11 初めての朝
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喉の乾きで目を覚ます。目の前に見えたペットボトルの水に手を伸ばし、体を起こしてそれを飲めば少しずつ頭が冴えてくる。
(あれ…?私昨日…どうやって帰ったっけ?ていうか…ここ…何処?!)
自分のいる場所が見覚えのないところだと気付き、酔いも眠気も一気に冷めた。ふと、水の置いてあったテーブルの横に置き手紙を見つける。
(野々村へ。ここは俺とコナンの家や。安心して寝てええで…服部…服部くん達の家?!え?!なんで?!)
昨日は紗奈と飲んでいつものように眠った彼女を迎えに来てもらおうと国末さんに電話をかけたはず。
(…いや違う。間違えてコナンくんにかけてる!)
スマホの発信履歴を見ると、コナンくんが1番上になっていた。なんて失態。頭を抱えてため息をこぼす。
(最悪だ〜。それで見かねた服部くんが迎えに来てここに運んでくれたんだ…めっちゃ迷惑かけちゃった…)
時刻は朝の5時。さすがに2人はまだ寝てるようだ。このペットボトルの水も私の為にわざわざ置いててくれたのか。
(罪悪感で死にそう…勝手に帰るのもあれだよね。かと言ってまたここで寝直すのはなぁ…てゆうか、トイレ行きたい…!)
けれど、迷惑をかけた上に勝手に人の家のトイレを借りるのは忍びない。迷った挙句、置き手紙の隅にご迷惑をおかけしてすみませんでした。事務所にいます。と書き残し、そっと荷物を持って近くのドアを開ける。
(あ、よかった!階段!ドアの色同じだからそうじゃないかと思ったんだよね。合っててよかった)
静かにドアを閉めて、階段を下りる。事務所のトイレを借りて、自分のデスクに荷物を置き座る。
(あれ。顔…え?もしかしてメイク落とされてる!?うわー!有難いけどすっぴん見られたってこと?!恥ずかし!)
わざわざメイクまで落としてくれるなんて、遠山さんに教えられたんだろうか。さすがにフルのメイク道具は持ち歩いてない。もう見られてるしいいかと諦めの心で水を飲む。
(お腹すいたな…確か前にお客さんからもらった差し入れが…あった。服部くんもコナンくんも甘いものそんな好きじゃないから好きに食べていいって言ってたし…貰っちゃお)
小さなクッキー缶を食べようと、コーヒー用のお湯を沸かしてると階段上のドアの開く音がした。
「野々村?」
「あ、服部くん!おはよう、早いね」
「なんや物音したな思うて目覚めてん」
「え、ごめん。起こしちゃった?」
「別にかまへん。二日酔いなってへんか?」
「大丈夫。あの、迷惑かけて本当にごめんなさい。迎えに来てくれてありがとう」
「おー。今度からは店の名前言うてから寝てくれると助かるわ」
「ほんとにすみません。このお詫びは必ず」
「気にせんでええて。それ食うんか?」
階段を降りてきたスウェット姿の服部くんが、隣りに並ぶ。初めて見るラフな格好。
「うん。服部くんもいる?」
「いらん。コーヒーだけくれ」
「わかった」
欠伸をしながら、キッチン台にもたれかかる服部くん。寝起きはなんだか幼く見えるなと思う。
「なんやじろじろ見おって」
「や、寝起きだとなんか子どもっぽいなって。寝癖ついてるし」
「そらあんたもやろ。すっぴんやと幼く見えんで」
「…忘れてた。メイクまで落としてくれてありがとう。遠山さんの教え?」
「まぁそんなとこや」
「でも、出来ればすっぴんはあんま見られたくなかった」
「なんでや。元々の顔知っとんのやからええやんけ」
「高校の時もナチュラルメイクしてたもん」
「ほーん。けど別にそんな変わらへんで?」
「覗き込まないで。それはそれで嫌だし」
お湯が湧いて、ドリップコーヒーに注いでいく。いい香りが立ちこめる。
「はい。どうぞ」
「おおきに。俺はすっぴんのが好きやけどな」
「もういいよ、その話は。それはそれで複雑だし」
「褒めとんやんけ」
「それは遠山さんに教わらなかったの?化粧してる子のすっぴんを見た時の正しい褒め方は、化粧してる時も可愛いけど、すっぴんも可愛いねだよ」
「はぁ?なんじゃそりゃ。面倒やのー」
「女は面倒な生き物なんです」
「開き直りおって」
クッキー缶を開けると、中には色んな種類のクッキーが入っていた。真ん中にジャムが挟んであるやつを手に取って、口に放り込む。
「美味しい!服部くんも食べる?」
「いらん言うたやろ」
「そうだけど。美味しいものってシェアしたくなるじゃん」
「ほー。可愛ええな」
「えっ…」
「今のは正解やったみたいやな?」
「…むかつく」
戸惑う私に意地悪っぽく笑う服部くん。不覚にもドキッとしてしまった。クッキーの甘さを消すように、コーヒーを飲んだ。
初めての朝