1 プロローグ
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昔から、姉は何かをよく拾ってくる人だった。捨てられた犬だったり、落し物だったり。これもなにかの縁だと、その度姉は言っていたけど。
「さすがに死体はまずいでしょ!?」
「生きてるってば!お願い、美衣!運ぶの手伝って!」
「え〜?!もー!絶対問題ありじゃんそんな人!」
「だからって放っておけないよ!うちの裏に倒れてたのも何かの縁だと思うし!」
「わかった!わかりました!手伝えばいいんでしょ!」
「さすが美衣!大好き!」
気を失ってる男性を女2人で運ぶのは大変だったけど、裏口から何とか家の中へ。白いタキシードにシルクハット。
「…マジシャンかなんか?」
「わからないけど…とりあえずあるだけ毛布持ってくる!寒いだろうから」
「じゃあ私はお湯でも沸かすか」
夏の夜といえど、いつから倒れてたのか体が驚くほど冷たかった。目が覚めた時暖めるようにとコンロに火をつける。
「こんなもんかな?あ、そうだ!この人が倒れてたあたりに持ち物ないか探してくるね!」
「はいはい。ほんとお人好しなんだから…」
毛布を運び終えた姉が裏口から再び出ていく。カフェオレボウルに粉末のコーヒーを入れて、お湯で溶かす。牛乳を混ぜてると、裏口のドアの開く音がした。
「シルクハットとこのUSBが落ちてたけど…この人のかな?」
「そうじゃない?あんな裏路地、滅多に人通らないし」
「あ、カフェオレ美味しそう!」
「飲む?」
「やった!飲む!」
姉の分のカフェオレをいれてると、男の小さなうめき声が聞こえた。ゆっくりと体を起こし、その顔がこちらを向く。
「あ、気がつきました?」
「…うわぁ?!なっ、なん…?!え?!こ、ここは?」
「ここは私達の家です。裏口のすぐ側にあなたが倒れてるのを見つけて、家の中へ運ばせてもらいました」
「家…そ、それは、どうも。ご迷惑を」
「いえいえ。とんでもない」
「では、私はこれで」
男が立ち上がり頭を下げた瞬間、部屋中に聞こえるような大きな腹の音が鳴り響く。
「…お腹、空いてるんですね」
「す、すみません。ここ数日まともに食べてなくて…」
「とりあえずカフェオレ飲んだら?いきなり食べても胃が驚くだろうし」
「え?あ、ですが…」
「どうぞ。遠慮しないでください。妹のカフェオレは絶品なんですよ」
「…あなた達は、僕のことをご存知いようですね」
「え?あ、すみません。世間の事には疎くて。人気のマジシャンさんなんですか?」
「いえ。ただの腹を空かせたマジシャンです。お言葉に甘えて、有難くいただきます」
姉の差し出したカフェオレボウルを受け取る男。冷蔵庫をあけて何品か食材を取り出す。
「美味っ!」
「でしょ?うちの看板メニューなんです」
「看板メニュー?」
「はい。姉妹2人でやってる小さな喫茶店ですけど」
「そうなんですか。素敵ですね」
「ありがとうございます。あ、そうだ!このシルクハットとUSBってあなたのであってますか?」
「そ、そうです!僕のです!良かった…とても大切なものなんです」
姉と男が話をしてる間に、ぱぱっと餡掛けチャーハンを作ってお皿に盛り付ける。味も優しめで。
「このお礼はまた後日。改めて必ずさせていただきますので」
「え?!いやいやそんな!お気になさらず!」
「え?帰るの?せっかくご飯作ったのに」
「え?な、なんていい匂い…!」
「私もお姉もご飯食べ終わってるから、食べてくれないと廃棄になるんだけど」
「い、いただきます!喜んで!!」
「うん。どうぞ」
「う、うめぇ…!泣ける…!」
久しぶりのご飯ってことも加味してだろうけど、そんなに褒められて悪い気はしない。洗い物をしようとした時、インターホンがなった。
「誰だろ。こんな時間に」
「…小学生っぽい」
「え?!迷子かしら」
「あ、あの!その小学生、たぶん俺の知り合いです」
「え?弟?」
「あ、いや、そうじゃないんですけど…」
「はーい。僕、どうしたの?」
モニター越しに姉が話しかける。画面の向こうの小学生は、きちんとこちらに顔を向けて話し出す。
「あの、夜遅くにごめんなさい。僕、江戸川コナンっていいます。人を探してて」
「はーい。今開けるね」
「え?!ちょっ、警戒心なさすぎません?!」
「え?だってあなたのお知り合いなんでしょう?それに小学生ですし」
「いや、まぁ、そうですが…」
「お姉、人を疑うってこと知らないから」
「…苦労しますね」
「まぁね。でも疑ってばっかよりは全然いいから」
玄関に向かう姉の背中を眺めて、もう1人の客人の為に飲み物を用意しようと再びキッチンへ向かった。
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