9 探偵事務所
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
お腹いっぱいお肉を食べて、服部くんは家まで送ってくれた。彼の優しさを無駄にしないように、ちゃんとお風呂に入ってスキンケアをして眠りについた。
そして、今後の事を聞きに最後の出勤。強くあろうといつもより強めのメイクをして向かった。
「説明は以上です。もし次の職にお困りならその辺もお手伝いさせてもらいますので、遠慮なく仰ってくださいね」
やって来た女弁護士さんは美人で優しくてとても頼りになる。みんなの顔から安心が見て取れるほど。
(次の職…そっか。仕事探さないとだよね)
「野々村さんは、貴方かしら」
「あ、はい。そうです」
「服部くんから話は聞いてます。高校の同級生なんですってね」
「はい。まさかこんな形で再会するとは思ってませんでしたけど」
「そうですよね。心中お察ししますわ。困り事がありましたら、いつでも相談にいらしてください。もちろん、お金はいただきませんから」
「あ、ありがとうございます!すみません。私、名刺なくて」
「気になさらないで。それじゃ、また」
弁護士さんからもらった名刺には妃英理と書かれている。名前まで美しい人だと思いながら名刺を財布へ。
みんなに今までお疲れ様でしたと挨拶をして、ビルを出る。とりあえず職場案内所へ行こうかと思ってると肩を叩かれ振り返る。
「服部くん!」
「よう。妃弁護士の話は終わったか?」
「うん。めっちゃ美人な弁護士さんだったね」
「まぁ、せやな。思ったより元気そうで安心したわ」
「お肉たらふく食べたからね」
「ほな次は寿司やろ。行くで」
「え…ちょっ、服部くん。私もう大丈夫だよ?」
「知っとる。元気な時に飯食いに行ったらあかんのか」
「そうじゃないけど…」
さすがに2日連続はお嫁さんもいい気しないのでは。服部家はいいかもだけど、私が気にする。
「ちょうどあんたに話あってん」
「話?」
「おん。せやからついでに飯食うで」
「あ、ちょっと!待ってよ!」
話があるなんて言われたら気になってしまう。さっさと歩き出す服部くんの後を追いかけた。
回転寿司のお店のカウンター席に横並びで座る。タブレットが1人1台あった方が便利だかららしい。
「それで?話って?」
「次の職場、どないするんやろ思うてな」
「あー、それね。まだ何も」
「ほなうちで働かへんか」
「へ?うちって…ど、どゆこと?」
「うちの探偵事務所や。ちょうど事務仕事出来るやつ探しとってん」
「探偵事務所?!服部くん、事務所持ってるの?!」
「おお。仕事柄、秘密事項多てな。けどあんたやったら、あいつも安心やろうし」
「あいつ?」
「ま、とりあえず事務所行こか!話はそっからや!」
まだ何も返事はしてないというのに、強引だと思いながらも断る理由はない。
「てことは服部くん、東京住み?」
「ああ。事務所が東京やからな」
「意外。てっきり大阪で探偵してるのかと思った」
「最初はそのつもりやってんけど…まぁ詳しくは事務所来たらわかるわ」
「じゃあ遠山さんもこっちにいるの?」
「は?和葉?あいつは大阪やで」
「え、そうなの?新婚なのに」
「確かにあいつは新婚やけど、それとこれとなんの関係があんねん」
普通、一緒にいたいと思うものではないのだろうか。昔から付き合ってるとそんな事もないのだろうか。
「寂しくないの?新婚で離れ離れに暮らしてるなんて」
「…ちょお待て。自分、なんや勘違いしとんな?」
「え?」
「和葉の旦那は俺ちゃうで」
「えっ?!違うの?!」
「そない驚くことか?」
「驚くでしょ!てっきりあのまま付き合ってゴールインしたのかと…」
「和葉の旦那は警察官や。親父さんが勧めてきた人とお見合い結婚してん」
「へぇ〜…そうだったんだ…」
まさかの事実に驚きつつも、じゃあ別に何も気にしなくていいのかと一瞬思ったけれど。
「じゃあ服部くんのお嫁さんは?」
「はぁ?まだ独身やぞ」
「うそ。左手の薬指には指輪してるじゃん」
「ああ、これはわざとや。探偵事務所を婚活の場所やと勘違いしとるやつが多くてなぁ。面倒やから既婚者のフリしてん」
「あー。まぁ、服部くんイケメンだからね。相手がいないってわかればそうなるのは無理ないよ」
「…自分、俺の事イケメンやと思うとんか」
「え?うん。高校の時から思ってるよ」
なんでそんな驚いた顔されてるのか不思議だ。自分がイケメンだなんて、そんなものとっくに知ってるだろうに。
「そら、おおきに」
「え?うん。どういたしまして」
「野々村は?相手おらへんのか」
「いたら服部くんと焼肉行かないって」
「それもそうやな」
「ちなみに、紗奈と国末さんはまだ付き合ってるよ」
「へぇ。すごいやんけ。あのお守り事件が嘘みたいやな」
「あれがあったから続いてるんじゃない?」
お寿司を食べ終わり、服部くんの事務所へと向かう。また奢ってくれたけど、探偵って儲かるんだろうか。
「ここや」
「こんな所にこんなビルあったんだ。知らなかった」
「建てたからな」
「建て…?え?探偵ってそんな儲かるの?」
「めっちゃ太いパトロンがおんねん」
「へぇ…」
なんだかすごい世界に足を踏み入れようとしてる気がしてきた。サラッとビルを建てられてしまうほどのパトロンって何者なのか。
「何してん。入るで」
「あ、うん」
扉を開けて待ってくれている服部くん。少しの緊張を抱きながら、中へと入った。