5 恋心輝きながら
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「あ、美衣ちゃん。おはよう」
「…おはよう」
駅の中に入ると、和葉ちゃんがいた。欄と工藤くん、紅葉さんも。見送りに来てくれたんだとわかるのに、なんで居るんだろうなんて思う。
「昨日、ごめんな。うちのせいで迷惑かけて…」
「…私は別に。ホテルいただけだし。元気そうでよかった」
「うん。めっちゃ元気やで。ありがとう」
「あら。葉っぱちゃんと美衣さんは仲がええんです?意外やなぁ」
「紅葉は黙っといて。うちは美衣ちゃんと話してんねん」
「怖い顔せんと、仲間に入れてくれたらええですやん。同じ人を好きな者同士、仲良うやりましょ」
「仲良うとか、思うてもないこと言うなっちゅうの!」
私にはよっぽど紅葉さんと和葉ちゃんの方が仲良く見えるし、どちらとも仲良くする気はない。気持ち蘭の方に寄って立つ。
「あの、美衣ちゃん。平次から部屋のこと聞いた。ごめんな。ちゃんと気付けるから」
「あ、うん」
「なんです?まさか幼馴染の葉っぱちゃんが部屋に入るんを許さへんとか?案外心が狭いんやなぁ、彼女さんは」
「紅葉!あんたには関係あらへんやろ!逆やったら私かて嫌やし!」
「彼女さんの言うことを素直に聞く葉っぱちゃんも葉っぱちゃんです。彼女やからって他人の行動を制限する権利があるんやろか?浮気しとるわけでもあらへんのに。傲慢と違います?」
「ちょっと紅葉さん!さっきから聞いてれば」
「勘違いすな。美衣やなくて、俺が嫌や言うたんや」
反論してくれようとした蘭の言葉を遮って、平次くんが言う。工藤くんと伊織さんと話してて、こちらの会話は聞いてないかと思ってたのに。
「俺が美衣に疑われるようなことしたないから、もう部屋に勝手に入ってくんな言うたんや。せやろ?和葉」
「う、うん。そうや。平次はそう言うてた」
「あら、そうでしたか。そらすみませんでした。美衣さん」
「…いえ」
嘘だ。私が嫌だって言ったから、平次くんは和葉ちゃんに伝えてくれたんだ。私の機嫌を損ねないような言い方をして。
(なんか私、めっちゃ面倒な奴だな…)
「野々村様」
「え?あ、はい。何でしょう。伊織さん」
「紅葉お嬢様は気丈に振る舞われてますが、内心穏やかではないのです。普段はあのように攻撃的な言葉を投げかけるような方ではございませんので、お許しください」
「…はい。大丈夫です。気にしてません」
「ありがとうございます」
わざわざ釘を刺してくるほど、嫌そうな顔をしていただろうか。なんだか、どんどん気持ちが落ち込んでくる。俯いた視線の先、私の手を握る平次くんの手が見えた。
「…どうしたの」
「理由がないと繋いだらあかんのか」
「こんなとこでイチャつくなよ服部」
「なんや工藤。羨ましいんか?お前も毛利の姉ちゃんと繋いだらどうや」
「ば、バーロー!羨ましくなんかねぇっての!」
「ラブラブでいいなぁ。美衣」
「平次、ほんま好きやなぁ。美衣ちゃんのこと」
照れくさそうに、でもしっかりと繋がれた手。私が落ち込んでるのに気付いたんだろう。嬉しくて、ぎゅっと握り返す。
「葉っぱちゃんは戦意喪失しとるみたいやけど、うちは負けませんからね」
「うん。私も負けない。誰にも」
「美衣、かっこいい」
「え、ほんと?蘭に言われるとか嬉しい」
「あ、新幹線来たぞ」
ホームに新幹線が滑り込んでくる。不安が消えたわけじゃない。でも安心させてくれようとする平次くんを信じる事は出来る。
「じゃあまたな」
「ああ。気つけてな」
「美衣、乗ろう」
「うん。またね、平次くん」
「おう。連絡するわ」
手を繋いだまま持ち上げて、彼の手の甲にちゅっとキスをする。驚いてる平次くんの頬がほんのりと赤くなる。
「…今度はなんのおまじないや」
「離れてても、私のことで頭がいっぱいになるおまじない」
手を離して、新幹線へ乗り込む。あんなので本当に平次くんの頭を独占出来るなんて思ってないけど、ないよりはマシだろう。
「…なかなかやりますね、美衣さん」
「だ、大胆やなぁ…美衣ちゃん…」
「可愛らしい方ですね。おまじないなどなくとも、服部様の頭は野々村様でいっぱいのようですが」
「…そう思うなら紅葉の奴止めてくれよ」
「それは出来ません。私はお嬢様の執事ですから」
「あ、そーでっか。紅葉には悪いけど、俺が好きなんはこの先もずっと美衣だけや」
「そうですか。でも、野々村様もそうだとは限らないのでは?」
「は?なんやと?」
「恋愛は一方通行では成り立ちませんから。可愛らしい方でしたし、是非一度ゆっくりお話してみたいですね」
窓から平次くんに手を振ろうと思ったのに、何やら伊織さんと話していて全然こっちを見てくれない。
「ちょお待て。それ本気で言うてんのか?」
「さぁ。どうでしょう。ほら、野々村様がこちらを見てますよ。手を振りたそうに」
「あんたは振らんでええねん!」
「これは失礼」
「伊織。平次くんにちょっかい出さんといて」
「すみません。紅葉お嬢様」
「すみません、平次くん。うちの伊織が」
「…なぁ、あんたんとこの執事、恋人とかおらんのか?」
「え?伊織ですか?聞いた事ありませんね」
「そうか」
新幹線が走り出して、平次くん達が段々と遠くなっていく。寂しさを感じながらも、君とならどんな未来にでもきっと耐えられる気がした。
恋心輝きながら
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