3 ひと夏の経験
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「まさか店長がストーカーだったなんて…本当にありがとうございました。毛利さん」
「いやぁ、私にかかればこんな事件、朝飯前ですよ!ぬぅあーっはっは!」
事務所に戻り、犯人は店長だったと聞き紗奈は深々と頭を下げている。
「毛利のおっさんが捕まえてたあの男は、県外に引っ越す前に昔の感謝を伝えに来ただけのつもりやったのに、いきなりとっ捕まえられてストーカー呼ばわりされて怖くて逃げ出した言うてたで」
「まぁそんな事だろうとは思ったけど。本当に手紙を送った第三者がいなきゃ、推理は成立したなかったから、おっちゃんには一応感謝だな」
「にしても、いつもの事ながら美味しいとこごっそり持って行きおって」
「まぁまぁ、解決したんだからいいじゃねぇか」
ひそひそ声で話してるつもりなんだろうけど、全部聞こえてる。やっぱりあの推理は、コナンくんがしてたんだ。
(なんなの、あの子…何者なの?)
「服部くんも、ありがとう。あの人が悪い人には思えなかったから、話せて誤解が解けてよかった。コナンくんも、色々ありがとう」
「どういたしまして」
「あんた美人やから、また似たようなことあるかもしれへんし。なんか変やと思うたらまた毛利のおっちゃんにでもすぐ相談せぇよ」
「あ、うん。わかった。ありがとう」
「あんな事があった後で心細いでしょう。この毛利小五郎が家までお送りしますよ」
「いえ、そんな。申し訳ないですし…」
「そうですよ!名探偵にそんなことさせられません!私達は服部くんとコナンくんに送ってもらいますから!ね?」
「まぁ別にかまへんけど」
「う、うん。いいよ」
服部くんとコナンくんに笑顔を向ければ、2人は承諾してくれた。もう一度毛利さんにお礼を言って事務所を出る。
「どうしたの、美衣。もしかして服部くん狙ってる?」
「まさか。あ、ねぇ!ちょっとコンビニ寄っていい?」
「おー、ええで」
「コナンくん、お菓子買ってあげる。何がいい?」
「え?いや、いいよ。お腹すいてないし」
「遠慮しないで!」
小さなその手を掴んでお菓子コーナーに向かう。渋々といった様子でお菓子を見てるコナンくんに合わせてしゃがむ。
「眠りの小五郎の正体って、コナンくんだよね」
「な、何言ってるの、美衣姉ちゃん。そんな訳ないじゃない」
「じゃあ、見せてくれる?君のその蝶ネクタイ」
「…世の中には、知らない方がいい事もある。そう思わない?どうせあの店は潰れるだろうし、あの店長がやってた事、紗奈お姉さんは知らない方がいいみたいにさ」
「…わかった。じゃあこれだけ。君は一体、何者なの?」
「前にも言ったでしょ。江戸川コナン。探偵さ」
どうやらそれ以上、話してくれる気はないらしい。でも彼の言うとおり、知らなくていいことなんだろう。そんな気がする。
「そっか。わかった。もう聞かない」
「うん。ありがとう」
「美衣!見て!新作スイーツめっちゃ美味しそう!」
「マジで?!えー!昨日めっちゃカロリー摂取したばっかなのにー!」
「おい、工藤。何話しとったんや」
「服部。野々村さん、俺がただの小学生じゃねぇって気付いてる」
「なんやて?」
「正体まではたどり着いてねぇと思う。もう詮索する気もないみたいだし。けどまぁ、一応頭に入れといてくれ」
「ああ。わかった」
結局、新作スイーツと缶コーヒーを2本買ってコンビニを出た。紗奈の家の前で、2人に挨拶をする。
「送ってくれてありがとう」
「コナンくん、はいこれ」
「え?」
「お菓子は好きじゃないみたいだったから。私の大切な友達、守ってくれてありがとう」
「…うん。コーヒー、ありがとう」
「服部くんも、ありがとう。またなんかあったら力になってね」
「おお、すまんな。おおきに」
「じゃあまた学校でね」
「お世話になりました。気をつけてね」
さっき買った缶コーヒーを2人に渡して、家の中に入る。変な手紙も解決したし、これで安心して大阪に帰れる。
「あー、なんか濃い2日だったなぁ」
「お疲れ様、紗奈。スイーツ半分こしよ」
「する!てかさ、やっぱバイト先どうなると思う?」
「あー、潰れるんじゃないかな」
「マジか」
「うん。こな…毛利さんが言ってたから、そうなるんじゃない?」
「そっかぁ。新しいバイト先探さないとだなぁ」
更衣室の盗撮に、個人情報の私用。ストーカー行為に加え、あの店長は色々とやらかしていたから、きっと店ごとなくなるだろう。
「にしても、凄かったね毛利さん。最初は全然頼りなさそうに見えたのに」
「あー、うん。さすが名探偵って感じだったよ」
「まじかぁ。見たかったなー、推理するとこ」
「いやいや、事件なんて遭遇しないのが1番いいって」
「それはそう」
あの小さな探偵の事は、自分の胸に閉まっておこう。ひと夏の不思議な経験として。そう思いながら、スイーツを口に運んだ。