4 見据える先
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ー国末さんゲットだぜ
紗奈からそう連絡がきたのは、夏休みも終わり学校が始まって数日経った頃。ツーショットと共に送られてきた。
(まじかー!!展開早!!ナイス国末さん!!)
無事に新しいバイト先も決まったようで、なんともリア充な生活を送っているようだ。
(いいなぁ、イケメン彼氏)
「美衣、帰ろ〜って、なに黄昏とるん?」
「やー、友達に彼氏が出来まして。羨ましいなぁって」
「えー!そら羨ましいなぁ!うちも彼氏欲し〜」
「ねー。どっかにいい男いないかなぁ」
友達とそんな話をしながら教室を出る。廊下の少し先で、服部くんと遠山さんが話してるのが見えた。
「服部がフリーやったらなぁ」
「フリーはフリーじゃん?」
「アホ。あんな両片思いの幼馴染がおったらフリーでもフリーちゃうわ」
「確かに」
「ええよなぁ、和葉は」
「私もイケメン幼馴染欲しかった」
「いやホンマそれ。和葉、ばいばーい」
「あ、バイバイ!また明日な!」
学校での私と服部くんの距離感は、以前と何も変わらない。すれ違っても、目が合っても、特に話すことはない。
(あの数日間、つい数週間前のことなのに、すごい昔のことみたい)
「平次?どないしたん」
「いや、何でもあらへん」
「あ、せや!前にあんたが御守り間違って渡した国末照明くん、覚えとる?」
「ああ、覚えてんで」
「なんやまた東京で事件に巻き込まれたらしゅうて、警察行ったらしいてオカンが言うててな」
「巻き込まれたっちゅうか、通報したんがあいつやから話聞かれただけやろ。犯人、そいつのバイト先の店長やったからな」
「え?!なんで知っとん?!」
「なんでも何も、その事件俺と毛利のおっさんが解決してんから」
「はぁ?!なんそれ聞いてへんし!早う言うてぇな!」
何やらぎゃあぎゃあと言い合ってる服部くんと遠山さん。いつもの光景で、特に振り返ることもなく角を曲がる。
「けどいつ付き合うんかな、あの2人」
「さぁ?でもさー、付き合う前のお互い好きだよなって期間、めっちゃ楽しいよね」
「やんなぁ!なんならあの時がいっちゃん楽しいわ!」
「2人もそうで、存分にそれ楽しんでたりして」
「うーわ!なんそれ羨ましすぎん?!」
「羨ましすぎて禿げそう〜」
「あ、野々村。ちょっとええか」
「はい。何ですか」
「話あんねん。職員室来てくれ」
「えー…ごめん、先帰ってて」
「了解。また明日な」
友達と別れて、担任と一緒に職員室へ。わざわざ職員室に連れてこられるなんて、何の話だろう。
「野々村、自分でもわかっとると思うが、お前の成績は悪い。特に英語や」
「はい。そうですね」
「このままやと進級が危ういねん」
「ええ?!そ、そんなにですか?!」
「そんなにや!ええか?!お前は根は真面目やしええ奴やって知っとる!せやから担任の俺的には進級させたりたいねん!」
「せ、先生…!」
「その為にも今度のテスト、赤点回避してくれ!」
「あ、赤点回避?!先生!私今まで赤点しかとったことありません!」
「わかっとる!!わかった上で言うてんねん!死に物狂いで勉強するんや!野々村!」
まさかそんなにも酷かったとは。確かに中学の時より遥かに難しいなとは常々思っていたけれど。
「死に物狂いで勉強とか無理!したくないー!」
「超ピンチなんてメッセージ送ってくるから何かと思えば。そんな成績悪かったんだね、美衣」
「もー自分でもびっくりだよ。美衣もそろそろテスト?」
「だねー。でも今回は国末さんとテスト勉強する約束したから楽しみっ!」
「うわいいなぁー!ねね!やっぱりあっちから告ってきたの?!」
「うん。ずっといいなって思ってて、今回の件で好きだって確信したから、これからは傍で守らせてくれって」
「きゃー!!キュンです!!」
紗奈と電話してると、テストのことなんてあっという間に忘れて恋バナで盛り上がる。
「新しいバイト先、夜もやってるカフェなんだけど、制服が白のワイシャツに黒エプロンで、国末さん超似合うの!」
「うわー!似合いそう!前の居酒屋のTシャツに腰エプロンも似合ってたけど!」
気付いたらもう寝る時間で、惜しみながら電話を切った。テーブルの上に広げられた勉強道具を見て見ぬふりして、ベットに潜り込んだ。