3 西の探偵
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「オメー、わざとだろ」
「何がだよ」
喫茶店からの帰り道。名探偵がじとっとした目でこちらを見る。とぼけてみせるけど本当はなんの事かわかってる。
「とぼけんな。多めに置いた金とあのメモ用紙だよ。あの姉妹の性格上、今日のお礼の電話はしてくるだろうし、お金が多すぎるから返すって言うはずだ。つまり、また会う口実作るためだろ?」
「はいはい。その通りですよ」
「普通にいい人なのはわかったけどよー、キッドの姿見られてんのに深入りしねぇ方がいいんじゃねぇか?」
「大丈夫だって。キッドのこと知らないみたいだし、それにそうゆうスリルは悪くないだろ?」
「はは…。やっぱ俺達、従兄弟だな」
そんなこと言うってことは、名探偵も似た経験があるって事だろう。相手は聞かなくてもわかる。
「オメー、ああゆう清楚な人好きなのか?幼馴染とは随分違うタイプだろ」
「…笑わねぇか?」
「なんだよ。そんな面白い理由なのか?」
「昨日、あの家で目覚ました時、最初に彼女の顔が見えて…天井の電気が後光みたいでよ。その、天使かと思ったんだ」
「ぶはっ!てっ、天使ってお前!!」
「うるせぇな!しょうがねぇだろ!見えちまったもんは!」
「わ、悪い悪い。予想外すぎて…一目惚れって事か?」
「や、そこまでは…まぁ、可愛いと思うけど。普通に助けてもらったし力になりたいっつーか」
歯切れ悪く口ごもると、名探偵は小さく息を吐きながらも笑って言う。
「いいじゃねぇか。いつまでも過去を引きずってちゃ前に進めねぇしな」
「…なんか、小学生相手に諭されんのすげぇムカつく」
「そう睨むなって。一応心配してんだからよ」
「大きなお世話だね。1年も前のこと、とっくに吹っ切ったさ。俺は天下の大泥棒だぜ?」
「ああ、そうですか」
本当は、この上ない程頼もしい。この小さな名探偵が味方にいること。自分を気にかけてくれていること。それが、同じ目的を果たす為だからだとしても。
「ところで名探偵。今日じゃなかったか?大阪の探偵がこっちに来るの」
「げ。やべ。忘れてた」
「あーあ。可哀想に。拗ねて帰っちゃってんじゃねぇの?」
「バーロー。あいつがそんな繊細なわけねぇだろ。きっと昴さんにカレーでも作らせて食ってるよ」
名探偵の言った通り、工藤邸に戻るとダイニングでカレーを食べている大阪の探偵がいた。まるで我が家のように。
「おお、工藤!黒羽!邪魔しとんで」
「ほらな」
「お見事」
「服部、昴さんは?」
「ああ。あの兄ちゃんならなんや用があるって出てったで」
「ふーん。つーかお前、なんだよその大荷物。何泊する気だ?」
「決まっとるやろ。夏休み中や」
「はぁ?!夏休み中?!」
「おん。あの兄ちゃんにもお前のオトンとオカンにもちゃーんと許可とってあんで」
「ってことは、ここに住み着く気かよ?!」
相変わらずやる事が大胆だと思いながら、その行動力は尊敬にも値する。思い出す函館での危機。
「手がかりになるUSB、あのちっこい嬢ちゃんの解析が終わったら速攻動くやろ?人手は多い方がええと思うてな」
「ったく、ほんとオメーは…ありがとな、服部」
「水臭いこと言いなや。親友やろ」
「いいねぇ。男の友情。俺も白馬呼び寄せようかな」
「あのいけ好かん男前か。呼ばんでええわ、あんな奴」
「すげぇ嫌そう」
そんな話をしてると、着信音がなる。画面を見れば見覚えのない番号。もしかしてと少し緊張しながら電話に出る。
「もしもし」
「あ、もしもし。黒羽さんですか?紗奈です」
「ああ、紗奈さん。どうかされましたか?」
「いえ。帰り際、きちんと挨拶出来なかったので…今日は本当にありがとうございました」
「とんでもない。こちらこそ声もかけずにすみませんでした」
「そんな。お店が混んできから気を利かせてくださったんでしょう?」
「ええ、まぁ。忙しそうでしたので」
西の探偵が、あいつなんでキッドの喋り方しとんねん、なんて言ってるのが聞こえる。相手が丁寧だからか、なかなか言葉が崩せない。
「お気遣いありがとうございます。あ、そうそう!置いてくださったお金、貰わないつもりだったうえに、多すぎて。お返ししたいので暇な時にでもまたお店に寄ってください」
「お金は払わせてください。多すぎた分は、またお店に食事に行かせてもらいますから。その時用に」
「黒羽さんって、本当に紳士な方なんですね…。わかりました。妹にもそう伝えておきます」
「よろしくお願いします」
「はい。ではまた、失礼します」
電話を切って、思わず口元がニヤける。これであと2回はお店に行く口実が出来た。そんな俺を見て、西の探偵がなにやら騒いでるけど、聞こえないふりをした。