17 願い事ひとつだけ
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「よう。来たで」
「うん。いらっしゃい」
お姉ちゃんの誕生日会をするべく、家に来てくれた平次くん。本当は駅に迎えに行きたかったけど、準備があったから行けなかった。
「えらい静かやな。工藤達は何しとん?」
「それが、帰っちゃって」
「は?なんでや」
「実はお姉ちゃん、急に仕事入って帰るの何時になるかわからないって連絡きて」
「組織関連か?」
「そうみたい。詳しくは聞けなかったけど」
「そらしゃあないな。ちゅうことは、誕生日会は中止か。ほんであいつ等はとっとと帰ってもうたんか?薄情な奴やの〜」
「ご飯食べて帰ったらって言ったんだけど、服部くんが来るんなら2人で食べるべきって蘭と園子が…」
「あー…なるほどな」
工藤くんも、服部に会うの楽しみにしてたんだしその方がいいって言って、みんな帰ってしまったのだ。
「ごめんね。せっかく来てくれたのに」
「かまへん。元々、あんたに会いに来たんやし」
「…うん。ありがとう。お腹すいてる?」
「腹ぺこや」
「よかった。沢山あるよ。あ、もちろん残していいからね」
「めっちゃ豪華やんけ!ほな、遠慮なく。いただきます。…うま!あんた料理上手やな」
「年季入ってますから」
「特にこの餃子、めっちゃ美味いわ!今まで食った中で1番美味い!」
「本当?!好きな食べ物はって聞かれたら、美衣の作った餃子って答えてくれる?!」
唐突な質問に、平次くんはきょとんとした顔で箸を止める。つい嬉しくなって余計なことを口走ってしまったと後悔する。
「ご、ごめん。今のは…」
「せやな。今度からそう答えるわ」
「いいの?!ありがとう!」
「くそ可愛ええな…」
「え?鶏皮ええな?」
「言うてへん。くそ可愛ええ言うたんや」
「…餃子が?」
「なんでやねん。あんたに決まっとるやろ」
「私?」
「そうや」
「…そっか」
平次くんに、私は可愛く見えてるのか。それはなんというか、とても嬉しい。他の誰にそう言われるより。
「そう見えてるなら、何着ようっていっぱい悩んだ甲斐あったよ」
「別に何着とっても可愛ええわ」
「え。全身タイツでも?」
「着たことあるんか」
「ないけど」
「何してんねんって思うけど、まぁ、可愛ええやろな」
「ええ…マジか」
「言うとくけどな、あんたやからやで」
「私だから?」
「そうや。俺があんたを」
「ただいま!!ごめん!!遅くなって!!」
平次くんの台詞を遮るように、勢いよくドアを開ける音がして。大荷物を持ったお姉ちゃんが現れた。
「お、おかえり、お姉ちゃん」
「…邪魔しとんで」
「え?あ、服部くんいらっしゃい。あれ?工藤くん達は?」
「それが、お姉ちゃんの帰宅時間が何時かわからないって言ったら帰っちゃって…」
「あ、うん。そっか。え、それで今、服部くんと2人でご飯を…?」
「うん。大丈夫だよ。お姉ちゃんの分はちゃんとよけて…」
「邪魔してごめんなさい!もっかい仕事行ってくる!」
「え?!お姉ちゃん?!」
「ええて。別に邪魔ちゃうし、そもそもあんたの家であんたが主役やろ、今日は」
さあっと顔を青くしたお姉ちゃんがドアを閉めようとするのを、服部くんが止める。申し訳なさそうな顔のお姉ちゃん。
「服部くん…ごめんなさい。早く帰ろうと思って連絡怠った私のミスだ…」
「せやから、ええ言うとるやろ」
「お姉ちゃん、仕事の方はもう平気なの?」
「あ、うん。松田くんが後は任せとけって家の前で降ろしてくれて」
「その荷物はなんや?誕生日プレゼントか?」
「そうそう!これが降谷くん達にリクエストしたプレゼント!見て、美衣ちゃんが欲しがってたノンフライヤー!」
「え?!本当だ!これを誕生日プレゼントにリクエストしたの?お姉ちゃんの欲しいものじゃないじゃん」
「ご飯は美衣ちゃんに任せっきりだから、少しでも負担減ればなと思って。私もヘルシーなの食べれるし一石二鳥でしょ」
「お姉ちゃん…ありがとう。大事に使うね」
住まわせてもらっているし、今までも自分でやってたから料理を担当するくらいなんの負担にもならないのに。お姉ちゃんの優しさが嬉しくて頬が緩む。
「こっちの箱は他の友達からか?」
「あ、それは…さっき別れ際に松田くんがくれて…」
「え。松田さん個人から?」
「うん。私も初めてで戸惑っちゃって、受け取るのに精一杯だったんだよね」
「初めての個人的なプレゼント!わー!何が入ってるんだろうね?!」
「指輪ちゃうか?」
「いやいや、さすがにないって!付き合ってもないのに」
「あのおっさんならやりそうやけどな」
「ええ…や、まさか…ねぇ?」
緊張した面持ちでお姉ちゃんが箱をあける。中には小さなパールのネックレスと、チケットが入っていた。
「わぁ、可愛い!お姉ちゃんに似合いそう!指輪ではなかったけど、素敵なプレゼントだね」
「うん。すごく可愛い。だから指輪はないって言ったじゃん」
「パールは愛情の象徴とされる宝石やで」
「…博識だね、服部くん」
「探偵やからな」
服部くんの言葉に、お姉ちゃんの頬がほんのり赤く染る。満更でもなさそうなその横顔を可愛いと思った。