2 君という光
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「じゃあ妹は今京都いんのか」
「うん。服部くんに会えるってルンルンだったよ」
まだ何もない形だけのお店。なるべく費用を抑えるため、自分で出来る範囲は自分でやろうと。今は松田くんと電話しながら、壁に色を塗っている。
「じゃあデートしようぜ。明日休みなんだよ」
「ごめん。美衣ちゃんがいない間に、一気に終わらせたいから」
「はー?せっかく妹に彼氏が出来て、仕事も辞めて、俺に構う時間が増えると思ったのによ」
「せっかくの日曜休みなんだから、好きなことしてリフレッシュしなよ。最近、仕事忙しそうだし」
「ああ。そうする。紗奈の分も飯買ってそっち行くわ。他にいるもんあったら言えよ」
「え…いや、いいよ。前の休みも手伝ってくれたじゃん」
「好きなことして過ごしてんだから問題ねぇだろ。紗奈に会うのが1番疲れとれんだよ」
電話でよかった。多分今、私の頬は赤いから。松田くんからのアプローチは警察を辞めた今も変わらず続いてる。
「みんな会いたがってるぜ。佐藤とか未だに紗奈の名前呼ぶことあるし」
「えー、可愛い。みんなかなり驚いてたもんなぁ、辞めるって言った時」
「そりゃそうだろ。あんだけ優秀で宮野姉妹にも慕われてた奴が急に辞めるなんて、そりゃ驚くし引き止めたくなる。俺も色んな奴に引き止めてくれって頼まれたしな」
「そういえば、松田くんだけは1回も引き止めなかったね。萩原くんも降谷くんもヒロも伊達くんも、辞めなくてもいいんじゃないかって言ってきたのに」
「俺はいずれ紗奈には警察辞めて欲しいと思ってたからな」
「え!そうなの?!初耳なんだけど!」
警察学校からの同期で、配属先も一緒で、黒の組織の捜査本部も一緒で、行動を共にすることが多かった私達。かなりいい相棒だと勝手に思ってたのに。
「そりゃそうだろ。好きな女が銃持って危険な場所に飛び込んで行くのをなんとも思わない奴なんかいるかっての」
「あ、そうゆう…?でも、私に辞めろって言ったことないよね?」
「言うかよ。紗奈の人生だろ。好きなように生きりゃいい。どこで何してたって、俺はお前が好きだし」
「そ、それは、ありがとう…」
「まぁ欲を言うなら、俺と結婚して寿退社して欲しかったけど。妹が出来ちゃしょうがねぇ」
「…うん。美衣ちゃんの親代わりになるって決めたから。少しでも長生きしないと」
人並み外れた身体能力もなく、機械に詳しい訳でもない、銃の腕前もそこそこの私が警察として活躍してこれたのは、前世の記憶ありきだ。
それは確実に薄れてきてはいるものの、美衣ちゃんほどでは無い。まだやろうと思えば警察でやれる事はきっとあった。
でも、コナンくんが誰かさえ分からなくなった美衣ちゃんを見て、彼女の傍にいなければと強く思った。
「なぁ、今店だろ?ちょっと寄っていいか?」
「え?近くにいるの?」
「いや全く」
「じゃあ駄目。早く戻んなさい」
「顔見るだけだって」
「駄目です。もう切るからね」
「あ、おい!」
一方的に電話を切って、新しいペンキをあけようと脚立を降りた時。お店のドアが開いた。
「こんにちは」
「…こんにちは。何かご用ですか?」
「素敵な外観だったから気になって。なんのお店かしら」
「はい。カフェを作ってる最中です」
「あら、いいわね。完成したら来たいわ」
「是非…と、言いたいところですが。先にあなたがここに何をしに来たかを聞いても?」
「何をって、散歩していたら偶然ここを見つけただけだけど…」
「まだ看板も何も出していないのに外観だけで何故お店だとわかりました?本当は私に用があって来たのでは?」
「…なるほど。元警察なだけあって勘はいいみたいね」
ふっと笑った女性の雰囲気が変わる。後ろ手にカッターナイフを掴みながら、視線を逸らさず続ける。
「どんな人か気になって会いに来たのよ。古い知人にあなたの話を聞いて」
「…私に危害を加えるつもりがないと言うのなら、その場で両手を上げて手を開いて見せて」
「用心深い人ね。これでいい?カッターなんて持ってないわよ。あなたと違って」
「…バレてるなら、隠す必要はないわね。答えて。これからどうするつもり?」
「…あなた、どこまで知ってるの?」
突き刺さるような鋭い視線。女性に向けて構えたカッターを持つ手に力がこもる。
「全て知ってるわ、グレース。いいえ、ピンガ」
「…ははは!マジかよ!想像以上だ!」
「手を下げないで!」
「悪い悪い。まさかそうくるとは思わなくてよ。さすが、あのジンを追い詰め自害させただけの事はある」
「動かないで!」
「そう警戒するなよ。あんたには感謝してんだ。俺はジンの野郎が大嫌いだったからな。連絡が取れなくなっておかしいと思って調べてみたら、まさか潜伏任務中に組織が壊滅状態になってるとは」
両手を広げ上げたまま、歩み寄って来るピンガ。じりじりと後ろに下がるけど、すぐに背中が壁にぶつかる。
「驚いたぜ。あれだけ組織に忠実に生きてきたってのに、俺を殺りに来たやつの中に知ってる顔が何人かいた。つまり、裏切られたわけだ。使えなくなった古い駒は捨てて、また1から作り直す気かもな」
「…そんな話を私にして、どういうつもり?」
「俺を裏切りやがった組織にひと泡吹かせてやりたい。保護してんだろ?組織にいた天才科学者を。あの毒薬が完成すれば、やりようはいくらでもある」
「ふざけないで。完成なんてさせない。誰1人として渡さない。絶対に」
「おいおい。まさか本気でそんな小さなカッター1本で俺と殺り合う気か?」
「うっ…!」
あっという間に両手を捕まれ壁に押し付けられる。私の力じゃビクともしない。勝てるわけがない。でも、屈する訳にはいかない。
「…ひと泡吹かせるだけでいいの?」
「あ?」
「散々こき使われた挙句ポイ捨てされたのに、それだけで済ませるの?それだけじゃ、新しく出来た組織に殺されるのがオチじゃないの」
「この状況で煽ってんのか?大した女だ」
「今ある組織を壊滅させて、俺が新しい組織のボスになるくらい言えないの?情けないっ…!」
がっと首を掴まれ、呼吸が出来なくなる。片手だけでこの力。習った護身術なんて役に立たない。自分の無力さに腹が立つ。
だけど、こんな所で死ねない。足を床から離し体重をかけ、ピンガが少し怯んだ隙に股間を蹴り上げた。