5 微妙な繋がり
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「ごめん、服部くん。今日ちょっと急ぐから帰りながら話すんでもいい?」
「ああ。かまへんで」
テスト週間は部活もない。今日は制服姿な服部くん。静かな廊下に私と彼の足音だけが響く。
「そもそもさ、手作りって時間かかるじゃん。どんなのにしよって考えて、材料揃えて、作って」
「まぁせやな」
「それを好きでもない人にやるってのが私的にはわからないのね」
「頼まれたからやろ。昔から知っとる奴なわけやし。それに手作りのお守りなら俺ももろてるし、和葉にとって別に手作りかどうかは重要やないんとちゃうか」
「…服部くんってそっち方面には鈍いんだね」
「おいこら!どうゆう意味や!何やその顔!」
重要じゃない訳が無い。それに服部くんにあげてるのは普通に好きな人にあげてるって何故気付かないのか。
「まぁ頼まれて断れなかったんだろうね。服部くんの言う通り、昔から知ってて親も仲良しなら」
「まさかそれだけとちゃうやろな。和葉を疑った理由」
「疑ったって、人聞き悪いなー。今も連絡取ってるみたいだし、好きなのかなって思うには充分な理由だと思うけど」
「アホらし。わざわざ聞きに来て損したわ」
「そりゃすいませんね。ご期待に添えなくて」
「ほんで?仲直りしたんか。堤達は」
「まだみたい。お守り捨ててくれるまで許さないって言ってた」
「はぁ?面倒な奴やのー。物に罪はあらへんがな」
確かにそうだけど。そうゆう問題じゃないのが、この鈍い男にはわからないんだろう。紗奈が欲しいのは、愛されてるのは自分だけだとゆう安心だ。
「よく言うよ。まだ持ってんのかって怒ってたじゃん」
「怒ってへんわ!」
「彼氏でもないのに嫉妬心出すのやめた方がいいよ。普通にうざいから」
「な、なんやてぇ?」
「幼馴染だからってあぐらかいてると、他の人にとられちゃうかもよ」
「はんっ!とれるもんならとってみぃっちゅうんじゃ!」
「うーわ、すごい自信。実はもう付き合ってるの?」
「あんたには教えたらん」
「えー。ケチ」
どうやら機嫌を損ねてしまったようで、顔を逸らした服部くんはずんずんと歩いて行く。小さくため息をこぼす。
(紗奈、大丈夫かな)
「おい。何ぼーっと歩いとんねん。電柱ぶつかんで」
「…わあ、ほんとだ。ありがとう」
私より前を歩いてたはずの服部くんに腕を掴まれ、電柱の目の前で足を止めた。
「あ、服部くん。電話なってるよ」
「ほんまや。お、工藤やんけ」
嬉しそうに電話に出る服部くん。本当に仲良しだななんて思いながら、その横顔を眺める。
「おう、工藤。どないした。ああ。え?国末が?」
「ねぇ、国末さんがどうしたの」
「彼女と連絡がつかへんから工藤んとこに相談に来とんやと。喧嘩しとるからただ怒って無視されてるならいいけど、前のストーカーの事もあったし心配やって」
「紗奈と?ちょっと待って。電話してみる」
「頼むわ。ああ、偶然野々村とおってな。今電話してもらっとる」
「…つ、繋がらない」
紗奈も今はテスト週間。もう学校は終わってるはずなのに。嫌な感じに心臓が高鳴る。
「ど、どうしよ。何かあったのかな?!」
「落ち着け。まだそうと決めつけるんは早い。工藤、国末はいつから連絡がとれへんて言うてるんや。今朝か…」
「もしかして、またあの店長に…!」
「それはない。あいつはまだ刑務所ん中や。そう簡単に出れる罪の数とちゃうからな」
「じゃあ事故にあったとか…?やだ…紗奈…!」
「野々村。大丈夫や。大丈夫やから、ちゃんと呼吸せぇ」
「う、うん…」
過呼吸気味になっていた私の肩を持って、目を合わせて服部くんが言う。しっかりと呼吸に意識を向けて、段々と落ち着いてくる。
「…もう平気。ありがとう」
「おん。工藤が国末と堤の家行ったけど、応答はないそうや。行きそうな場所、心当たりあるか?」
「行きそうな場所……あ…ねぇ!国末さんに彼の実家が何処にあるか話したか聞いて!」
「工藤、国末の実家の場所、堤に教えたことあるか聞いてくれ。…あるそうや」
「もしかしたら…遠山さんに会いに行ったのかも。紗奈、国末さんのずっと好きだった人、実家の隣の子って知ってるから」
「ずっと好きだった人やて?!なんやそれ!って、今はちゃう!和葉ん家やな!見てくるから待っとれ!」
服部くんがそう叫んで走り出す。一緒に行くと言いたかったけど、すでに見えなくなりそうな彼の背中について行く自信はなくて。大人しく待つことにした。
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