。


そんなクレイジーと呼応するかのように、僕にも、ある一つの強い思いが生まれてきた。

——強さを求め続けられる世界を創りたい。



ある日、正常なクレイジーに聞くと
「お前らしくて、いいんじゃね?」
とぶっきらぼうに返してきた。

また別の日、自我を失ってるクレイジーに聞いてみると
「ヒャヒャヒャ! ぶっ壊せンなら大賛成だぜ? 早く創ってくれよォ!」
と、テンション高めの返事が来た。

後者のクレイジーには違う目的がありそうだけど、どっちも賛成してくれてるなら……。
そう思い、僕は今いるこの空間から、ある一つの世界を創り出した。

僕には命を創り出すことはできないけど、意思を持たない人形のようなものをつくりだすことができた。
僕はそれを”フィギュア”と呼ぶことにした。

僕の力で作られたフィギュアだから、僕とクレイジーが覗いてきた世界と似たようなフィギュアしか創れなかったけど、それでも大満足だった。

そのフィギュア達は、出来上がったと同時に戦いを始める。
負けると動かなくなる。
かと思えば、戦いの場に立つとまた動き出す。

フィギュア達はそんなことをずっと繰り返していて、僕達もそれを飽きもせずに眺めていた。


彼らは次第に、僕達に戦いを挑むようになった。
それは僕にとっても、仲間に入れてもらえたような、胸が温かくなるような気持ちになるから、とても嬉しかった。


僕たちが覗いてきたあの世界を目指して、僕はほとんど休まずにひたすら何かを創り続ける。

今思えばツギハギだらけだけど、フィギュア達が住めるようなお城や森や湖がどんどんと出来上がる。
意志を持たない彼らは、僕のように話すことはできないけれど、元の世界と同じような生活を送り始める。

それと同時に、僕らはフィギュア達を真似するように、食べては寝るという、「人間」らしい行為をするようになった。

いや、むしろ……。
食べる寝る、という行為をしないと、体の動きが悪くなるようなそんな感じ。
……どちらかというと、昔を思い出したようにその行為をするようになった。

クレイジーはわからないけど、僕にとってはその行為が、ないはずの記憶にもかかわらず懐かしいものを感じていた。


でもね。
僕にはそれを楽しむ時間はあまりなかったんだ。

クレイジーは自我をほとんど保てなくなり、僕の創った世界を壊そうとしたり、時には僕のことを破壊しようとしてきた。

僕にとっては大切な弟だけど、その弟が僕の大切な世界を壊そうとする。


——僕は神様として、この世界を、フィギュア達を守らないと……!


その一心で、クレイジーを抑え続けた。
その過程で、彼のことを何度も何度も傷つけてしまったんだ。
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