16 ピルグリム
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ー今、電話してもいい?
部屋に戻って平次くんにそうメッセージを送った。変に緊張しながら返事を待ってると、メッセージではなくて電話がかかってきた。
「も、もしもし」
「よう。どないしてん」
「あ、えっと、今何してた?」
「あんたが勧めてくれた謎解きアプリやっとった」
「そうなんだ。どう?かなり難しいって口コミに書いてあったけど」
「そこそこやな。もう最後の1問やし」
「え!そうなの?!さすが服部くんだね」
「こんくらい簡単に解けんと探偵は務まらへんわ。ちゅうか、なんか用事あったんちゃうんか」
「ううん。特に用事はなくて」
「ほんなら、なんで電話してもええか聞いてきてん」
「平次くんの声が聞きたいなって思って」
素直にそう伝えると、何故か電話の向こうが静かになる。変なことを言ってしまっただろうか。
「ごめん。駄目だった?」
「…いや、嬉しいわ」
「ほんと?良かった。でも、ちょっと後悔してる」
「は?なんでや」
「声聞いたら、会いたくなってきちゃって。やっぱり顔見て話したいや」
「はぁ〜……ほんっま、ええ加減にせぇよ…」
「え。ごめん。怒った?」
「怒るかアホ。いや、やっぱ怒っとる。鈍すぎてもはや腹たってきたわ」
「ええ…。あ、もしかして、入院してるのに会えるかボケ的な?」
「ちゃうわボケ。会いたなってんのが自分だけやと思うなよ」
それはつまり、平次くんも私に会いたくなったということだろう。嬉しくて勝手に頬が緩む。
「そっか。お揃いだ。嬉しい」
「かっ…」
「か?」
「何でもないわ!退院したらすぐ会いに行くからな!首洗って待っとけどアホ!」
「え、本当?来てくれるの?!退院っていつ?!」
「2日後じゃ」
「金曜日…!何時くらいになりそう?」
「学校終わるくらいにはそっち着くと思うで」
「わかった!じゃあ学校終わったらすぐ駅行くね!一緒にご飯食べようよ」
「ああ。そうしよか」
2日後に平次くんに会える。楽しみで仕方がない。ウキウキしながらカレンダーに予定を書きこもうとして、ハッとする。
「金曜日…お姉ちゃんの誕生日だ…。ご馳走たくさん作って待ってるねって約束してるんだった」
「そら約束守らな。次の日にしよか」
「そうだよね…約束は守らないと…でも、早く会いたいし…そうだ!平次くん、家に来ない?工藤くんも蘭も園子も呼ぶし!」
「そら俺はええけど、姉ちゃんはええんか?」
「大丈夫と思うけど聞いてみる!待ってて!」
電話を繋いだまま部屋を出て、お風呂に入ってるお姉ちゃんの元へ。
「お姉ちゃん!」
「わぁ?!びっくりした!」
「金曜日の誕生日会、平次くんや工藤くん達も呼んでいいかな?!」
「…もちろん!パーティ大好き!」
「良かった!ありがとう、お姉ちゃん!」
浴室のドアを閉めて、足取り軽く自室に戻りながら服部くんに伝える。
「お姉ちゃんいいって!」
「聞こえとった。ほな、お邪魔するわ。姉ちゃんって、何が好きなん?」
「え?あ、プレゼント?入浴剤がいいと思う!毎日入れてるの」
「わかった。ほな、そっち着いたら連絡するわ」
「うん!」
「そろそろ消灯時間なるし切るで」
「あ、うん。わかった。またね、平次くん」
「…おん。またな、美衣」
電話をきって、ベットに寝転がる。いつもより少しだけ早めな鼓動が心地いい。2日後に、会える。
(嬉しいな。何着よう)
「美衣ちゃん、電話終わった?」
「お姉ちゃん。うん、終わったよ。さっきごめんね。急にお風呂のドア開けたりして」
「そんなの全然いいよ。それより!いつの間に服部くんのこと名前呼びするようになったの?!ついに付き合ったの?!」
「つ、付き合ってないよ。名前呼びは、昨日から…私が名前で呼んで欲しいって言ったら、私も名前で呼ぶべきだって言われたから」
「うわぁああ!可愛いー!!そうだね!お互い名前で呼ぶべきだよね!そうするべきだって大昔から決まってるもんね!」
平次くんと同じこと言ってるお姉ちゃん。そんな常識があったなんて知らなかった。みんな博識だ。
「金曜日、松田さんも呼ぶ?」
「え、いいよ。自分の誕生日会に来てって言うのはちょっとなんか、あれだし」
「そうかな。去年はどうだったの?」
「毎年、警察学校組が揃ってお祝いしてくれるよ。みんなでひとつのプレゼント買って渡してくれる。去年はフサエブランドの鞄貰った」
「おお!さすが大人組…!」
「今年もたぶん、そうしてくれるつもりだと思うし。プレゼントもリクエストしたんだ」
「そうなんだ。何にしたの?」
「ふふ。届いてからのお楽しみ」
そう言って嬉しそうに笑うお姉ちゃん。その顔を見てるとなんだか私まで嬉しくて。この素晴らしい日々をぜったい毀したくないと、そう思った。
ピルグリム