3 ひと夏の経験
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大阪に帰る日。ゆっくり起きて朝と昼兼用で気になってたカフェでご飯を食べている私達。
「あ、国末さんからメッセージきた」
「おお!バイト先のいい男!なんて?」
「店長が逮捕されてお店潰れるから、全員解雇扱いに決定だって。ちょっとだけど退職金出るっぽい」
「まじか!退職金嬉しいね!」
「うん、ありがたい。あ、またメッセージ。事務連絡は以上。今回は大変やったな。先輩やったのに、なんも知らんと力になれずすまんかった、だって。やだ、いい男」
「ほんとー!めっちゃポイント高いじゃん!国末先輩!」
そもそも他の人に相談してなかったのだから、知らないのなんて当たり前なのに。まぁ服部くんやコナンくんなら、言わずとも勘づくのかもしれないけど。
「えっ。ちょ、まじか」
「何?!今度はなんてきたの?!」
「私さえ良かったら、次のバイト先一緒に探さないかって」
「絶対脈ありじゃん!!すごいよ紗奈!」
「え、だよね?これ期待していいよね?」
「いいと思う!え、国末先輩って何個上?」
「えっと、確か大学2年だから…3歳?」
「ちょうどいいー!ナイスな歳の差!」
「でも好きな人、どうなったんだろ…」
「確かに!そこ気になる!」
ああだこうだ言いながら、それとなく国末先輩に好きな人とどうなったのか探りを入れる返事を送った。
「返事きた!ほな、早速バイト探し始めよ!前に話しとった好きな子はとっくに失恋してもう吹っ切れとるから、気にせんでええで!だって!」
「きたぁー!!こりゃもう攻めるしかないよ!ガンガンいこう!」
「え、まずはやっぱご飯だよね?!求人探す口実で会うとこからだよね?!」
「うん!異議なし!」
「テンション上がってきたー!ちょ、服見に行こ!バイト用の手抜き服でしか会ったことないから、ギャップ狙いたい!」
「狙うしかないね?!行こう!」
私達は急いでお会計を済ませてショッピングへと繰り出した。口には出さないけど、今回の件、紗奈はショックを受けてたみたいだったから、楽しそうな姿を見れて安心する。
(国末先輩に感謝だな〜。男の傷は男でしか癒せないもんね)
「楽しかったー!わざわざ泊まりに来てくれてありがとね、美衣。今度は私が行くから!」
「うん!楽しみにしてる!国末先輩とどうなったか、ちゃんと教えてよ?」
「もちろん!またねー!」
お目当ての服を買ってご満悦の紗奈に手を振り新幹線のホームへ。自由席の車両に乗り込み空いてる席に座る。
(割と空いてるな。混んでる時間避けてよかった)
「すんません。隣ええですか」
「あ、はい。どうぞ…って、服部くん!」
「よう。また会ったな」
「うん。偶然だね」
私の隣の席に座る服部くん。まさか帰る新幹線も一緒になるとは。これも何かの縁ってやつか。
「でもちょっと意外。服部くんから声かけてくれるなんて。他にも席空いてるのに」
「あー、まぁ、ちょっと話したいことあってな」
「話したいこと?あ、わかった。コナンくんの事でしょ」
「せや。あいつはもう詮索する気なさそうやから大丈夫やろ言うてたけど、ホンマか?」
「うん。気にならないって言ったら嘘になるけど、人の知られたくない事を無理に知ろうとは思わないし」
「そうか。…ぶっちゃけ、どう思うとる?」
「どうって…まぁ普通の小学生ではないなって。眠りの小五郎も実は全部コナンくんのおかげで、あの子供っぽさもわざとだろうなって感じ?あと…本名は工藤、なんでしょ」
私の言葉に、あからさまに反応する服部くん。これで隠してるつもりなら大根役者にも程がある。
「あのねー、知られたくないならもっと徹底して隠した方がいいよ。めっちゃ怪しいよ、コナンくん」
「…まぁ、確かに。周りもあいつも慣れてもうとんのは認めるわ」
「服部くんもだよ。思いっきり工藤って呼んじゃって」
「しゃあないやろ。工藤は工藤やねんから」
「ほらまた。そうやって油断して」
「あんたにはもう取り繕っても無駄や思うとるだけや」
本名が工藤ってことは、もしかして彼は紗奈の言ってた高校生探偵なのだろうか。でもだとしたら、何故小学生に。
(いや、辞めよう。ひと夏の不思議体験で終わらせるんだ。考えない考えない)
「黙っとってくれるか」
「…むしろ誰に話すの。旅先で出会った賢すぎる小学生の事なんて。心配しなくても、眠りの小五郎は噂通り凄かったとしか思ってないよ」
「そうか。おおきに」
「仲良しなんだね、コナンくんと」
「ああ。親友や」
「じゃあ名前くらいスムーズに呼べるようになってあげなよ」
「やかましわ」
それから大阪に着くまでの間、私達は特に何も話さなかった。でも別に気まずさはなくて、不思議な時間だった。
ひと夏の経験