12 秘密
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「え。家の方で作るの?」
「事務所のキッチンには調味料なんて置いてへんからな。それに、客が来た時に肉じゃがと魚の匂いさせてんのは流石にあかんやろ」
それもそうだと、服部くん達の家のキッチンでお昼ご飯を作る。物の場所とかわからないから、彼にその都度聞きながら。
「事務所にいなくて平気?」
「コナンがおるから大丈夫や」
「そっか。コナンくん、小学生の時は毛利探偵のとこに住んでたよね?いつから服部くんと住んでるの?」
「中学あがるちょい前くらいやな。俺がこっち出てきたんと同時に」
「もしかして服部くん、その為に東京来たの?」
「せやで」
「愛だね」
「きしょいこと言うなや」
「えー?なんでよ。素敵なことじゃん」
私だって似たようなものだ。紗奈と近くにいたくて大学は東京を選んだし、家も彼女の近くにした。
「人生の選択肢の理由になるほどの人に出会えるなんて、超ラッキーだよ」
「…せやな。あんたの言う通りやわ」
「でしょ?あ、そうだ。コナンくんのこと工藤って呼ぶの辞めたんだね」
「…久しぶりに聞いたな、その名前」
「そうなの?」
「ああ。…あんたは知っとるけど、知らへんもんな」
「なにその意味ありげな言葉」
「聞きたいか?」
「いや、いい。知らない方がいい事もあるって学んだので」
「そうか」
野菜を鍋に入れながら、これについてはあまり深く突っ込まない方が良さそうだと話題を変える。
「ねぇ、なんで遠山さんと別れちゃったの?」
「よくある話や。小さな不満が溜まって、お互いどうしようも出来ひんことなってん」
「ふぅん。じゃあ頑張ってれば、私にもチャンスあったのかな」
「は?どうゆう意味やそれ」
「私さー、高校の時好きだったんだよね。服部くんのこと」
もう過去の事だし、世間話し的なノリで言ったつもりだったけれど。大きな物音がして振り向くと、どうやらテーブルの足に自分の足をぶつけたらしい服部くん。
「大丈夫?お茶こぼれてるじゃん。台拭きどこ?」
「だ、大丈夫や。自分でやる」
「そう?」
「…ほんまなんか?さっきの」
「え?うん。本当だよ」
「嘘つけ!そんな素振り全くなかったやんけ!」
「あはは。それはそう。好きだって思ったからこれ以上近付かないようにしようと思ってた」
「はぁ?なんじゃそれ」
鍋の中に具材を入れて火をつける。煮込んでる間に別の鍋で、高そうな味噌を溶かしていく。
「だって誰が見ても服部くんと遠山さんは両思いだったからさー、不毛な片思いするくらいなら関わらない方がいいやって思ったわけ」
「全然気付かんかったわ…むしろ嫌われとんやと思うとった」
「え?なんで」
「この飴くれた時、あんた言うてたやん。そんな仲良うない奴に声かけづらいて」
「あー、うん。言ったね」
「俺はもう友達やと思うてたから、きっとあんま関わりたくないんやろうなって思うて。それから声かけるん辞めたねん」
「あれから本当に話さなかったもんね。でも関わりたくなかったのは正解だよ、これ以上好きになりたくないって思ってたからさ。さすが名探偵」
魚も焼いてるし、にんじんしりしりは電子レンジの中。後は煮込み終われば完成だ。私の手が止まったのを見計らったかのように、服部くんが隣に立つ。
「ほな今は、話しても好きにならへんって思うとるっちゅうことか?」
「…そうゆう訳じゃないけど」
「まぁ確かに、高校ん時にもし好きや言われても、振ったやろうな」
「だよねー。我ながらいい判断だったと思う」
「けど、やからってひとつも話さんのはやり過ぎとちゃうか?」
「そんな事ないよ。やるなら徹底的にやらないと。知れば知るほど好きになるって、わかってたもん」
「そんなに好かれとったとはなぁ。おおきに」
「…昔の話だからね?」
紗奈にも話したことない、私の秘密の恋。始まる前に自分で終わらせた可哀想な思いも、少しは成仏出来ただろうか。
「憧れもあったんじゃないかなって思うの。お互いに名前呼んでるのとかさ。服部くん、他の子はみんな名字呼びだったし、特別感って言うの?」
「まぁそら、幼馴染やからな。昔からそう呼んどったってだけで…特別感あるんか?名前呼び」
「あるよー!今とか尚更じゃない?大人になって名前呼びされるなんて、恋人じゃなきゃないもん」
「美衣」
「…呼んで欲しいみたいに聞こえた?」
「いや?どんな顔するんやろ思うただけや」
「もー。事務員をからかわないでくださーい」
自分がどんな顔をしてたのか、よくわからないけど。少し早くなった心臓がバレてないといいと思った。
1/1ページ