9 探偵事務所
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1回は探偵事務所。存在感のある濃い赤のソファと茶色のテーブルを中心に、本棚やパソコン、テレビなどが置かれている。
「なんか、アンティークでお洒落な部屋って感じだね。キッチンもトイレもあるし」
「人1人くらいなら余裕で住めるで。ベットはさすがにあらへんけど、シャワーならついとるし」
「すご。あそこの階段は?」
「ああ。2階は居住スペースでな。そこの階段からと、裏の外階段から直接家ん中に入る事も出来んねん」
「え。じゃあ服部くん、ここに住んでるの?」
「せやで。出勤時間10秒や。ええやろ」
「最高じゃん」
事務所の中を歩きながら色々見てると、階段の上からドアの開く音がした。足音と一緒に聞こえる声。
「服部。灰原に頼んでた写真の解像終わったってよ」
「おお、コナン。帰りよったか」
「あ、悪ぃ。来客中だった…って、あれ。もしかして、美衣お姉さん?」
「コナンくん!久しぶりー!大きくなったね!」
「うん。久しぶり。美衣お姉さん、綺麗になってて一瞬わからなかったよ」
「おいコラ。ナチュラルに口説いとんとちゃうぞ」
「口説いてねぇし」
小学生の時も思ったけど、相変わらず中学生らしくない中学生だ。この歳でこの色気。将来が恐ろしい。
「あれ…今コナンくん、服部くんの家から出てきた?」
「一緒に住んどんねん」
「一緒に?!」
「そうだよ。平次兄ちゃんの探偵の仕事も手伝ってるんだ」
「へぇ…じゃあ、服部くんが言ってたあいつって、コナンくんのこと?」
「せや。なぁ、コナン。お前も野々村が事務員なら文句ないやろ」
「え。美衣お姉さん、事務員として働いてくれるの?」
「え?!いや、まだ決めたわけじゃ…」
「もしそうなら、すごい助かるなぁ」
そんな期待に満ちた目で見られたら、断りにくい。これも服部くんの作戦の内なのか、得意げな顔してて腹立つ。
「と、とりあえず!詳しい話聞かせてもらいたいかな!」
「何も説明しないで連れて来たの?平次兄ちゃん」
「ちゃんと言うたで。事務員にならへんかって」
「それのどこがちゃんとだよ。美衣お姉さん、座って話そう」
「あ、うん。ありがとう」
服部くんよりよっぽどコナンくんの方がしっかりしてると思いながらソファに腰かける。テーブルの上に置かれた書類。
「それ読んでなんやわからんことあったら聞いてくれ」
「うん。…え?!ちょっ、待って!給料合ってる?!月払いだよね?!」
「合うとるで。月払いや」
「平次兄ちゃん、こう見えて優秀だから」
「こう見えては余計じゃ」
「休みも週2日、好きな時にとっていいの?」
「ええで。野々村に頼みたいんは事務仕事やさかい、その辺が滞らん程度なら2日以上休んでもかまへん。出勤時間も好きにしてええ」
「ま、まじか…超ホワイトじゃん…」
「その代わり、守秘義務。これは徹底してもらうで」
依頼人に関することはもちろん、関わった事件について、ここで知り得た些細な情報など、何も他人に漏らしてはいけないと、真面目なトーンで服部くんが言う。
「わかった。何も言わない」
「よっしゃ。ほんならちゃちゃっとそこにサインして」
「最後にもう1つ聞いてもいい?」
「なんや」
「なんで私なの?元同級生とはいえ、何年も会ってなかったのに…」
「探偵の勘や」
「ええ…そんな曖昧な。コナンくんも、いいの?私で」
「もちろん。大歓迎だよ」
「そっか。じゃあ、ここで働きます。これからよろしくお願いします」
深々と頭を下げてそう言うと、そんな堅苦しいのいらんって服部くんが笑った。まさかこんなにも早く次の仕事が見つかるなんて。
「ほな、あとは任せたでコナン。解像終わった写真見てくるわ」
「あ、おい!ったく…じゃあ必要な書類に記入してくれる?」
「うん。ね、コナンくん」
「なに?」
「前はもう会うこともないからいいかなって言わなかったけど、これからはそうもいかないからさ。いいよ、私の前でもいつも通りで」
「いつも通りって?」
「服部くんは服部って呼んでいいし、私のことも野々村でいいよ。無理に子供ぶるの、疲れるでしょ」
「…ああ。やっぱり野々村にしてよかったよ。ありがとな」
ふっと笑ってそう言ったコナンくんは、とても大人びていて。不覚にもドキッとした。中学生にときめくなんて、流石に自分の身に危険を感じる。
(最近、恋愛してなかったしなぁ…)
「うん。これで全部かな。明日は土曜日だけど、どうする?来るか?」
「うん。仕事早く覚えたいし」
「助かる。んじゃ、来る前に連絡くれるか?これ、俺の連絡先。服部のも送っとくから」
「わかった」
「帰り道わかるか?」
「大丈夫だよ。あ、そうだ。服装ってスーツ?」
「堅苦しいのいらん言うたやろ。好きなもん着て来い。ピアスもネイルも自由じゃ」
「最高かよ。それじゃあ、また明日ね。コナンくん、服部くん」
「おう。またな」
「また明日」
パタンとドアを閉めて、思う。服部くんがコナンくん工藤と呼ばなくなっていたなと。疑問に思わない訳ではないけれど。
(線引きが上手い、かぁ。面倒ごとに首突っ込みたくないだけなんだけどね)
何はともあれ、超絶ホワイトに転職出来た喜びを噛み締めながら家に向かった。
探偵事務所