6 それぞれの秘密
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「心配かけて、本当にごめんなさい!」
深々と頭を下げる紗奈。制服のままなとこを見ると学校が終わってすぐこっちに来たんだろう。
「無事でよかったよー!」
「うん。ありがとう。服部くんも、巻き込んでごめんなさい」
「気にすんなや。野々村の言う通り、無事でよかったわ。工藤にも連絡したし、国末もこれで安心したやろ」
「それにしても服部くん、よくわかったね。紗奈の居場所。遠山さんの家にはいなかったんでしょ?」
「ああ。スマホ使えんくて土地勘もない。そんな時に住宅街の中で迷ったら、無闇に動き回る方が危険や。目立つ場所で道を聞けそうな人が来るん待ってんちゃうか思うてな」
「その通りすぎる。さすが探偵だね」
紗奈のスマホは、国末さんに腹を立てて電話を取らなくてすむよう電源を切ったまま持ち歩いていたらしく、新幹線の中で充電切れで電源がつかないことに気付いたそう。
「にしても、なんで和葉に会いに来てん」
「それは…あのお守りに、なにか特別な思いがあるのかもと思って。それなら無理に捨てろって言うのもあれかなと思って、聞きに行こうと」
「なんで国末に聞かんねん」
「照明には聞いたよ。大切な思い出だからとしか教えてくれなくて。もしかして、相手の子に秘密にするよう言われたのかなって」
「だからわざわざ、大阪まで…」
「うん。具体的には聞けなくても、2人の間で秘密の何かがあるんだってわかれば、後は私が受け入れられるかどうかだから。照明に言ったら反対されると思って、内緒で来たの」
「アホやな」
呆れたように言う服部くん。正論かもだけど、紗奈の落ち込んだ顔を見て思わず声を荒らげる。
「アホって何よ!そもそも国末さんがハッキリさせてくれないから、紗奈はここまで思い悩んでんの!それでどうにか自分の中で整理つけようってわざわざ大阪まで来たの!」
「美衣!いいよ、私は大丈夫!服部くんの言う通りアホなことしたって思ってるし」
「ちゃうちゃう。俺が言うてんのは、男の方や」
「え…」
「いくら大事な思い出があろうが、それは昔のことやろ?終わったことで今好きな女を傷つけとるなんて、アホやなって言うてんねん」
「あ…そうゆうこと…?ごめん。私勘違いして怒鳴っちゃって」
「辛気臭い顔すな。別に気にしてへん」
俯いて、ぎゅっと鞄を握りしめてる紗奈。泣くのを堪えているんだとわかる。
「余計なお世話かもしれへんけど、もしまだ和葉に未練があるなら、そもそもあんたと付き合うとるんがおかしい話やし、未練もあらへんのに思い出にすがってあんたを傷つけるような男の為に、あんたが我慢する必要はあらへんで」
「…うん。そうだよね。ありがとう、服部くん」
「紗奈…」
「元店長のことがあってから、すごい疑心暗鬼になってるの、自分でもわかるんだ。前の私なら思い出の品のひとつやふたつ、そんな気にしなかったのにって」
「…うん」
「でも、あんなに良くしてくれた元店長が実はストーカーで…本当はみんな、悪い人なんじゃないかって…照明も…いい人を装って近づいてきて私を裏切るんじゃないかって…そんな風に思っちゃって…!」
ぽたぽたと涙をこぼす紗奈。胸がぎゅっと握りつぶされるようだ。彼女を優しく抱きしめる。
「私がいるから、紗奈。私だけは絶対に裏切らない。嫌だって言われても、私だけはずっとそばにいるからね」
「美衣…うん…ありがと…」
「…まぁ、そもそも裏切るつもりなら連絡がとれへんからって工藤んとこに相談なんか行かへんやろうし、あんたを心配してここに会いに来るくるいの男なら、もっぺん信じてみてやってもええんちゃう?」
「会いにって…え?来てるの?照明」
「あんたが和葉ん家に行ったかもしれへんって言うたら工藤が止めるん振り切って新幹線飛び乗ったて言うてたで」
「うそ…」
私の貸したモバイルバッテリーに繋がれた紗奈のスマホに、メッセージが届く。
「あ、照明…ほんまにごめん。今そっち向かってるから待っといてくれ、だって」
「わざわざ来んでも待っとったら帰ってくるっちゅうに」
「じっとしてらんなかったって事じゃん?嬉しいよね、紗奈」
「うん…今朝からずっと連絡無視してたのに…怒ってないのかな」
「そら本人に聞けばええんとちゃう。野々村、道わかるか?」
「あ、ごめん。わかんない」
「ほな駅まで送るわ」
服部くんと3人で駅まで向かう。お腹の虫がなって、もう夕方なことに気付く。
「腹減ったな。コンビニでも寄るか。どうせまだ来んやろし」
「あ、うん!賛成!」
「じゃあ私トイレ行きたい」
途中、コンビニに寄ってホットスナックと飲み物を買う。トイレに行ってる紗奈を店の外で待つ。
「服部くん、ありがとね」
「は?何がや」
「なんかもう、色々と」
「なんじゃそら」
夕日を見ながら、思い出していた。放課後の教室で名探偵になると言った彼の顔を。いつもより少しだけ早い鼓動に、気付かないふりをして。