10 ころころこころ
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(…今、何時だろ)
熱のせいかぼんやりする頭。ふと、人の気配を感じて目を覚ました。ゆっくりと体を起こして窓の方を見れば、ベランダに人影。月明かりで浮かび上がるシルエット。
「…黒羽、さん?」
「…こんばんは。起こしてしまってすみません」
熱のせいか、はたまた会えた喜びか。時間とか場所とか、何も疑問に思うことなく、窓を開ける。
「よかった…約束通り、また来てくれて」
「本当は、まだ来るつもりはなかったんですが。熱を出したと聞いて心配で」
「そうだったんですか…」
「…頬が赤い。まだ熱が高いんですね」
「黒羽さんの手、冷たくて気持ちいいです」
手袋をした彼の手がそっと頬に触れて。その冷たさが気持ちくて目を閉じて彼の手に自分のそれを重ねた。
「…いけませんよ。男の前でそんな風に瞳を閉じては」
「私、怖かったんです。もう黒羽さんに会えなくなるんじゃないかって…怖くて…だから、会えて本当に嬉しい」
「紗奈さん…僕もです。あなたにまた会えて、嬉しい」
目をつぶっていたら、段々と瞼が重くなってきて。黒羽さんの声と、手の冷たさを感じながら意識が遠のいていった。
「お姉、起きてる?」
「ん…美衣?」
「入るよ。具合どう?」
「…熱は下がったみたい」
「よかった。うん、顔色もいいね。ご飯、リビングで食べる?」
「うん。そうする」
「じゃあ先行って待ってる」
美衣が部屋を出て行って、大きく伸びをする。いつの間にベットに戻ったのだろう。それとも、夜のあれは夢だったのか。
そう思った時、窓際に一輪、赤い薔薇が落ちているのが見えた。夢じゃない。やっぱり黒羽さんが来てくれたんだ。
「お姉、食欲ある?」
「うん。しっかり食べて栄養取らないとね」
「…なんかあった?」
「何もないよ。あ、でももう一日だけお休みしてもいい?念の為に」
「もちろん。ゆっくり休むべき」
「ありがとう」
明らかにお姉の様子が変わった。熱が下がったからとかじゃなく、元気になってる。たくさん寝てスッキリしたんだろうか。
(なんにせよ、よかった)
昨日、1日練習してたおかげでコツは掴んだたこ焼き。朝ごはん代わりに作った奴を1つ口に放り込む。
「…うん、美味しい」
「なになに?あ、たこ焼き?ついに出来たの?納得いくやつ」
「うん」
「頑張ってたもんね、美衣。おめでとう」
「ありがとう。服部に食べらせたら、お姉にもあげるね」
「ふふ。なーんか、ちょっと寂しいな」
「え?」
「だって今まで美衣の料理を1番最初に食べれるのは私だったのに。ついに他の人に奪われちゃったなって」
言葉とは裏腹に、お姉はなんだか嬉しそうに見えた。なんて言えばいいかわからずにいると、スマホが鳴る。
「電話じゃない?」
「あ、うん。誰だろ。こんな朝早くから」
スマホを見れば画面には服部の文字。なんてタイミングのいい奴だと思いながら、電話に出る。
「もしもし」
「おう、美衣か。すまんかったな、3日も連絡出来ひんと店行かれへんで」
「うん。また事件だった?」
「ああ。でかい事件やったわ。けどもう解決したさかい、明後日にはそっちに行けると」
「服部。たこ焼き出来たよ」
「なんやて?!ほんまか!!ほな明後日なんて悠長なこと言っとられへんやないか!待っとれ!外出許可とってすぐそっちに行くわ!」
「え?ちょっ、待った!外出今日って?服部、今どこにいるの?」
「ああ、病院や。いや待てよ。許可おりる可能性考えたら抜け出した方が確実か…」
とんでもないことを言ってる電話口の向こうの男。病院で外出許可ってことは入院してるってこと。
「服部、持って行くから。病院と病室番号送っといて。抜け出して来たりしたら絶対食べさせないから」
そう言って電話を切る。お姉が心配そうな顔で聞いてくる。
「服部くん、入院してるの?」
「そうみたい。コナンくんも骨折してるらしいし、何やってんだか…」
「コナンくんも?!心配ね」
「…黒羽も入院してんじゃないの。昨日の連絡、既読になってないし」
「え?でも黒羽さん、私が熱出したの知ってたけど…」
「え?お姉には連絡きたの?」
「連絡っていうか…会いに来てくれたの。昨日の夜」
「…夢では?」
「そんなことないよ。窓辺に薔薇が落ちてたもの!」
お姉の言うことを疑いたくはないけど、昨日の夜はまだ熱があったみたいだし。でもそのおかげで元気になったのなら、下手なことは言えないと、言葉を飲み込んだ。