17 ロマンティックナイト
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ー紗奈さんが心配してたぜ
なんかあったのか?
たこ焼きを作り終えて携帯を見ると、黒羽からそうメッセージが届いていた。
(はっとんが来るっと…。お姉もう寝たかな)
部屋に行ってノックしてみるけど返事はない。もう寝てしまったようだ。キッチンに戻ると、タイミングよく電話が鳴る。
「もしもし」
「普通に服部って言えよ!誰かと思ったじゃねぇか」
「こんばんは、黒ちゃん。せっかくあだ名つけたのに全然呼んでないなと思って」
「いいんだよ、呼ばなくて!服部が来るから浮かれてて様子変だったのか?動揺してたみたいだって聞いたけど」
「うん。動揺してた。電話してたら急に今から行くって言われたから」
「は?え?あいつ今向かってんの?こっちに?まじで?」
「そうだと思う」
時計を見れば23時過ぎ。会えるのは明日になりそうだと思いながら、いつもより遅い秒針を眺める。
「いやだってあいつ、元々明日こっちに来る予定だったんだぜ。あの坊主に会いに」
「そうなの?」
「おー。ほら、あいつ転校するだろ。だから最後に顔見とこうって。美衣んとこにはサプライズで行くから黙っとけって言われてたんだけどよ」
「そうだったんだ…。早くコナンくんに会いたくなったのかな」
「はぁ?お前に決まってんだろ」
「え。そ、そうなの?」
「そうだよ。なぁ、本当に親友でいいのか?お前はもし服部が他の女に同じようなことしてても、平気なのかよ」
考えたこともなかった。服部がもし、他の子と仮面ヤイバーのショーを見に行ったら。勉強を見てあげてたら。他の子の手料理を食べて、美味しいと笑っていたら。
「…すごく嫌だ」
「じゃあ、お前の目指す先は彼女なんじゃねぇのか?親友は何人もできるけど、彼女はたった1人。特別だぜ」
「特別…」
「俺も、そろそろ告白しようと思ってる。ようやくキッドも引退するし」
「え、やめるの?怪盗キッド」
「ああ。もうやる意味がないからな」
「ふーん。お姉は知ってるの?黒羽がキッドって」
「いいや。ちゃんと話すよ。受け入れてもらえるか分からないけど」
黒羽の言葉に、キョトンとする。何故そんな不安そうなんだろう。受け入れるも何も、拒む理由がないのに。
「あのお姉だよ?身元も分からない怪しげなマジシャン風の男を拾って来ちゃう」
「その節は大変お世話になりました」
「うむ。苦しゅうない。だから、何も心配いらない。黒羽は黒羽だし」
「美衣…。ありがとな。あの夜、2人に会えてよかったよ。本当に」
「それコナンくんにも言われた。黒羽まで転校するとか言わないよね?」
「はは。大丈夫だって。そんな予定はねぇよ。それに、あいつだって…」
「あいつだって?」
「いや、なんでもねぇ。じゃあまたな!ちゃんと服部に彼女になりたいって伝えろよ!」
曖昧な返事をして電話を切る。彼女になりたいなんて、言えるだろうか。そもそも彼女の定義もいまいちわからないのに。
(…出会えてよかったなんて、こっちの台詞すぎるよなぁ)
あの日お姉が黒羽を拾ってきたから、コナンくんに会えて。服部に会えて。友達が出来て。初めての事をたくさん経験して。初めての感情を、たくさん知って。
(彼女なんて…心臓、もたない…)
膝を抱えて身を縮こませる。目を閉じれば次々に浮かぶ。服部と過した時間たち。早く会いたい。
(あ、電話…!服部だ!)
「お、出んの早」
「服部!今どこ?!」
「もう東京や。あと20分くらいで着くで」
「うん…!お姉もう寝てるし、お店で待ってる」
「時間が時間やもんな。すまん。眠いか」
「ううん。会えるの楽しみすぎて眠気なんて全く感じない」
「そ、そうか。あと少しやから、ええ子で待っとけよ」
「任せて。超いい子にしてる」
「ほな、後でな」
タッパにたこ焼きを詰めてお店に持って行く。寒くないように暖房もつけて準備はバッチリだ。
時計と睨めっこしながら、まだかまだかと待って。なにやらエンジン音が聞こえてきて急いでドアを開けた。
(…バイクだ)
「おう。待たせたな」
「服部!バイクで来たの?」
「せやで」
ヘルメットをとって、階段下にバイクを停めて、上がってくる服部。乗ってるとこ初めて見た。
(かっこいい…どうしよ。緊張してきたかも)
「めちゃくちゃパジャマやんけ」
「え?あ、そっか。着替えるべきだった?ごめん」
「かまへん。けど、他の奴には見せたらあかんで」
「…うん」
ポンっと私の頭を優しく叩く服部。どうしよう。どんどん鼓動が早くなっていく。彼の顔が、見れない。
「もう遅いし、2、3分話したら帰るわ」
「え、やだ。ゆっくりしていってよ」
「やだって…せやけど、明日も仕事やろ?早う寝んと」
「平気。入って。たこ焼き作ったし」
「ほんまか!あー、じゃあ、食うたら帰る!ええな?」
「うん」
一緒にお店の中に入ってドアを閉めれば、とても静かで。BGMも流しておけばよかったと思う。
「たこ焼き、温めるね」
「頼むわ」
「黒羽に聞いたよ。明日サプライズで来てくれるつもりだったって」
「せやった!新幹線のチケットキャンセルせな」
「…新幹線のチケット買ってたのに、バイクで来たの?」
「おー。明日の朝の新幹線やったからな」
「どうして?なんで、わざわざ…」
「なんでって…。会いたくなったからや。美衣に」
視線はスマホのまま、少し照れくさそうにそう言う服部。嬉しさで胸がいっぱいで、泣きそうだ。
「嬉しい。お揃いだね。私も会いたかった」
「…美衣。嫌やったら、突き飛ばしてくれ」
「え?なに…」
服部が立ち上がって、キッチの中に入ってくる。困惑してる私の腕を引いて後頭部に手を添えて、彼の胸へ抱き寄せられる。
「はっ…服部…?」
「好きや」
「え…」
「あんたが好きや。美衣」
体中が心臓になったみたいに、うるさい。顔が熱い。頭がまわらない。このまま、死んでしまうんじゃないだろうか。本気でそう思った。
ロマンティックナイト