7 新たな日常
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「こんにちは」
「あ、黒羽さん。いらっしゃいませ」
お姉と黒羽がデートをして以来。彼は今までより少し早め、つまりお姉がまだお店にいる時間帯に来るようになった。
「ごめんなさい。まだ少し忙しくて」
「いえ。お気になさらず。僕もランチのAセットをお願いします」
「はい。美衣、ランチAセットひとつね」
「あいよ」
デートの日帰ってきたお姉にどうだったか聞くと、とても楽しかったと可愛くはにかんでいた。
(詳細聞きたかったけど、いくらお姉でもプライバシーは大事だ…)
出来上がった料理をお盆にのせてると、カウンターに座ってる黒羽と目が合う。小さく手を振ってきたから、振り返した。
「兄ちゃん、最近よく見かけるけどまさか紗奈ちゃんの彼氏か?」
「あ、いえ。僕はただの友人ですよ」
「もう。田中さん。変なこと言わないで。レジはこっちですよ」
「いい子だろ?くれぐれも大事にな」
「田中さん!友達だって言ってるでしょう」
「いーや。ただの友達には見えねぇな。なぁ?美衣ちゃん」
田中さんはちょっとお節介だけどいい人で常連。かと言って、多分今微妙なラインにいるお姉と黒羽の事について何か言うのも気が引ける。
「私の彼氏は仮面ヤイバーですけど」
「誰も美衣ちゃんの話はしてねぇのよ!ほんとマイペースだなぁ」
「この前初めてショー見たら、なんとツーショットが撮れまして。写真見ます?」
「お面かぶってねぇ彼氏が出来たら見せてくれ。ごちそうさん」
「ありがとうございました」
田中さんは豪快に笑いながらお金を払って、帰って行った。ツーショット見せびらかしたかったのに、残念だ。
「はい、ランチAセットお待ち」
「美衣、ありがとな」
「ん?いえいえ、これが仕事ですから」
「そうじゃなくて、さっきの。上手いこと話逸らしてくれて」
「ああ。どういたしまして」
「また後で相談のってくれよ」
「ヤイバーとのツーショット見せびらかしていいなら」
「お前それ何回見せたら気が済むんだよ…見りゃいいんだろ」
「やった。任せろ」
呆れ気味にも、了承してくれた黒羽。上機嫌で仕事をこなしていく。彼以外のお客さんが帰ると、お姉が黒羽との間にひとつ空席を挟んで座る。
「お疲れ様です」
「ありがとうございます。今日も熱いですね」
「ええ。体調変わりないですか」
「はい。黒羽さんもお元気ですか?」
「もちろん。じゃなきゃここに来てませんよ」
「ふふ。それもそうですね」
「いや、何その会話。暑中見舞いかよ」
お姉の前にアイスカフェオレを置きながらそう言うと、2人は顔を見合せて笑い合う。何が面白いのかサッパリだけど。
「ね、黒羽さん。美衣にもこの前のあれ見せてあげてください」
「え?なに?」
「黒羽さんのマジックとても凄いの!魔法みたいで」
「そういえばマジシャンなんだったね。見たい」
「OK。んじゃ、このおしぼりを…3.2.1!」
「え!すご!!薔薇になった!!」
「ね!凄いでしょう?!」
「うん、凄い!え?本物?」
「もちろん。やるよそれ」
「えー、まじで本物だ。やば。ありがとう」
受け取った薔薇をまじまじ見てから、カウンターの隅に飾ってある昔のメロンソーダの瓶にそのまま活けた。
「あ、私そろそろお昼食べないと。じゃあ黒羽さん、ごゆっくり」
「はい。ありがとうございます」
いつもはアイスカフェラテを全部飲むまではいるのに、今日は半分しか減ってない。お姉の背中を見送ってグラスを下げる。
「なぁ、次のデート何処がいいと思う?」
「相馬ってそれ?」
「おう。そろそろ誘ってもいいかなと思ってんだ。けどやっぱ毎回店を休ませるのは気が引けるしよ。夜ごはんとかどうかなって思ってんだけど、2回目で夜は早すぎるか?」
「めっちゃ考えてるじゃん」
「そりゃ考えるだろ。嫌われたくねぇし…」
「いいと思う。夜ご飯。最近、閉店後は私、服部に勉強見てもらってるからお姉1人時間長いだろうし」
「ああ、そういやんな事言ってたな。だからあいつ最近昼には来ねぇんだな」
「うん。夜ごはん食べて帰ってるよ」
黒羽と服部と3人で過ごす時間は、まるで学校の休み時間みたいで割と気に入っていたのだけど。勉強はそもそも私が頼んだ事だししょうがない。
「なぁ店どんなのがいいかな。イタリアンとか?」
「お姉は和食のが好きだよ」
「マジか!助かるわ〜。持つべきもんは妹だな」
「じゃあ今度は私のターンね」
「あー、はいはい。ヤイバーの話な」
スマホを取り出して待ち受けにしたショーの日のヤイバーとのツーショットを見せると、黒羽は頬杖をつきながらも聞く体勢になってくれた。