6 それぞれの秘密
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「ホンマにごめんな。紗奈がそんな風に思っとったなんて知らずに…」
「ううん。私も言わなかったし」
国末さんが大阪について、2人は仲直りの為お互いの思いを打ち明けている。私と服部くんは少し離れたところでそんな2人を眺めている。
「これ俺らいらんのとちゃう?」
「まぁいいじゃん。乗りかかった船だし、結末気になるでしょ」
「別にどうでもええわ」
こそこそとそんな話をしながらも、ちゃんと居てくれる服部くん。優しい人だと思いながら視線を戻す。
「あのお守りはな、和葉ちゃん…ずっと好きやった子に失恋したきっかけでもあんねん」
「え?あのお守りが?」
「せや。告白も出来んと失恋してもうて、怪我するし、おまけにそのせいで嫌な奴にまでなってもうてな。めっちゃカッコ悪かってん。そんときの俺」
「…あいつホンマに和葉のこと好きやったんか」
「怒らないの」
「怒ってへんわ」
「せやから、あのお守り見てると二度とあんな自分にはならへんぞって喝が入るっちゅうか…まだ未練あるとか、そんなんやなくて。自分への戒めの物みたいな感覚やってん」
「じゃあ、なんでそう言ってくれなかったの?思い出の品だなんて…」
国末さんは、少し恥ずかしそうに視線を逸らし頬をかきながら答える。
「せやかて、かっこ悪いやん。失恋のきっかけになったもんに未だに喝入れてもらっとるとか…」
「な、なにそれ」
「男ってホント無駄にかっこつけだよね」
「俺はわかるで、国末の気持ち」
「まじか」
「けど、今日紗奈と連絡とれへんことなって、家にもおらんくて…またなんかあったんちゃうかって、生きた心地せぇへんかった」
「あ…それは、ほんとごめん。私も意地になってて」
「ええねん。そもそもは俺が悪いんやし。偶然見かけたあの小学生に助けを求めるくらいに、動揺してもうてて。まぁ、それは結果オーライやったけど」
確かに。偶然コナンくんに会えたのはかなりの強運。でなければ、今もまだ2人は会えてなかったかもしれない。
「とにかく、今度こそ俺が守る為に傍におりたい言うたのに、それで傷付けとるとか話しにならへん。せやから、あのお守りはもう捨てた」
「え…い、いいの?」
「ええねん。今は昔の思い出よりも、自分への戒めよりも、紗奈が大切やから」
「照明…。ありがとう。私も、もう連絡無視とかしない。約束する」
「そうしてくれ。ホンマ心臓に悪いわ」
「仲直りしたみたいだね」
「せやな。んで?こいつら今から揃って東京帰るんやろ?効率悪いわぁ」
「恋なんてそんなもんじゃん。いつだって思い通りにいかないもんでしょ」
笑い合う紗奈と国末さんを見て、本当によかったと心から思う。きっともう2人は大丈夫だ。
「服部くん。今回も世話になったな。おおきに」
「今回もって?」
「前にこの兄ちゃん、トイレで頭殴られて病院送りになってん。そん時の犯人を俺とあのボウズが捕まえたっちゅうわけや」
「と、トイレで頭を?!」
「病院送り?!」
「あ、けどな!それは俺も悪かってん!!怪我はもう治ったし、その人にも事情があったし、もうええねん」
「そんな事があったんだ…」
「なんか、まだ知らないことだらけだ」
「そらそうやろ。付き合ってまだそんな経ってへんのやから」
「そうそう。これから知っていけばいいんだよ」
そう言うと、紗奈と国末さんは顔を見合せて微笑み合う。駅の中へと向かう2人の手は、しっかりと繋がれていた。
「あー、やれやれ。やっと帰れるわ」
「お疲れ様。じゃあまた明日ね」
「ちょお待て。もう暗いし送ってく」
「え…大丈夫だよ」
「ええから素直に送られとけ。ほら行くで」
もしかして、その為に文句を言いながらも一緒に居てくれたんだろうか。
(優しいなぁ…)
「一応工藤に連絡しとったるか」
「…服部くん、もはやコナンくん呼びする気ないでしょ」
「あんたの前ではな。国末がおった時はちゃんと抑えとったやろ」
「私の前ではって…」
違うとわかっていても、特別扱いされてるような気になってしまう。タチの悪い男だ。
「おお、工藤か?さっき無事東京に帰りおったで。ああ。かまへんて。いつでも連絡せぇよ。ほな、またな」
「ほんと仲良しだね」
「まぁな。…隠さへんでええっちゅうんは楽やな」
「え?」
「和葉とおったらこうはいかへんからなぁ。毎回隠れて電話せんとやし」
「え…そうなの?」
「おー」
あの遠山さんには隠すことを、私の前では隠さないですむなんて。駄目だ、優越感。
(もー。ほんと、タチ悪い…)
「にしても国末の奴、あのお守りが失恋のきっかけや言うてたけど…どうゆう意味や?」
「…さぁね。でもよかったね。まだ未練あるとかじゃなくて」
「別にあいつに未練があろうがなかろうが関係あらへんわ」
「本当は嫌なくせに」
「やかましわ」
「独り身の僻みだから気にしないで」
きっと服部くんと2人でこの道を歩くのは最初で最後。だろう。そう思いながらいつもより少しだけゆっくり歩いた。
それぞれの秘密