01 君とであう
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蝉の声がうるさい夏まっさかり
海堂薫はイライラしていた
屋上への階段を1段のぼるたびに、ひんやりと冷房の効いた校内とは違いむわっとした空気が肌にまとわりつく
この暑いのになぜ屋上へと足を運ぶのか
教室でいつものように弁当を食べていると、テニス部ライバルである桃城武がどうでもいい理由で絡んできたからである
売られた喧嘩は買うタイプなので、当たり前のように言い合いになる
幸い弁当は食べ終わっていたので、イライラした気持ちを鎮めようと屋上の空気を吸いに向かうことにした
今朝まではどしゃ降り続きのひどい天気だったが、いまはすっきりと晴れている
屋上は普段生徒はあまり立ち入らない場所なので、気分転換になるだろうと海堂は屋上への階段をのぼる
気分を晴らそうと足を運んだが、1歩進む度に蒸し暑い空気が肌をなでるので足取りが重くなる
(…暑い…いや、ここまで来たしな…)
階段を登りきり屋上への扉を開けた
空は雲ひとつない晴天で、朝までの天気が嘘のようだった
時折吹く風が気持ちいい
今日は久々に外で思い切り練習ができるな、と先ほどまでのイライラが収まっていた
テニスコートを見下ろそうと足を進めると、視界に人影がうつる
先客が居たようだ
この暑いのによく屋上にいるな、と人のことは言えないことを思った
角を曲がると、その人影が女生徒であると分かる
柵から身を乗り出しそうな感じで立っている
というかもたれかかっている
ここの柵はあまり高くないので、風が強いこともあり
この女生徒が何かの拍子に落ちてしまうのでは、とヒヤッとした
あまり見知らぬ人に声をかけたくないが、目の前で何かあっても気分が悪い
こう暑いのでもしかしたら気分でも悪いのかもしれない
「おい、危ねーぞ」
柵にもたれかかっていた女生徒が、ゆっくりとこちらを振り返る
腰まで伸びる髪は明るい栗色で、風になびいたそれは太陽の光に透けてきらきらと光ってみえた
(……きれいだ……)
彼女がゆっくりとこちらを振り返るものだから、海堂は柄にもなくそんなことを思った
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