04 君とはなす
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校内で会えば挨拶を交わし
放課後、外で顔を見かければ立ち話をする
葵と海堂はそんな関係になっていた
今はどんなトレーニングをしているのかだとか、
部活でのことなど
ひとつの事に打ち込んでる様子の彼が、羨ましくもありとても魅力的に思えた
ぶっきらぼうな物言いや、シャイな性格から
冷たい人だと誤解を受けることもあるようだが
彼は常に前を向き、目標を見据え、そして誰よりも優しい人だと葵は知っていた
ライバルであると言う桃城と激しく言い合っている所もよく目にしたが
それだけテニスに一途で、誰にも負けたくないからこそなのだろう
陸上を諦めた葵にとって、海堂はとても眩しく見えた
そして、そんな海堂をいつの間にか好きになっていた
放課後、今日は学校で姿を見なかったので
河原へと足を運んでみる
ちょうど休憩中だった海堂が、こちらに気づき
「よう」.と声をかけてくれた
いつものように他愛もない話をしていると
海堂がふと葵にたずねる
「以前陸上をやっていたと言ってたが、今は辞めたのか」
…そうだった、以前そんなことを口走ってしまったこともあった
「あー…ちょっと足をやっちゃって、
もう辞めたんです、日常生活に支障はないんですけどね
もう走るのは難しいって」
海堂の顔が曇る、困ったような顔だ
暗い話をして気を遣わせてしまったか
「陸上辞めてから、ぽっかり穴が空いたみたいになって
打ち込んでたことが急になくなっちゃって
だから私やることも無くてこうやって毎日ふらふらしてるんです
先輩はこんなに一生懸命なのに、
私何にもなくて恥ずかしいですよね」
やけになり自嘲気味なこと言ってしまった
困らせてしまった、こんな事を話すつもりではなかったのに
しばらく黙ってこちらを見ていた海堂が、こちらに近づいてくる
呆れられてしまったかもしれない
顔を上げられない葵の頭に、ぽんと優しく大きな手が置かれた
「それだけ、頑張ってたんだろお前は
恥ずかしくなんかねぇ」
涙が出そうだった
自分の今までが認められたようなきがした
そして、そんな言葉をかけてくれる彼はやっぱり優しい人だと、好きだと思った
「ありがとう……ございます」
泣いているのに気づかれただろうか、
涙が出ていることに気づかれたら、きっと彼はもっと困った顔をするだろうから
そっと自分の涙を拭った
「1年の…マネージャーが最近辞めたらしい
人手が足りないだとかで、手塚部長が困っていた」
「……え?」
これは、マネージャーをやらないか、と誘ってくれているのだろうか?
「いや、新しい打ち込める何かが見つかればと思ったんだが、
別に強制してるわけじゃねえ
マネージャーも激務でなかなかきついらしいしな…」
こんな自分でもまた、何かに一生懸命になれるだろうか
でも、海堂がこんな風に言ってくれた
どうせ毎日ふらふらしているのならば
テニスに一途な彼のサポートをしたい、近くで一緒に夢を追いかけたい
「私やります!やりたいです!
テニスのことは分からないけど、でも私ももう一度頑張りたいから!」
少し微笑んで「おう、頑張れ」と返してくれた
部活の時間にも海堂と会える
そんな邪なことを一瞬考えてしまったのは内緒だ