2 守りたい場所
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こんがり焼いたトーストとバター。スープにサラダ、スクランブルエッグとソーセージ。お好みでヨーグルトと季節のフルーツ。そして温かいコーヒー。
「美衣。モーニングひとつ」
「あいよ」
木のトレーに出来上がった料理たちを並べて、ティーカップに淹れたてのコーヒーをそそぐ。ゆったりとしたジャズのBGM。カランコロンと、ドアの開く音がする。
「いらっしゃいませ」
「おはようございます。昨日はお世話になりました」
「あ!おはようございます。本当に来てくださったんですね」
「おはよう、お姉さん」
「はい、おはよう。来てくれてありがとう。少し待ってもらってもいいですか?」
「もちろんです」
「カウンターにどうぞ」
入ってきたのは昨日の男と小学生。カウンター越しに頭を下げて挨拶してくれたから、ヒラヒラと手を振る。
「朝ごはん食べた?」
「今日はバッチリ食べてきました」
「僕も食べたよ」
「じゃあコーヒー飲む?」
「あ、いやそんな。お構いなく」
「ただ待つのも暇じゃん。僕、コーヒー飲める?ジュースのがいい?」
「僕もコーヒーがいいな。ありがとう、お姉さん」
「お、大人だね。はい、どうぞ」
2人の前にコーヒーを置く。他のお客さんのモーニングを作ってたから顔は見えなかったけど、背後で確かに2人が美味っと言った。
「お待たせしました。この時間帯は暇なので、今のうちにお願いします」
「はい。わかりました」
「僕はここの棚のもの出すの手伝ってくれる?」
「うん、わかった!」
「欠けてるものとかあるから、ケガしないようにね」
「はーい」
古い食器を棚から出してダンボールへ詰めていく。小学生とは思えぬ落ち着きぶりで黙々と作業は進む。
「しっかりしてるんだね、僕」
「コナンだよ。江戸川コナン」
「コナンくんね。私は野々村美衣」
「美衣お姉さんは、ずっとここで働いてるの?」
「3年前くらいから」
「へぇ。そうなんだ。お姉さん、大学生?」
「ううん。高3」
「そっか。じゃあ快斗兄ちゃんと同い年だね」
「快斗兄ちゃんっていうの?あの人」
「そうだよ。黒羽快斗。高校3年生」
同い歳だったとは。マジシャンって言ってたからてっきり歳上かと思ってた。話し方も高校生男子っぽくなかったから。
「平日はどうしてるの?お姉さんが1人でやってるの?」
「ううん。私学校行ってなくて、通信教育だから」
「そうなんだ。お姉さんも?」
「うん。大学には行ってない」
「そっか。どうして学校に行かずにお店を開こうと思ったの?」
「コナンくん、大人みたいな事聞くんだね」
「え?!あ、ごめんなさい。僕、毛利小五郎って探偵の人の家に居候させてもらってるから、ついおじさんがやるみたいにしちゃって…」
テレビも新聞もあまり見ない私でも知ってる。毛利小五郎は有名な名探偵だ。いつか常連の人が話してるのを聞いた事がある。
「へぇ。じゃあコナンくんも探偵なんだ?」
「うん。そうなんだ」
「学校には、行きたくても行けなかった。私達、施設育ちで。あ、施設ってわかる?」
「うん。わかるよ」
「さすが。そこの施設の人がまぁなかなかにヤバい奴でさぁ。小学校はなんとか行ったけど、私が中学に上がるタイミングで追い出されちゃって。あてもなく彷徨ってたら、ここのお店の店長だったおばさんが拾ってくれたの」
「そうだったんだ。じゃあこのお店は、すごく大切な場所なんだね」
「その通り。ずっと手伝ってはいたけど、3年前におばさんが亡くなって、2人で継いだの」
カランコロンと音がして、荷物を持ったお姉と黒羽さんが入ってくる。きっとお姉がなんでもかんでも拾ってくるのは、私達が拾われて助かったからだ。
だから、私もお人好し過ぎだと思ってもそれを怒る気にはなれないし、なんだかんだ言いつつ許してしまうのだ。
「だから、よかったらまた来て。常連さん増やしたいんだ」
「うん。また来るよ。今度は友達連れて」
「マジで?超いい子」
相手は小学生だし、こんな口約束。本気になんてしてないけど、嘘でもそう言ってもらえて嬉しくて、コナンくんの頭を撫でた。彼は少し、照れくさそうに笑った。