17 願い事ひとつだけ
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「なぁ、明日一緒にミラクルランド行かへんか?」
「ミラクルランド?」
玄関で靴を履いた後、平次くんが言う。お姉ちゃんは部屋で松田さんにプレゼントのお礼電話をかけている。
「ああ。ちょっと前に俺宛に依頼が来てな。お礼にそのミラクルランドで無料で遊べるから是非友達を連れてきてくれ言われてな」
「え!無料で?!すごい!いいの?私が一緒に行っても」
「おん。ちゃちゃっと依頼終わらせて遊ぼうで」
「うん!」
「ほな、明日の朝駅に集合な。時間はまた送るわ」
「わかった。また明日ね」
「おう。また明日」
家を出る平次くんに手を振る。まさか遊園地に誘ってもらえるなんて。楽しみで心が踊る。リビングに戻ると、お姉ちゃんが部屋から出てくる。
「あれ。服部くん、帰っちゃった?」
「うん。たった今」
「そっか。挨拶し損ねちゃった」
「お姉ちゃん。私、明日は朝から出掛けるね」
「ははーん。服部くんとデート?」
「デート、なのかな」
「いいね〜。楽しんでね。私も明日は出掛けるから、夜ご飯は各自で済まそうか」
「お姉ちゃんも出掛けるの?もしかして松田さん?」
「…そうです」
「デートだ」
「ほら!お互い朝早いみたいだから、さっさとお風呂入って寝ないと!」
「はぁい」
なんのチケットまでかは見えなかったけど、プレゼントの箱の中にチケットが入ってたから、もしかしてと思ったら図星だったようだ。
お姉ちゃんに言われた通り、お風呂に入って早めに寝る準備をする。平次くんからきた集合時間の連絡に返事をして、瞼を落とした。
「あ、おはよう。美衣ちゃん。朝ごはん出来てるよ」
「おはよう、お姉ちゃん。ありがとう〜!時間足りないと思ってたから助かる!」
「時間かけて準備してたもんね。その髪も服も可愛い。服部くんも褒めてくれるといいね」
「ありがとう。お姉ちゃんも、そのネックレスやっぱりよく似合うね」
「え?!あ、こ、これは、ほら!せっかくくれたし、一応つけといた方がいいかなって」
「照れなくてもいいのに。お姉ちゃんもすごく可愛い。松田さんもきっと惚れ直すね」
「…早くお食べ」
いつもはしないヘアセットをしたせいで、思ったより時間がかかってしまった。食器はそのままで良いというお姉ちゃんの言葉に甘えて、玄関へ。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
お姉ちゃんに手を振って、家を出る。平次くんに今から向かうとメッセージを送って、足取り軽く駅へと歩いた。
(あ、平次くんもういる!)
少し先に平次くんを見つけて、小走りで駆け寄りながら手を振る。
「平次くん!お待たせ!」
「おう。時間5分前やしそんな走らんでええで」
「え、走ってた?無意識だった」
「せっかく可愛いくしとんのに、崩れてまうやん」
「…うん」
言いながら、平次くんが私の髪を撫でる。可愛くしてきたってわかってもらて、嬉しい。彼が何やらハッとして、ぱっと手を引っこめる。
「す、すまん。勝手に触って。行こか」
「あ、うん」
別に謝るような事じゃないのに。そう思いながら、駅の中へ向かう平次くんの後を追う。
(平次くんのウエストポーチ、絶妙にダサいなぁ。でも、それもなんか可愛い)
というか、この服は見覚えがある。多分前世の記憶だろう。でも普通の私服に見えるし、今までそんな風に思ったことなかった。
(記憶に残るような場面で着てたのかな?名シーン?映画かな?)
「おい。そこ段差あんで」
「え?わっ!」
「危なっ!なんで俺より歩き慣れとるはずのあんたが転けそうになんねん」
「め、面目ない」
段差につまづいて転けそうになった私を支えてくれた平次くん。そのまま手を握って歩き出す。
「危なっかしいから、こうしとったる」
「…うん。ありがとう」
繋がれた手。自分の心臓の音がうるさくて、さっきまでの思考はあっという間に忘れ去った。平次くんと過ごす時間は、いつだって特別で。
前世の記憶があったから、推しがいたから、生きてこれた今までとは違う。今この世界で手に入れた彼との記憶。それがあれば、きっとこれからも生きていける。
記憶の中で、いつもあなたと生きていたい。そう伝えたら平次くんはどんな顔をするだろう。なんて思いながら、少しだけ繋がれた手に力を込めた。
願い事ひとつだけ