13 夏の終わり
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「はぁ…」
今日何度目のため息だろう。朝からついてなくて、仕事でも普段しないようなミスばかり。
「美衣、何かあったんですか?」
「昨日、服部くんとのデートで何かあったみたいで…そこからずっと様子が変なんです」
「服部と?」
「詳しくは聞けてないんですけど…デート、最悪だったって…」
「ま、マジか…。服部のやつ何したんだよ…」
「お姉、お待たせ。カフェラテ」
「あ、ありがとう。…美衣。これ、ただの牛乳…」
「え?あ、ほんとだ。エスプレッソ入れてなかった。ごめん」
「いいけど…大丈夫?今日はもう休んだ方がいいんじゃ」
「大丈夫だよ」
姉の心配はご最も。自分でも、自分が自分じゃないみたいだと思う。だけど何かしてないと昨日の事を思い出して落ち込むだけだから。
「なぁ、美衣。服部は確かに血の気が多くて口も悪いけど、悪い奴じゃねぇんだ」
「え?」
「何をやらかしたか知らねぇけど、きっとあいつも悪気は」
「待って黒羽。別に服部は何もしてない」
「え?じゃあ何が最悪だったんだよ」
「私。変な空気にした挙句、いつの間にか奢ってもらってお礼も言わずに帰ってしまって…最低すぎる」
「よかった。デート自体は楽しかったのね」
「うん。だからこそ、最後の最後で…あー、穴があったら入りたい」
「なんだ。服部だけかと思ってたけど、美衣もちゃんと意識してんだな」
黒羽の言葉にクエスチョンマークを浮かべる。姉は意味がわかったようでにこにこしながら私を見てる。
「そっかぁ。よかったね、美衣」
「いやあの、何が?」
「今日も会うんだろ?じゃあ今言ったこと、そのまま服部に言ってやれよ」
「そりゃ謝るつもりだけど…」
「大丈夫よ、美衣。きっと服部くん、最初から奢ってくれるつもりだったと思うし」
「え?なんで」
「俺もそう思うぜ。やっぱ男が払いてぇじゃん?デートなら」
「…そんなもん?」
「そんなもん」
2人仲良くハモってくれちゃって。そういえば姉達の次のデートはいつなんだろう。
「あ、今夜なんだ」
「え?なにが?」
「黒羽とのデート」
「うん。ちょっ気合入れすぎかな?」
「いいと思う。超可愛い」
「ふふ。ありがとう」
嬉しそうに笑う姉は、贔屓目なしで可愛い。服部には私もこんな風に写ってるというのか。そんなバカな。
(…マジか私。服部のご飯作るの忘れてた)
勉強道具を手に店に戻って、何も準備してないことに気付く。自分の駄目さっぷりに打ちのめされてると、店のドアが開く。
「よう。来たで」
「服部、ごめん!今日まだご飯作れてなくて…すぐ作るから!」
「お?なんや、珍しな。別に急がんでええ…あ、ほんなら握り飯作ってくれや」
「え?それだけでいいの?」
「おう。かまへんで」
「わかった。じゃあ、おにぎり作る」
大きめのおにぎりを2個、お皿に乗せて気持ち程度の常備漬物を添えて服部の前に置く。
「お、美味そうやな。おおきに」
「本当にそれだけでいいの?」
「実はな、からあげ買うて来てん」
「からあげ?」
「ああ。来る途中、移動販売しとってな。梅味があって珍し思うて」
「へぇ。梅味のからあげ?美味しそう」
「せやろ。昨日、梅和え美味かった言うてたから、美衣が好きなんちゃうか思うて買うてん」
「え…私のために?」
「まぁ、俺も食べてみたかったしやな」
「…ありがとう。嬉しい」
作る側だからなのか、私に食べ物をくれる人は姉以外あまりいなくて。ちょっと感動してしまった。
「あの、服部。昨日ごめんなさい。奢ってもらったのにお礼も言わずに。帰ってから奢ってもらったのに気付いて」
「なんや。そんなん気にしとったんか。元々奢るつもりやったし、かまへん」
「そうなの?ありがとう。ご馳走様でした」
「おう。律儀やな。ほれ、熱いうちに食うてみ」
「あ、うん。いただきます…ん、美味しい」
「ホンマか。…お、確かに。なかなか合うな」
さっきまでの沈んでた気分が嘘みたいだ。何をあんなへこんでたのかって思うくらい、心が晴れやか。
(服部のおかげだな…)
「けどやっぱ、美衣の唐揚げんが美味いわ」
「じゃあ明日、唐揚げにする」
「お、ええな!頼むわ。ちゅうかこの握り飯も美味いな?!こいつも立派な料理なんやな」
「そうだよ。シンプルだからこそ難しいってやつ」
「ほーん。かっこええやんけ」
隣に座ってるけど、昨日みたいな空気にはならないし、私は思ってるよりも服部とのこの時間が好きみたいだ。
あと2日で終わってしまうことは考えないようにして、ご飯を食べる彼の横でテキストを開いた。