1 プロローグ
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「キッド!お前っ…何呑気に飯食ってんだよ!こっちがどんだけ心配したと!」
「悪かったよ。空腹には抗えなくてな」
小学生は部屋に入って男を見つけるなりそう叫ぶ。さっきまでの可愛らしい声色はどこへやら。
「僕は?ご飯もう食べた?」
「あ、うん!食べたよ!」
「そっか。バナナジュース飲める?」
「あ、ありがとう。いただきます」
「僕、ここまで1人で来たの?お家は近い?」
「あ、えっと、知り合いの大人に車で送ってもらったんだ!だから大丈夫だよ!」
「そう。ならよかった」
「わっ…このバナナジュース、すっごく美味しいね!」
「ありがと。またいつでも飲みにおいで」
私達と小学生のやり取りを何故か可笑しそうに見てる男。その手のお皿はいつの間にか空っぽ。
「お皿もらう」
「あ、ご馳走様でした。五臓六腑に染み渡りました」
「あいよ。お粗末さま」
「あ、今度は電話…誰だろう。はい、もしもし。え?大丈夫なの?うん。うん。いいよ、お大事に」
「誰だった?」
「青山のおじさん。ぎっくり腰になっちゃったって。だから明日来れないって」
「マジか。まぁ二人で頑張るしかないね」
「あの、差し支えなければ明日何があるのかお聞きしても?」
「新しい食器や家具を2階のお店に運ぶんです。力仕事だからって常連さんがお手伝いをしてくださる予定だったんです」
特に隠すことでもなくて、姉が説明する。受け取ったお皿をシンクの中で水につけて、軽く手を洗う。
「では是非、手伝わせてください。もちろんお礼は別でしますので」
「え?!いやいやそんな!悪いですよ!」
「遠慮はいりません。あなた方が助けてくださらなかったら、僕はあのまま餓死していたかもしれませんから」
「いえ、そんな…」
「いいじゃん、お姉。手伝ってもらおうよ。めっちゃ助かるじゃん」
「美衣。確かに助かるけど…」
「ねぇねぇ、それ僕も手伝っていい?」
「お、君も手伝ってくれるの?頼もしいなぁ」
「うん!頑張るよ!」
「なんか、逆にすみません。じゃあお願いします」
「とんでもない。喜んでお手伝いしますよ」
そうして、男と小学生は帰って行った。バナナジュースは綺麗に全部、飲み干されていた。
「んで?大丈夫だったのかよ、オメー」
「ああ。無事に手に入れたぜ。お目当てのUSB。まぁ、とっ捕まって監禁されたのはちょっとやばかったけどな」
「バーロー。ちょっとじゃねぇっての!こっちは敵の本拠地に乗り込む寸前だったんだぞ」
「心配してくれてありがとよ。けど、ちゃんと抜け出して来ただろ?」
「遅せぇよ!しかも、脱出は成功だ!今からそっちに向かうって連絡してきた後、いくらかけても繋がらねぇし!大変だったんだからな?!お前の居場所突き止めるの!」
「悪かったって!空腹と寝不足と過労でぶっ倒れてたんだからしゃあねぇだろ?でも、ちゃんと突き止めるあたり、さすが名探偵だな」
彼女達の家を出た2人はそんな話をしながら、阿笠博士の家に向かう。知り合いの大人に連れてきてもらったなんてのは、もちろん嘘だ。
「にしても驚いたぜ。まさか人ん家にいるとは思わなかったからな」
「いや俺もめっちゃビビった。目覚めたら知らない家ん中で」
「なんつーか、色々と緩い姉妹だったな」
「ああ。すげぇいい子達ではあったけどな。カフェオレも飯もくそ美味かったし」
「確かに。バナナジュースもすげぇ美味かった。店ってあれだろ?2階にあった喫茶店」
「だろうな。下が家で上が喫茶店なんて、お前んとこと逆だな」
「おー。まぁ、ねぇとは思うけど一応奴らと関わりがないか探ろうとは思う」
「だろうと思ったぜ。僕も手伝っていーい?なんて言うからよ」
「うるせぇ」
怪しまれないよう、目立たないよう、普通のどこにでも居そうな成人男性に変装してるキッド。でもあの家では、モロにそのままだった。
「で?お前は明日どっちで行くんだよ。キッドか?黒羽か?」
「そこだよな〜。あの2人、俺の事マジで知らないみたいでさ」
「怪盗キッドも大したことねぇな」
「うるせぇ。一応、マジシャンの衣装だと思ってくれたっぽいけど…明日もまた衣装で行ったらさすがに変に思われるよな」
「いいんじゃね?常日頃から衣装着てる売れないマジシャンみてぇじゃねぇか」
「にゃろ〜他人事だと思って…」
「冗談だよ。まぁキッドを知らないなら普通でいいんじゃねぇの?後でつっこまれてもキッドをマネした衣装ですって言えば不自然じゃねぇし」
「だな。そうするわ」
目を覚ました時、モノクルも外されてなかったしマントや服を脱がされた痕跡もなかった。持ち物だって何ひとつ、元のままで。
このUSBも、拾ってくれて本当に助かった。ポケットの中にあるそれを握りしめながら、彼女達の優しさに改めて感謝した。
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