4 胸がドキドキ
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「現状わかってるのはそのくらい。今はアポトキシン4869の試作品を作っていた科学者を探しているところ」
一通り、薬について説明してもらった工藤くんはテーブルに広げられた資料をじっと見ている。
「なにか引っかかる?」
「あ、いえ。よくこの情報だけでそこまでの事がわかったなって…やっぱり凄い方ですね。堤刑事は」
「え?いや、まだまだよ、私なんて」
「謙遜すんなよ。お前がいなかったら、あの取引現場に行けてねぇし、俺がこうして生きてんのもお前のおかげだろ」
「そうなんですか?」
「ちょっ、松田くん。関係ない話しないで」
「いいじゃねぇか。減るもんじゃねぇし」
「私も是非聞きたいです!お姉さんが松田さんを助け出した話」
「美衣ちゃんまで…!」
お姉さんがここまでの情報を突き止めてるのは、恐らく前世の記憶ありきだから。話を逸らそうと(あと純粋に興味があって)松田さんに視線を向ける。
「観覧車に爆弾が仕掛けられて、それを解体するべく俺は1人でそれに乗り込んだ。するとまぁそいつが厄介な爆弾で、爆破の数秒前にもうひとつの爆弾の在処をその爆弾のモニターに表示するってやつでな」
「その事件、聞いたことあります。もしもうひとつの爆弾が爆破していたら、大変な被害だったと」
「そうそう。だから俺はその在処を見て、仲間にメールでそれを知らせようと思ったわけ。それが被害を抑える最善策だと思った。けど紗奈は、もつひとつの爆弾の在処を見事に推理、発見して無事に解体。それを聞いて目の前にある爆弾を解体して、俺は命拾いしたってわけだ」
「なるほど…!お姉さんすごいです!」
「だろ?そんで、観覧車から降りた俺にこいつ、思い切りビンタしやがって。いつどこで死んでもいいけど、自分から死を選ぶのだけはどんな理由であろうと許さないって目に涙いっぱいに溜めて言われてさ。痺れたぜ、あれは」
そう言う松田さんの顔は優しくて。素敵だな、なんて思ってると視線を感じて横を見れば、服部くんと目が合った。
「その時だ。俺が紗奈に惚れたのは」
「なっ…!ま、松田くん!何言い出すの!」
「お、大人ってすげぇ…」
「松田さんかっこいい…!」
「もう終わり!この話終わり!それより!その科学者の子を探すの、工藤くんと服部くんにも手伝って欲しくて!」
「あ、はい。もちろんです」
「名前と顔はわかっとるんか?」
「うん。宮野志保。両親は既に他界。所在が全く不明だけど、姉の宮野明美はほぼ一般人として暮らしてて、彼女を探す方が早そう」
「顔と名前がわかっとんなら、家も職場もわかるんとちゃうん?」
「駄目だ。名前を変えて転々としてて、最新の情報のアパートも既にもぬけの殻だった。組織の奴らにそうしろって言われてたんだろうな」
テーブルに置かれた、宮野姉妹の写真。ちゃんと生きているんだ。この世界のどこかで、元気に。
「足で探すしかないっちゅうことやな」
「わかりました。手分けして探してみます」
「ありがとう。あ、でも無理しないでね。学校あるし」
「大丈夫ですよ。数日休むくらい、なんの問題もありません」
「右に同じや」
「工藤くんの力になれるならたとえ火の中水の中です」
「バーロー。お前は学校行け」
「ええ!そんな!」
「そうね。親御さんも心配するだろうし、美衣ちゃんは学校に」
「心配なんてしませんよ、うちの親は。生きてるかどうかすら、興味無いだろうから」
良かれと思ってした発言だったけど、場の空気が変わったことに気付いて失言だったと思う。
「なんだそれ。お前ん家どうなってんだ?」
「や、ただの育児放棄です。すみません。気にしないでください」
「それは無理だよ。美衣ちゃん、普段どうやって生活してるの?」
「お金は充分に与えられてるので、普通に暮らせてます。あの、本当に大丈夫なので」
「そのせいで引ったくりに合うたけどな」
「引ったくり?!ちょっと!全然大丈夫じゃないじゃない!」
「あああ、違うんです〜!服部くんのアホー!なんで言うの!」
「野々村、いい機会だ。皆さんからも言ってやってくれませんか。女のひとり暮らしなのにこいつ、ろくにセキュリティもないアパートに住んでるんです」
どうしてこうなった。ただ宮野姉妹の捜索を手伝いたかっただけなのに。
「おいおい、まじかよ。つーか、それでよくアパート借りれたな?」
「親父さん名義なんです。書類上では2人で暮らしてる体ですけど、もう1年は帰ってきてないと思います」
「…バレてるし」
「美衣ちゃん、さすがに危ない。この街をなめちゃ駄目。せめてセキュリティのしっかりした所に引越した方がいいよ」
「でも…引っ越すってなったら、お父さんに連絡しないとですよね?無視なんです。私からの連絡は」
「クソ野郎やな」
「オメー、連絡はとれてるって言ってたじゃねぇかよ」
「や、無視ってことは届いてはいるから一応とれてるかなと」
コール音だけが鳴り響く電話。一方通行のメッセージ。お金をもらってるからと最低限の連絡はこちらからするけど、返事があったことはない。
「よし、わかった。じゃあ私の家においで」
「え?いやいや!そんな!そこまでしてもらう理由がありません!」
「友達を助けるのに理由がいる?」
「お姉さん…!」
「うちはセキュリティのしっかりとしたマンションだし、それなら工藤くんも安心でしょ?」
「俺らが厳選したマンションだ。安全性は保証するぜ」
「激重セコム…」
「なんか言ったか色黒小僧」
「なんも」
「はい。堤刑事が良いなら、そうしていただけると僕も安心です」
「もちろん。妹が出来たみたいで嬉しい!じゃあ早速、荷物取りに行きましょ!」
ご機嫌なお姉さんに手を引かれ、立ち上がる。同じ転生者同士、近くにいたら何かと心強い。それはきっとお姉さんも一緒なんだろう。
男手があった方が楽だろうと工藤くん達も着いてきてくれて。みんなで私の家へと向かった。