5 恋心輝きながら
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「水くさいわぁ、平次くん。京都に来てはったなら言うてくれたらよかったのに」
「紅葉、こら!離せて!ちゅうか、なんで京都おるって知ってんねん!」
東京に帰る日の朝。ホテルを出ると私達を迎えに来てくれたのであろう平次くんと、その腕に馴れ馴れしくくっつく巨乳の女がいた。
「昨日あんだけ派手に暴れてバレへんとでも?伊織が教えてくれました。また事件を解決したて聞きました。さすがうちの未来の旦那さん」
「さすがです。服部様」
「ああいや、大したことちゃうけどな」
「俺と、一緒に!解決しんだよな?服部」
「紅葉さん!服部くんはここにいる美衣と付き合ってるんです!離れてください!」
「あら。あなたは…皐月堂ん時の…」
「え?…あ!決勝戦に進んでた…!」
「大岡紅葉です。その節はお世話になりました。あんさんのおかげで危険な目に合わずにすみました」
「あ、いえ。とんでもない」
紅葉さんは平次くんの腕から離れ、丁寧に私に向けてお辞儀をしてくれる。聞かなくてもわかる。お嬢様だ。園子とは違うタイプの。
「それで?平次くんとお付き合いされとるっちゅうのは、ほんまですの?」
「あ、はい。そうです」
「おかしいなぁ。てっきり恋敵は葉っぱちゃんやと思うてたのに…とんだダークホースが現れたもんやわ」
「すみません。伊織お嬢様。調査不足でした」
「ええんよ、伊織。誰と付き合おうと、平次くんがうちの未来の旦那さんなのは変わりません」
「な、なにを言うとんねん!美衣!ちゃうぞ!こいつが勝手に言うてるだけや!」
「つれへんなぁ。そんなとこも素敵やけど」
気にした様子なく笑う紅葉さん。和葉ちゃんより強敵な予感。見えない火花が私達の間に飛び散る。すっと平次くんの腕に手を絡め、肩に頭を寄せながら言う。
「…自己紹介が遅れてすみません。野々村美衣、平次くんの彼女です。調査なんてしなくても、知りたいなら私達の馴れ初め詳しくお話しますよ?」
「…そら、ご親切に。是非聞かせてもらいましょか」
「こ、怖ぇ〜…。おい蘭、止めてくれよ」
「何言ってんの新一!ここで引いたら駄目よ!ファイト!美衣!」
「紅葉!こいつらは今から東京に帰んねん。時間あらへんから、話はまた今度な」
「平次くんがそう言うんやったら…」
「では駅までお送りしましょう。どうぞ、お車へ」
「せやね。さすが伊織。どうぞ、みなさん」
いかにも高そうな車のドアを開ける執事。荷物も多いし送って貰えるのはありがたいけれど。正直あまりお世話になりたくない。
「工藤と毛利の姉ちゃん、送ってもらいや」
「え?でも、美衣は…」
「美衣は俺が駅まで乗せてく。元々、そのつもりでここに来たんやし」
「平次くん…」
「なぁんだそうだったの!じゃあお言葉に甘えてお願いします!ほら、新一!」
「お、おう。すみません。お願いします」
「はい。お任せ下さい」
「…ほんなら、また駅で会いましょな」
紅葉さんと工藤くん、蘭を乗せた車が走り出す。平次くんが大きくため息をこぼして、私にヘルメットを差し出す。
「すまんな。朝からバタバタして」
「ううん。…紅葉さんと、どうゆう知り合い?」
「ガキの頃かるた大会であいつに勝ったことあってな。ホンマにそれだけなんやけど、なんや好かれとるみたいで…」
「ふーん」
「ホンマやで?!皐月堂ん時の事件の時に久しぶりに会うまで忘れとったし!」
「別に疑ってるわけじゃないよ。やっぱりモテるなって思って面白くないだけ」
「お、おお。そうか。…ちょっとはわかったんちゃうか?お前が工藤にきゃーきゃー言うとる時の俺の気持ちが」
「一緒にしないで。私のはただのオタク愛。紅葉さんは完全なる恋愛感情じゃん」
きっと平次くんを睨んでそう言えば、いまいち分かってなさそうな顔。小さくため息をこぼしてヘルメットを被る。
「本当に私だけ迎えに来てくれたの?」
「ああ。バイクの後ろ乗せたる言うたのに、この2日結局あんま走られへんかったからな。ホテルから駅の短い距離やけど、ないよりはマシや思うてな」
「…うん。嬉しい。ありがとう。平次くん大好き」
「おまっ…そうゆうんは、ヘルメット被る前に言えや」
「早く行こ。乗り遅れちゃう」
不服そうな平次くんがバイクに跨る。その後ろに乗って、彼の背中にぎゅっと抱きつく。このまま東京まで帰れたらいいのに。
「ついたで」
「うん。あっ…!」
「なんや。どないした」
「ヘルメット脱ぐ時に引っ掛けちゃったみたい。ゴムの飾りが取れちゃった」
「金具部分が壊れてもうとる。こらもうつかへんな」
「うん。古いやつだったししょうがないね」
「…なぁ、その飾り貰ってええか?」
「え?これ?いいけど…」
「おおきに」
ゴムについてた丸い玉飾り。それを平次くんはポケットから取り出した巾着の中に入れる。
「…それ、初恋の人との思い出の品が入ってるやつ?」
「ん?なんや、知っとったんか。あれな、仏像盗んだ時に落ちたもんやって、初恋の人とは何の関係もなかってん。ちゃんと返してきたし、もう入ってへん」
「仏像…そ、そうだ!そうじゃん!和葉ちゃん!」
「は?なんや急に」
「服部くんの初恋の人、和葉ちゃんなんだよ!」
急に前世の記憶が蘇って、思い出したことをそのまま口に出す。ポカンとしてる平次くんにやばいと思う。
「あ、やっ、今のは…」
「和葉に聞いたんか?俺も昨日、事件解決した後に初めて知ったわ」
「え…あ…知ってたんだ…」
「おう。まさか和葉やったとはなー。化粧って恐ろしいわ」
「…いいの?」
「は?何がや」
「初恋の人、ずっと探してたんでしょ?」
「そら誰か気になって探しとったけど、別にそれが和葉やったからどうっちゅうことはないで。やっと会えたとは思ったけどな」
紅葉さんっていう強力な敵に加え、きっともう大丈夫と思ってた和葉ちゃんが初恋の人だった。そんな2人が近くにいるなんて、不安以外のなんでもない。
「おい、美衣。なんちゅう顔してんねん。心配せんでも、俺が好きなんはお前だけや」
「…でも、会えない間に変わるかもしれないじゃん。2人とも可愛いし、心が変わらないなんて保証はないもん」
自分でも面倒なことを言ってるとわかる。でもどうしようもなく不安で、俯きながらぎゅっと拳を握る。
「せやな。確かに変わらへんっちゅう保証はない。でも、俺が好きなんは美衣やし、幸せにしたりたいと思うとんのも美衣だけや。せやから、この気持ちはずっと変わらへんっちゅう事にしとけ」
言いながら、片手で私の頭を抱き寄せる平次くん。彼の胸におでこをつけてそっと目を閉じる。
「…もし変わったら、京極さんに殴ってもらうから」
「おー、好きにせぇ」
平次くんがぽんぽんと頭を優しく叩く。前の私は紅葉さんの事も和葉ちゃんの事もきっと知っていた。記憶があれば、もっと安心出来ただろうか。
何もわからないってこんなに不安なんだと、当たり前のことを思い知った。