02 君のなまえ
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放課後、葵は朋香と共にテニスコートへやって来た
遠くからしか見たことがなかったが、いざ来てみるとすごい人数の女子がテニスコートを囲んでいる
こんな中レギュラーに声など掛けられるのだろうか
抜けがけだと睨まれるのでは、
そんな心配をする葵をよそに朋香は目をキラキラさせている
「葵見て見て!あの帽子被ってるのがリョーマ様よ!今日も素敵ー!」
目の前のテニスコートで帽子を被り、周りの1年生らしき部員とは違うジャージを羽織る男の子のことであろう
「へえ、思ってたより小柄な人なんだね
テニスがめちゃめちゃすごいって聞いてたから
もっとゴリラみたいな人かと思ってた」
「あんた、ゴリラって…」
朋香が呆れたような顔でこちらを見てくる
「リョーマ様はテニスも上手いし、王子様みたいなの!
それより海堂先輩いたわよ!あそこのバンダナ被ってる人よ」
そうだ、今日ここに来たのは朋香のリョーマ様のためではなく
海堂先輩にお礼をするため
朋香の指の指す方に目をやると、1人バンダナをした目つきの鋭い人が目に入る
…遠目なのでよくは見えないが、たしかに顔だけ見ると怖そうだ
目当ての人は見つけたが今は部活の真っ最中
練習の邪魔をしても申し訳ないし、
何よりこの黄色い声援の中彼に声をかけるのも躊躇ってしまう
「私、練習終わるまで待とうかな…」
「うん、それがいいかもね
私は弟たちの世話があるから最後まではいられないから
あとは葵1人で頑張ってね!」
朋香が相変わらずキャーキャーと声を上げる女子たちを見ながら答える
それから何時間たっただろうか、
明るかった空は星が見え始め、絶えず黄色い声援を送っていたギャラリー達はもうほとんど居ない
テニスコートを離れ近くのベンチで本を読んでいた葵は、
そろそろいいか、とテニスコートへ戻る
どうやらミーティングや片付けもあらかた終わったようで
帰り支度をしている部員が多く見られた
(わっ、待ちすぎたかな?帰っちゃってたらどうしよ…)
海堂を探しキョロキョロとしていると、眼鏡をかけた長身の先輩が近づいてくる
「やあ、見かけない顔だね、誰かに用かい?」
「あ、部活中にすみません…あの私2年生の海堂先輩に用があって
まだいらっしゃいますか?」
葵が尋ねると、男が予想外、というような表情で驚く
「海堂かい?意外だな、
海堂ならあそこでまだ自主練しているから呼んでこよう」
そう言うと、奥のコートに向かっておーいと声を掛ける
その声に気づいたのか、バンダナを巻いた彼がこちらに走ってくる
「…何スか、乾先輩」
ぶっきらぼうに答えた彼は、先ほどコートで鋭い目をしていた海堂だった
そして海堂を呼んでくれたこの男は、乾先輩と言うらしい
確か3年生のレギュラーの人だった気がする
「ああ、彼女がお前に用があるらしい
しかし海堂、お前に女子の知り合いがいたとはな…」
データデータ、と呟きながら乾は去っていった
葵が乾に目線をやっていると
「何の用だ」
目の前の海堂が訝しげな顔で聞いてきた
その響く低い声に、昨日の人だ、と葵は確信を得た
「あの、私1年の柏木 葵と言います
昨日昼休みに屋上で助けて下さったのって海堂先輩ですよね?
ほんとにありがとうございました!
あの、これ、ほんの少しですけどお礼です
甘いものお好きじゃなかったら申し訳ないんですけど…
よかったら受け取ってください」
葵はそこまで一気に言うと、手に持っていた紙袋を海堂に差し出す
目の前で頭を下げる小柄な女子の栗色の髪がさらりと揺れた
ああ、昨日屋上で倒れていた女子か
やっぱり1年生だったのか、とそんなことを海堂は思っていた
顔を上げたが、目の前の海堂は私の頭の辺りを見ているままで何も言わない
…もしかして昨日のは海堂ではなかったのだろうか
それとも甘いものが嫌いだったか
「あ、あの、…もしかして私人違いしてますか…?」
葵はおずおずと聞いてみた
するとぼっーっとしていたのか、
いや俺だ、と短く返事が帰ってくる
どうやら人違いではなかったらしい、葵が胸を撫で下ろすと
海堂が手を伸ばし紙袋を受け取ってくれた
「わざわざ悪かったな、ありがとう」
ややぶっきらぼうに聞こえるが、きちんとお礼を言ってくれた
(…たしかに目つきはちょっと怖そうにみえるけど、昨日も助けてくれたし
礼儀正しくて優しい人っぽい…)
「いえ、私本当に助かりました
ご迷惑おかけしてすみませんでした
体調ももう大丈夫です、先輩のおかげです」
そう伝えると海堂は少し照れた様子で
いや…と目線下にやる
自主練の最中だった様なので、これ以上邪魔しては悪い
「自主練中お時間とらせてすみません
本当にありがとうございました、私これで失礼しますね」
そう言いながらコートを出ようとすると
気をつけて帰れよ、と後ろから声が聞こえた
(やっぱり優しい人)
テニスコートを出ると辺りは真っ暗になっていた
こんな時間まで部活を頑張っているなんてさすが全国クラス
「はあ…私も帰らなきゃ…」
目的を果たした葵は学校をあとにした