プロローグ:少し昔の話をしようじゃないか。

これは僕たちが、『この世界』を創るほんの少し前から、ファイター達に助けてもらうまでのお話。

*******

僕はマスターハンド。

名前以外は何も覚えていない。
正確には、何も知らないと言った方が正しいのかもしれない。

ただ僕は、いつの間にか『この世界』にいた。

どうやって生まれたかはわからないけど、意識を持った瞬間、僕の目の前には眩しいくらいに輝く人がいた。
その人のことを、仮に神様と呼ぼう。

神様は僕に、
「”創造を司る者”と、対となる”破壊を司る者”よ。共にこの世界を好きにするといい」
とだけ言い残し、それから僕の前に現れることはなかった。

その言葉と同時に、僕は横を見ると、
僕とそっくりな外見をした、だけど瞳の色だけは僕と対照的な赤色をした「クレイジーハンド」と名乗る者が立っていた。

直感的に、彼は僕の双子の弟という存在だ、ということだけは理解した。
そんな彼は僕とは違って、まるで全てを知っているかのような瞳をしていた……。



僕たちはしばらく、何もないこの空間で、退屈で無意味な時を過ごしていた。
そんな中でも、僕たち自身に起こる少しの変化に気づくことは沢山あった。

例えば——

”食事”といわれる何かを摂取する行為をする必要はなかったけど、ふと意識を手放すことはあった。
この行為を”睡眠”ということを知ったのは、だいぶ後のことだった。

睡眠を取ると、減っていた何かがまるで回復するかのように、胸の辺りがじんわりと温かくなったりした。



しばらくすると、僕たちは誰に教わったわけでもないのに、できることが増えていった。


マスター「こうやって……ほら、こうすると他の世界が見えるんだ!」
クレイジー「どうやって?」
マスター「これを、こうやってすると……」
クレイジー「俺にはできないよ」


僕はクレイジーに力の使い方を一生懸命教えるけど、彼は僕と同じ力を使うことはできなかった。
それでも僕の力を使って、様々な世界を覗いては、2人で思ったことを言い合っていた時間はとても楽しかった。


マスター「この世界もとても面白いね」
クレイジー「吸い込まれたら星になるか、何かの能力になるっていうのは怖いけどな」
マスター「確かに、吸い込まれたら消えちゃうって思うと怖いかも。……ねぇ、クレイジー」
クレイジー「ん?」
マスター「僕はこの、赤い帽子にMがついている人の世界が好きなんだけど、クレイジーは? どの世界が好き?」
クレイジー「俺は……緑色の服を着ている、剣士がいる世界が好きかも」



次第にクレイジーも、僕とは全く異なった力を使うようになっていった。

2人の得意を合わせて、他の世界を眺めては遊んだり、何かを創っては壊したりしながら、退屈だった時間を刺激あるものへと変えていった。


——この時間が永遠に続けばいいのに。
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