10 新たな環境
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「服部くんの探偵事務所で働き出したって聴いた時は何がなにやらだったけど、楽しくやってるみたいで安心したよ」
「うん。心配してくれてありがとね、紗奈」
前の会社は小さなところだったけど、倒産と社長死亡でニュースになった。それを見て紗奈はすぐに連絡をくれた。
「もー、ニュース見た時はマジで心臓止まるかと思った!美衣の会社じゃん!って。照明と焦りまくったよ」
「いやー、私もまさか時分の会社があんな事になるなんて思わなかったよ。国末さんにも、心配かけてごめんねって伝えといて」
「自分で言いなよ。どうせこの後会うんだから」
「ちょっとー。また寝る気?たまには最後まで起きててよ」
「私だって出来るならそうしたいもーん」
「もー。あ、そうだ。遠山さんの旦那、服部くんじゃなかったよ」
串盛りから皮串を取りつつそう言うと、紗奈はビール片手にはキョトンとした顔。
「へ?私、遠山さんが結婚したらしいとは言ったけど、旦那が服部くんだなんて言ったっけ?」
「ううん。言ってないけど、遠山さんの相手なら服部くんだなって思って…あれ?思わなかった?」
「思わなかったなー。私はあの2人と同じ学校じゃなかったから、別に遠山さん=服部くんって感じもないし。そもそも付き合ってたのすら知らないかも」
「うそ?!結構な衝撃なんだけど」
「いやいやなんでよ。知るわけなくない?同じ学校でもないのにさぁ」
「私言わなかったっけ?高校の時に」
「えー?聞いてないと思うけど、聞いてたとしても高校でしょ?普通別れてると思うかな」
当たり前すぎて気づかなかった。遠山さんと言えば服部くんってイメージは、同級生だった私だからこそなのだと。
(そっか。普通は別れたって思うか…あれから何年も経ってるんだし…)
「それだけ当たり前だったんだね、美衣の中で。その2人が一緒にいるの」
「…うん。そうなの。ちなみに、紗奈と国末さんもだからね?」
「あはは。マジで?別れらんないな〜」
「そうだよ。2人が別れたら本人より泣く自信あるからね」
「いや意味わかんないって」
楽しく話をしながら、お酒も進む。今までは必ずセットだった仕事の愚痴も、今回はなくて。だからなのかいつもより酔いがまわってしまった。
(うわぁ…これ、ちょっとやばいなぁ。あ、紗奈寝てる…国末さん、電話、しないと…)
ふわふわする頭でスマホを取り出す。連絡先から国末さんを選択して電話をかける。
「もしもし」
「あ、国末さん?こんばんはぁ。いつもの如く紗奈が寝たので、お迎えお願いしまぁす」
「…野々村、かける先間違えてんぞ」
「へ?その声…コナンくん?なんでコナンくんが国末さんと?」
「いやだから、これは俺の番号。くとこが近いから押し間違えたんだろ」
「あー、なるほどぉ!じゃあ国末さんにお迎えお願いしますって伝えてくださぁい」
「は?!ちょっ、待てって!俺国末さんの番号知らねぇし!」
電話の向こうからコナンくんの声がするけど、私まで眠たくなってきてしまう。彼がなんて言ってるのか理解できない。
(あー、駄目だ…瞼、おもい…)
「おい!野々村?!おーい!」
「なんや、コナン。でかい声出して」
「あ、服部。いや、野々村がたぶん酔っ払って電話かける先間違えてるみたいなんだけど。国末さんに迎え頼んでくれって言ったっきり返事しなくなっちまって」
「そら寝とるな、確実に。酒が入るとなかなか起きられへんからのー」
「一緒にいる堤も寝ちまってるみたいだし、飲んでる店もわからねぇしよ」
「あいつん家の近辺の居酒屋に2人揃って眠っとる女性客がおらへんか電話してみるか」
「それっきゃねぇか。起きるかもしれねぇし、俺の電話は繋いどくぜ」
なんだか冷たい風を感じる。外だろうか。きっと国末さんが迎えに来てくれたんだ。お礼を言いたいけど、瞼は上げられそうにない。
「…くに…え、さん…ありがと…」
何とか絞り出した声は小さく途切れてしまう。
だけど、頭に感じる暖かい人肌に、伝わったのだとわかった。
それに安心して、最後にかろうじて繋がっていた意識を手放した。
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