2 スーパーキッズ
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「おや、もういいのかい?」
「ああ。邪魔したな」
「お疲れ様です」
店長に頭を下げて店を出た私達は、とりあえず紗奈の家の方へと歩き出した。
「結局、犯人わからなかったね」
「うん。なんかごめんね、2人共。誰かのイタズラだったのかも」
「いーや、こいつはイタズラなんかとちゃうで」
「平次兄ちゃんの言う通りだよ」
「え…」
「あ!おーい!お前達!!犯人捕まえたぞ!」
「え?!あ、毛利さん!!」
「犯人捕まえたって…!」
「こいつだ、こいつ!前に堤さんに告白したやつ!張り込んでたら案の定、ノコノコ彼女の家の前に現れやがった!」
毛利さんは1人の男性の手首を掴み、自慢気に話す。気まずそうに視線を伏せてる男性。
「ほ、ほんまかいな」
「紗奈お姉さん、あの人なの?前に告白してきた人って」
「う、うん。そう。でも…本当にあなたがあの手紙を?」
「…くそ!!離せ!!」
「いてぇ!あっ、こら!!待ちやがれ!」
「このアホ!!何しとんねん!」
男性は毛利さんの足を思い切り踏んづけて走り出す。痛みに蹲る毛利さんを横目に服部くんが追いかける。
「あっ…待って!」
「紗奈?!危ないよ!」
「待って、美衣お姉さん」
「え…こ、コナンくん?」
「あっちは平次兄ちゃんに任せよう。僕達は、真犯人のところに行こう」
「真、犯人…?」
「小五郎のおじさん!ほら早く!」
「あ?!なんだ?!あの小僧が逃げたのはあっちだぞ?!」
「いいから!」
コナンくんに背中を押されて毛利さんが歩き出す。私達が来たのは、たったさっきまでいた彼女のバイト先の居酒屋。
「こんばんは、店長さん」
「…また君か。忘れ物かな」
「いやぁ、すみませんね。こいつがどうしてもって聞かなくて。おいコナン!ここが何だっていうんだ!」
「またまたぁ、おじさんってば。本当はわかってるくせに」
「あぁ?何を言っ、てぇ〜…ふにゃ…」
「え…ちょっ、も、毛利さん?!」
急に素っ頓狂な声を上げて壁に背を向け座り込む毛利さん。具合でも悪くなったのかと駆け寄る。
「ああ、大丈夫。自分は関係ないととぼける犯人があまりに滑稽で、力が抜けてしまってね」
「そ、そうですか…」
なんかかっこつけたこと言ってるけど、明らかにおかしい。さっきまでと態度が違いすぎる。それに、毛利さんの背後に立ってるコナンくんは一体何をしてるんだろう。
「い、一体なんなんですか?急に押しかけてきて。営業の邪魔だ!帰ってくれ」
「おやぁ?どうしました。急に焦りだして。急いで証拠を隠滅しようと頑張っていたみたいですが、無駄ですよ。この私の目は誤魔化せない。あなたでしょう?堤さんをストーカーしていた犯人は」
「なっ…何をバカな!!あなたも言ってたじゃないか!前にうちで働いていて、堤さんの事が好きだったあの男が犯人だと!」
「確かに彼は堤さんに手紙を出した。けれどそれは、脅迫でも嫌がらせでもなんでもない。ただの純粋な手紙だった。それをあなたが、すり替えたんだ!」
店長の反応からするに、図星なんだろう。次々に店長のストーカー行為を暴く毛利さん。でも私は、コナンくんの方が気になって仕方がない。
(なんで…ずっとあそこに立ってるの?それに、あのネクタイ…ただのネクタイじゃない…?)
「本人に全て聞かせるには、少々行き過ぎた行為だと思ってね。友人の野々村さんには、証人になってもらう為同行してもらったんだ」
「くっ…くそ…!どけ!女ァ!」
「え?!ちょっ、ヤダ!来ないで!!」
店長がこっちに向かって突進してきたと思ったら、急にバタンと倒れ込む。傍に転がるサッカーボール。
(え…ど、どこから…)
「大丈夫?!美衣お姉さん!」
「…コナンくんが、やったの?」
「え?!ち、違うよ!きっと足を滑らせちゃったんだよ!」
「いや、な訳。あのサッカーボールが突然飛んできて店長を」
「き、気のせいだよ!」
「店長?なんか大きな音しましたけど、どうかした…って?!な、なんやこれ?!」
「あ、国末さん!ちょうどいいとこに!警察呼んでくれる?紗奈お姉さんのストーカー、店長さんだったから」
「な、なんやてぇ?!すぐ呼ぶわ!」
その後、警察が来て気を失った店長は連れて行かれた。まだ微動だにしない毛利さんを気にもとめず、コナンくんに経緯を聞いて帰って行った。
(いや、おかしいじゃん。どう考えても)
未だに同じポーズの毛利さんにそっと近づき声をかける。
「あの、毛利さん?」
「んぁ…はっ!おのれ小僧!!この毛利小五郎から逃げれると思うなよォ!」
「え…」
「おじさん!犯人ならもう捕まったよ!おじさんが暴いたんじゃない」
「ん?!そ、そうか。俺はまた知らぬ内に…なぁーはっはぁ!思い知ったか小悪党め!」
「…あ、あの、毛利さん」
「はい?」
「覚えて、ないんですか?店長を犯人だって推理したこと」
「あー、それが全く。まぁ実はよくある事でして!気にせんでください!」
毛利さんは豪快に笑ってるけど、そんなことありえるのだろうか。たったさっきの出来事を何も覚えてないなんて。
「平次兄ちゃん達、もう事務所に戻ってるって!」
「おう、そうか!じゃあ俺らも戻るか。行きましょう、野々村さん」
「…はい」
昨日から感じてた違和感は、大きくなるばかり。スーパーキッズなんて、可愛い言葉で片付けられない。きっとコナンくんは、ただの小学生じゃない。小さな背中を見つめながら、そう思った。
スーパーキッズ