03 君がきになる
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海堂に引かれたのでは、と心配していた葵だったが
あれから校内で何度か会ったが今まで通り挨拶を返してくれたので
杞憂だったらしい
(よかった、嫌われてはないみたい)
学校の外で偶然出会えたのが何故か嬉しくて
つい足が綺麗などと口走ってしまったことを後悔していた
(大して親しい間柄でもないんだし、言葉に気をつけなきゃ)
校内で姿を見つけると、少し嬉しくなる
海堂のことが何だか気になるようになっていた
テニスコートの横を通る時は、つい彼の姿を探すようになった
…好き、というわけではないが
海堂のことをもっと知りたいと思ったが
いきなり話しかけに行くほどの勇気は葵にはなかった
放課後、家の近所の公園でぼーっとしていると
目の前に猫がやってきた
ふわふわの毛でタヌキみたいな見た目だ
「ほぁら!」
こちらを見て猫が立ち止まった
「ふふっお前かわいい鳴き声だね、こっちおいで猫ちゃん」
葵は近くにあった猫じゃらしをちぎり
猫に向かってゆらゆらと振り、呼んでみる
猫じゃらしにつられ葵の膝に猫が乗っかってくる
「お前はかわいいねえ」
毛並みがいいので、おそらくどこかの家の飼い猫だろう
そんなことを思いながら、ひとしきり遊ぶと
ふいに猫が膝から降りてスタスタと道路の方へ歩き出した
この公園の前はまあまあ広い道路で車も割と通る
自分の家からここまで1匹で来たのだから大丈夫だろうが
車に引かれやしないかと気になった
「…大丈夫かな…」
気になった葵はベンチから立ち上がり、公園を出た
公園を出てすぐ葵は足を止めた
見覚えのあるバンダナが目に入ったからだ
目の前で海堂がしゃがみこみ、チッチッチッと
猫を呼んでいる
(…かわいい)
マムシと呼ばれている普段の彼からは余りにもかけ離れた姿だったので
葵の頬が自然と緩む
海堂の呼び掛けも虚しく
ほぁら、と猫はひと鳴きすると行ってしまった
がくりと海堂が肩を落とす
「ふふっ」
あからさまに残念がる海堂の姿に思わず笑いがこぼれてしまった
瞬間、海堂が鋭い目でこちらをみる
「…先輩も猫、お好きなんですね」
「ち、違う……こともねぇ…」
耳を真っ赤にして言葉を絞り出す彼の姿に、
またちがう一面を知れたようで嬉しかった