4 悲しいほど貴方が好き
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「美衣、今日は毛利の姉ちゃんとホテルで大人しゅうしとけ」
朝起きて、工藤くん達が来る前に平次くんがそう言った。聞かなくてもわかる。彼は捜査に行くんだろう。
「傷は大丈夫なの?」
「平気や。俺よりお前や。昨日から頭痛いんとちゃうか?」
「な、なんでわかったの…」
「探偵舐めんな、アホ。ホテル戻ってちゃんと薬飲んで安静にしとき」
「…うん。平次くん、無理しないでね」
「わかっとる。事件解決したら、すぐ会いに行くから待っとれ」
「待ってる。約束だよ」
「ああ。約束や」
差し出した小指に平次くんが小指を絡めてくれる。それだけじゃ不安で、絡まった小指にちゅっとキスをした。
「…ご褒美には早いんとちゃうか」
「これはおまじない。平次くんと無事にまた会えるように」
「ほんなら、指よりもこっちのが効くんとちゃう?」
言いながら、平次くんが私の頬に手を添える。視線がぶつかって目を閉じる。あと数センチで唇が重なるって時に、病室のドアが開いた。
「よう、服部!起きて、る、か…」
「く、工藤!ノックせぇやワレ!」
「わ、悪ぃ!まさかこんな所でイチャついてるとは思わなくてっ…」
「新一!余計なこと言わない!ごめんね、美衣」
「ううん。蘭、私頭痛くて。今日はホテルでゆっくりするつもりなんだけど」
「え!大丈夫?!私も一緒にいるよ!新一はまだ事件の捜査するみたいだし」
「ありがとう。そうしてくれると助かる」
工藤くん達が入ってきて、勢いよく私から離れた平次くん。まだ恥ずかしそうに視線を逸らしてる。
「じゃあ新一、私達はホテル戻るから何かあったら連絡して」
「あ、おう。帰るの遅くなりそうだから、おっちゃんに連絡しとけよ」
「うん。わかった。行こっか、美衣」
「あ、ちょっと待って。平次くん、耳貸して」
「ん?なん、や…」
屈んでくれた平次くんの両頬を持ってこちらに向かせ、ちゅっと触れるだけのキスをする。
「なっ…」
「気をつけてね。また後で。行こ、蘭」
「あ、う、うん…」
固まってる平次くんと工藤くんを残して、蘭と病室を出る。廊下を歩きながら、頬を赤く染めた蘭が言う。
「美衣って、大胆だね…」
「そう?蘭もしたら?喜ぶよ、工藤くん」
「む、無理だよ!付き合ってもないのに!」
「じゃあ付き合お」
「か、簡単に言わないでよ〜」
恥ずかしがる蘭。可愛いなと思いながら、平次くんの持ってた巾着を思い出す。モヤモヤした気持ちを抱えて、ホテルへ向かった。
薬を飲んでベットに横になり、目を閉じて考える。もし初恋の人が和葉ちゃんだとわかったら、平次くんはどうするだろう。
(やっと会えたって事だもんね。ずっと探してた人に…)
見方も感じ方も変わったっておかしくない。和葉ちゃんはとても勇敢で素直な子だし、また好きになる可能性は充分にある。
(そうなったら、嫌だな…)
ぐるぐるとそんなことを考えていたら、いつの間にか眠っていて。どのくらいの時間が経ったかわからないけど、蘭の話声で目が覚めた。
「え?!和葉ちゃんが?!…うん、うん。まだ寝てる。うん、わかった。気をつけてね。新一」
「…蘭。和葉ちゃんがどうかしたの?」
「美衣!ごめん、起こした?」
「和葉ちゃん、どうしたの?」
「…犯人に、攫われたって。服部くんはまだ病院だから、代わりに助けに行くって、新一が」
「平次くん、また怪我したの?」
「あ、ううん。そうゆう訳じゃないみたい」
起き上がって枕元のスマホを手に取り、平次くんに電話をかける。数コールのあと繋がって、風の音が聞こえた。
「おう。体調どうや?すまんな、こっちはもうちょいかかりそうや」
「…どこいるの?病院じゃないの?」
「犯人がわかったんや。休んでられへんやろ」
「工藤くんに任せたらいいじゃん」
「相変わらず工藤贔屓やな」
「和葉ちゃん、助けに行きたいんでしょ」
「…すまん、美衣。俺が行かなあかんのや」
「工藤くんに任せたらいいじゃん!工藤くんなら絶対助けてくれるよ!平次くん、怪我もまだ治ってないのに!和葉ちゃんのとこ行かないで!私のとこに来て!行かないでよ、平次くん…」
自分の中にこんな汚い感情があったなんて、知らなかった。だけど止められなかった。少しの沈黙の後、平次くんが言う。
「すまん。それは出来ん。終わったら、すぐそっち行く」
電話が切れる。スマホを落として、両手で顔を覆う。溢れてくる涙はなんの涙なのかわからない。
「美衣…」
「蘭…私、怖いよ。平次くんを失うのが、怖い…」
「大丈夫。大丈夫だから」
泣きじゃくる私を抱きしめて、何度も大丈夫と繰り返してくれる蘭。平日くんが恋しくて、こんなにも苦しい。楽しくて幸せなだけが恋ではないのだと、初めて知った。