3 眠る君の横顔に微笑みを
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「お、襲われた?!ちょっと大丈夫なの?!新一!」
「ああ。怪我もねぇし心配ねぇよ」
平次くん達と合流して、捜査をしてる途中、何者かに襲われたと聞いた。嫌な感じに胸騒ぎがする。
(知ってるんだ…でも、何もわからない)
「そないな顔すな。大丈夫や」
「…うん」
「野々村。俺たちはもう旅館に行くけど、オメーは?」
「美衣は後で俺がホテルまで送ってくわ。ええやろ?」
「うん。そうする」
「そうか。じゃあまた後でな」
「美衣のことよろしくね、服部くん」
「おう」
工藤くんと蘭に手を振り見送ってると、平次くんがぽすっと私の手にヘルメットを置く。
「ちょっと走んで。乗るの楽しみにしとったやろ」
「うん。夜に乗るの初めて」
「そういやそうやな。ほな、行くで」
バイクに跨って平次くんにしがみつく。街中のライトが流れて、とても綺麗だ。暗くてよく見えないけど、小さな川がある公園に着いた。
「今日、すまんかったな。全然一緒におられへんで」
「平次くんが京都に来たのは元々捜査目的だったんだし、気にしてないよ。今こうやって時間作ってくれてるし」
「めっちゃおりこうさんやな。逆に怖なってくるわ。文句あったら言えよ?ちゃんと」
「えー?じゃあ、1個だけ。和葉ちゃんを部屋に入れるの辞めてほしい」
「は?和葉?部屋の中って、俺の部屋っちゅうことか?」
「うん。今日も入ってきたんでしょ」
「…来たなぁ、なんで知ってんねん」
「和葉ちゃんに聞いた」
「なんや。いつの間に仲良うなってん」
「なってない」
平次くんが前に好きだったことを知ってるのに、仲良くなるわけがない。本当に恋愛になるとバカだ。
「ほんならいつ…」
「それはいいの!どうでも!他の子を部屋に入れないでって言ってるの!」
「お、おお。そらもちろん」
「ほんと?和葉ちゃんもだよ?」
「わかっとる。和葉はちゃんと理由言うたら辞めるやろし、言うとくわ」
「…なんて?」
「ん?美衣に疑われるようなことしたないから、もう部屋来んのは辞めろって」
「素晴らしい。花丸あげちゃう」
「なんやそれ。可愛ええな」
ぱちぱちと手を叩いてそう言うと、優しい眼差しで私を見て笑う平次くん。だけど何かに気付き、庇うように私の前に立つ。
「平次くん?」
「…誰か来る」
「え…」
木の影から現れたのは、能面をつけた男。刀をこちらに1本放り投げてくる。
「俺等を襲った奴や…。美衣、ここ動くんとちゃうぞ」
「う、うん。わかった」
平次くんが刀を拾って戦い始める。落とした巾着を能面の男が拾おうとしてるのを見て、頭に痛みがはしり断片的に記憶が蘇った。
(あ…そうだ。平次くんの、初恋の人は…)
「平次っ!!」
「か、和葉?なんでここに…」
「タクシー乗ってたら、平次のバイクが見えて…て!そんなんどうでもええ!なんなん?!さっきの変なお面の男!」
「多分、今回の事件の犯人や。それより和葉、お前さっき何投げてん」
「そんなんどうでもええ!怪我しとるやん!早う病院に…なぁ!ボサっとしてへんと救急車呼んで!」
「えっ…あ、う、うん!」
「大袈裟やな。こんくらい平気や」
「頭から血出とるくせに何言うてんの!」
和葉ちゃんに声を荒らげられ、はっと我に返る。能面の男が身を引いたのは、和葉ちゃんが何かを投げてお面を割ったから。平次くんが目の前で負傷してるのに、私は何も出来なかった。
(情けない…)
「美衣!」
「蘭…」
「服部は?!無事か?」
「うん。血ももう止まったし、傷もそんなに深くないって」
「よかった…」
「ところで、なんで病室の外にいんだ?中には入れねぇのか?」
「ううん。平次くんには和葉ちゃんがついてるから…」
「…何かあったの?美衣」
「…何も、出来なかった。平次くんはいつも私を助けてくれるのに…私は、何も…」
和葉ちゃんが来てくれなかったら、今頃どうなっていただろう。想像るだけで怖くて仕方ない。
「野々村。オメーは何も悪くねぇよ。怖くて体が動かないなんて、当たり前のことだ。自分を責める必要はない。それに、服部はオメーの姿が見えねぇと心配する思うぜ」
「工藤くん…」
「そうよ、美衣」
「あ、蘭ちゃんと工藤くん。来てくれたんや」
病室のドアが開いて、和葉ちゃんが顔を覗かせる。あの公園で頭痛がしてから、ずっと痛いまま。
「平次が呼んでんで、美衣ちゃん。うちはもう帰るし、入ったって」
「…うん。ありがとう」
「じゃあ俺らもまた明日の朝出直すか」
「うん。美衣はこのまま服部くんに付き添ってあげなよ」
「そうだね。そうする」
和葉ちゃんと入れ違いに病室に入ると、ベッドに座ってる平次くんと目が合う。頭に巻かれた包帯。
「なんちゅう顔してんねん。大丈夫や」
「…ごめんね、私…何も出来なくて…」
「ええからもっとこっち来い。抱きしめたくても届かへんやんけ」
ベットに近寄れば平次くんが両手を広げる。怪我人に気まで遣わせて、私はどこまで情けないんだろう。そう思いながら、ベットの端に座ってぎゅっと彼を抱きしめる。
「美衣になんもなくてよかったわ。ちゃんと言いつけ守れて偉かったで」
「…うん。平次くんも、無事でよかった」
心が痛いのか頭が痛いのかわからない。その夜、眠る平次くんの横顔に口づけをした。明日は今日よりもっといい日になりますようにと、願いを込めて。
眠る君の横顔に微笑みを